第7章 蒼眼の魔道士 -New World-

Prologue 7

 後悔がないと言えばウソになる。


 かといって満たされているかと言えば……これもやはり、ウソだ。


 私という存在はどこまで行ってもウソ一色だった。黒は何色にも塗りつぶされない安寧の色。初めから私に本物なんてなかった。

 そんな私に、


 あなたが色をくれた。

 あなたが愛をくれた。

 あなたが私をくれた。


 例え世界が変わっても。例え私の自己満足が作り上げた嘘でも。あなたは変わらない。

 非力で、逃げてばかりで、選ぶ勇気もない。ただどこまでも沈んで行くしかなかった私に、手を伸ばしてくれる私の王子様。私の理想。

 あなたがいたから私は笑顔になれた。あなたがくれた何でもない日常の繰り返しが、すごく幸せだった。


「だから私は……ユウが大好きなんだよ」


 出会えて本当に良かった。この言葉だけは嘘偽りのない私の素直な気持ちだ。

(あぁ……なんだ……)

 胸を貫かれ血に染まった少女から、自然と笑みが零れ落ちた。

 気付いたのだ。

 弱弱しく震える唇が紡ぐ言葉は、


「……生き、て」


 心からの言葉。

(こんなに簡単なことだったんだ……)


 彼は必死に私に手を伸ばす。私の言葉にきっと彼はこう思っているのだろう。

 私がまたウソを吐いている、と。

 でもこれはただのウソなんかじゃない。これは私の我儘ねがいだ。

 あなたに生きてほしい。こんな私が、あなたの抱く理想を美しいと思えたから。

 私もあなたのように誰かのために——いや、あなたのためにこの命を燃やしたい。もしそれができたなら、


 きっと私は——

 

(これから見る夢がどんなに苦しくても……辛くても……、私だけはあなたをいつも想ってる。あなたを『必要』としてる……だから――)


 どうか私の最後のウソを赦してほしい。


 大丈夫。必ずまた会えるから。


 だって、あなたはもうウソホンモノに変えるほどに強くなったんだから。

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