Epilogue 6

「……起きて」


 眠い。泥のように眠いとはきっとこんな感覚だ。


「起きなさい」


 声が聞こえる。でも。

(目を開けたくない……このまま身を任せていたい)

 柔らかな感触。いい匂い。包まれるような夢心地はとても離れ難い。


「起きないと……悪戯しちゃうわよ? というかもうしちゃう♪」


(え?)


 直後、有無を言わせず何かが唇に触れた。

「……むッ!?」

 息ができず思わず目を見開いたユウトは、そこで驚愕する。

「ん……ん……ッ」

 朝日で光り輝く銀の髪を垂らし、柔らかな素肌の上に純白のワイシャツ一枚だけのその少女は、蠱惑的な視線を向けながらも巧みに舌を絡めてきた。

「んーーーーーーーーーーーッ!?!?」

 五分ほどそれが続くと、少女は満足したのかベッドから身を起こして、乱れた長髪を振り払った。


「何、で……ッ?」


 疑問に思うことは冷静に考えればいくつもある。

 何がどうなってこうなったのか全くわからない。


 けれど確実に一つ。


「夜……泉……」


 唇を離した少女の舌先から、銀色の糸が引く。


「おはよう、ユウト君。お目覚めはいかがかしら?」


 逆神夜泉さかがみよみ

 かつて伊紗那の手によって消滅したはずの少女が、同じベッドの上で柔らかな笑みを浮かべていた。


第六章 理想(ネガイ)の世界 Part 2 -Reset the World- 完

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