転生先で乳製品!自分のためですけど、何か?

@yuririnn

第1話

知ってますか?


日本のこの北の果ては、吹雪になると本当に二日間は家から出られません。

吹雪は周りの音も吸い込み何も聞こえなくしてしまう。


それでも仕事には行かないといけない。


「薫仕事か?」

父と母が寝室から出てきてくれた。

「うん吹雪が酷いから早めに行って雪かきしないと」

「そうか……一緒に行こうか?一人だと大変だろ?」

「大丈夫だよ。もう慣れたから」

笑って言う私に母が

「そんな時が一番危ないのよ、気をつけなさい」

「ハーイ………てかまだ寝てていいのに。」

「ん〜まあな、たまには見送るのもいいだろ」

「そうよ何と無く、今日は見送りたくなって」

「何それ、父さんも母さんも変なの。 それじゃ行ってくるね。

何か欲しい物はある?せっかくだから何か買ってくるよ」

二人は顔を見合わせて

「いや、できるだけ早く帰ってこい」

「そうね、まだ冷蔵庫には食べ物もあるし………」

「そお?わかったそれじゃ行ってきまーす」

外に出るとまだ強く吹いている風に、息が詰まる。

やっとの思いで車に乗ると、除雪車が開けた道を気おつけながら走り出した。



牛舎に入り、雇い主の人に挨拶してから、搾乳ロボットを点検する。

きちんと綺麗になっているのを確認してから、柵を外して牛を入れていく。

我先にと穀物が入った小さい餌入れに群がる牛たち。

両端に5頭ずつ、計10頭しかいっぺんに搾乳ができないが、95頭も牛を飼っている大きな農場だ。

牛が食べている間に、牛の乳房を暖かいシャワーで汚れを洗い流し、

搾乳ロボットを一つ一つの乳首につけていく。

搾乳が終わると牛舎の掃除だ、寝藁を変え時たま牛の健康状態や、

子牛が産まれる予定の母牛を観察、異変があったら雇い主に知らせる。

簡単に聞こえるが、この全部を終えたのは、仕事が始まってから

4時間後だった。


外に出ると雪はやんでいたが、まだ風が強かった。

もしかしたら、せっかく除雪車が開けた道も地吹雪で埋まってるかも。

事務所のタイムカードを押して、車で家路に着くが、

案の定道は埋まってしまっていた。埋まらない様に勢いをつけて車を動かしていたが

吹き溜まりに埋まってしまう。

車の後ろに乗せてあった、タイヤチェーンとスコップを持って外に出ると、

タイヤの下をスコップで掘って何とか雪からだす。

前輪全部を出すと、チェーンを巻きつけた。

もう一本つけようとした所で、異変に気付いた。

大きい除雪車が大きく首をもたげてこっちに勢いよく来ている。

逃げようと脇に逃げようとするが、雪のせいで上手く前に進めない。

後ろを振り向くと、

除雪車がもう目の前にまで迫っていて、咄嗟に頭を庇った。


気がついたら真っ暗闇だった。

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