行間4-3
-Side A to B-
「あ……あ、あ……」
体が燃えるように熱い。
壁に寄りかからなければ立っていられないほどに自分が衰弱しているのがわかる。
けど、止まれない。
普通はこれだけ体調が悪そうにして街中を歩いていれば誰かが声をかけてきてもおかしくないものだが、ここに来るまで何故か一人として人と出会うことはなかった。
しかし熱で鈍った思考ではそれさえも異常だと認識できない。
それがたとえ誰にも出会わないように人為的に作られたルートだったとしても。
今、認識できることがあるとすれば、
思考を鈍らせる熱さと、さっきから傍で聞こえてくるギギギっという何か黒板を引っ掻くような不快音。
それくらいだ。
視界は色を失い、腕には重たいスーツケースを引っ張っているような重量感。足も重りでも付けてるのではないかというくらい動きづらい。
一歩前に進むごとに疲労がさらに上乗せされていく。
しかし、目的地はすぐ目の前だ。
(近い……近いちかいチカイ!)
感じる。もう目の前だ。
もう少しで、ようやく——
「……は、やく」
嬉しそうに声を漏らす。
まるで甘い蜜に誘われる虫のように。
魔境と化した白い建物を目指して。
-Side B to A-
ずっと夢を見ていた。
白い大地にただ一人、呆然と立つ自分。
歩むこともせず、ただただ遠い地を見つめることしかしない。
まるでもう歩くことは諦めたかのように。
色を奪われた——いや、まるでリセットされたような、汚れを知らない大地にとても冷たい感覚を覚えた。
長い長い夢にしてはひどく殺風景で、ひどく面白みもない。
だが何もないからこそ、そこにあるものだけはひどく際立っていた。
声だ。
誰の声かはわからない。わかるのは絶えず自分を読んでいることだけ。
その声はずっと背後から聞こえてきていた。
言語ではない。意味を持っているのかも定かではない。獣の鳴き声のようなそれはモスキート音のようにただただ不快で、頭から離れてくれない。
そうしてどれだけの時が経っただろうか。
いつしか自分の中にその不快音が心地良いと感じる自分の存在がいることに気がついた。
自分ではない自分。
思考と行動の不一致。
声が聞こえた。
背後の気配が一気に強まる。
そしてついに振り返った。
目を開けるとそこには——
そこでガイの意識は覚醒した。
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