女心秋空

 魔物と化した体は灰になって消えていく。魂は百の巡りに戻るために虹色に霧散した。

莫迦ばか野郎」

 イングリットの残滓が世界に還っていくのを見つめながら、フィレンはまたそう言った。

 女ってのはどいつもこいつも何でこう勝手なんだ。

 涙をこらえるのはいつ以来だろう。

 煮え切らない思いを抱えていると、後ろで草の擦れるような軽い音がした。

「……ミストさん?!」

 彼女が倒れている。嫌な予感がした。

 上体を抱き起して、彼女が失われたわけではないことに安堵する。

 だが、粗く浅い呼吸に高熱、こんなもの、すぐにどうにかしなければ確実に今度こそ彼女を失うだろう。イングリットも浮かばれたものではない。

『じっちゃん、今空いてる?』

『……さっさと来い』

 ぶっきらぼうに帰ってきた答えを頼りに、フィレンはフィヒターの家へと向かった。

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