海闊天空

 気づいたら朝だった。

 あれから二人は、ただ沈黙して過ごした。でもその沈黙は嫌なものではなかった。いつ眠りについたのかはわからない。

 イングリットが起きた時にはもうフィレンの姿はなかった。

 ごわごわのローブは、彼女にかけられたままだった。

 今度、返さなきゃ。

 そう、今度。

 次にまた、会わなければ。

 綻びたそのローブを大事に抱えて、イングリットは寮に帰った。

 まるで昨日何も起こっていないかのように、養成所の朝は普通だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る