行間1-2

 優しい大人たちは私に言いました。

「君の病気はすぐに治る。安心していい。我々に任せてくれ」

 優しい大人たちは私に言いました。

「これから病気を治す薬を入れるよ? 大丈夫。君は寝ているだけでいいんだ。次に目を覚ました時には君は生まれ変わる」

 優しいクソッたれな大人たちはオレに言いました。

「君は我々の希望だ。我々の言うことだけに従っていればそれでいい」


 優しい大人たちは私に言いました。

 優しい大人たちは私に言いました。

 優しい大人たちは私に言いました。

 優しいクソッたれな大人たちはオレに言いました。


 クソッたれな優しい大人たちはオレに言いました。


「あ、ああ……お前は、悪魔だ! お前なんて知らない! いらない! あ、あぁ、お前なんて作るべきじゃなかった! 消えろ! 消えてくれ!」


 少女は首を傾げる。少女には理解できなかった。あんなに優しかった大人たちがみんな動かなくなり、最後の一人でさえ拒絶の言葉を吐く。


「……どうして? 私はあなたたちにとって希望じゃなかったんですか?」


 少女が頑張れば、大人たちは手を叩いて喜んでいた。それだけが彼女の世界。


「……ちっ、違う……お前じゃない!」


 男は指をさす。それは間違いなく少女に向けられている。



「そう、お前じゃない……お前らが言ってる悪魔ってのはこのオレだ!」



 少女は両手を広げる。


 一瞬のうちに、男は黒い濁流に飲み込まれた。

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