第5章 理想(ウソ)の世界 Part 1 -Insanity Londo-
Prologue 5
嘘をつき続けるというのは一体どんな気分だっただろうか?
苦しい? それとも悲しい?
実際は全く違った。
何も感じないのだ。
初めは確かにそうだったかもしれない。けれど一日一日が過ぎるごとに、罪悪感という名の壁は一枚、また一枚と崩れ落ちていく。日常という名の幸福が私の心を麻痺させていく。本来の目的さえ見えなくなっていた。
もうとっくの昔に慣れてしまったのだ。
かけがえのない日常。
幸せな思い出。
一緒にいたい人たち。
最愛の――
あんなに私を縛って苦しめた『嘘』は、いつしか自分の罪から身を隠すための堅牢な砦になってしまっていた。
一歩でも外に踏み出せば、弱くて泣き虫な私はきっと戻れなくなる。それがとても怖い。
捨てる勇気を持てなくて。
もう捨てたくなくて。
世界は眩しい現実で溢れて、私が生きることの許されている世界はとても限られていて……。
刻一刻と、世界はあるべき姿へと向かう。決して止まることはない。まるで今が異常で、元に戻ろうとするかのように。
この小さく、しかしとても大きな変化もまた、そのほんのわずかな片鱗に過ぎない。
目を逸らすなと私を糾弾する。
私の
私の
あの人はきっと真実に辿り着く。だって誰よりも強くて、何より誰よりも優しいから。
でもその時私はきっと隣に立っていられない。
それならいっそ――
世界が
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