間章 エピソード・オブ・シャングリラ -The Hero with no brave-

Prologue EX

 『勇気』とは何だろうか?


 恐怖を克服すること。

 自分の信念を貫き通すこと。


 そんな高尚なもの、持った試しがない。

 いつも何となく時を過ごし、それがずっと続くと信じきっていた。

 だからいざ勇気が必要な場面に出会ったとき、自分には前に出るという選択肢を選べない。それもそのはずだ。そんなもの最初からなかったのだから。


 しかし善悪の区別ができないほど馬鹿でもない。

 目の前の理不尽を見て見ぬふりできるほど、自分は人間ができてもいない。

 そんなだから後退するという選択肢もない。


 半端な勇気に半端な覚悟。


 『裸の王様』ならぬ『裸の英雄ヒーロー』だ。


 自分にはその称号すら大きすぎてふさわしくない。

 『本物』の持つ輝きには程遠い。


 あの日、少年は一番近くにいたそれを守ることができなかった。無力だった。

 

 けど、だからこそ。


 同じものを持つ彼らは、この手で絶対に守りたいと思った。


 きっとそのためなら今度は勇気を出せる。

 もうあんな思いをするのは御免だ。



 これは地獄を理想郷シャングリラに変えた一人の少年の物語。

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