第3章 強すぎる希望 -Obsession-

Prologue 3

 ――分界リンボ


 地球上のどこを探してもここは存在しない。

 地図にも載らないこの真っ白な世界には何もない。

 花も、木も、水も、岩も、空も……何もかも。森羅万象に色がなく、あるのはどこまでも続く白い世界と黒い太陽だけだ。

 まるで全てリセットされたかのように。


 そんな世界に……いや、そんな世界だからこそ、空に浮かぶ三つの赤い光は嫌でもひどく目立つ。


「チッ! ちょっと手こずったぜこのデカブツが!」

「ハハハ。何? リー。ブッ倒したんだからそれでいいじゃん。後からグチグチ文句を言うなんてかっこわる~い」

「あぁ!? 奏音かのん! うっせーぞ!」

 切れ目が特徴的な中国系の青年・リー・アーウェルは、ショートカットの少女・神座奏音かむくらかのんの言葉にカッとなる。


「よせ。二人とも」


「はーい」

「……チッ」

 二人は空中に浮いたまま、リーダーの言葉に従った。

 リーダーの名は神座凌駕かむくらりょうが

 彼らにとって、魔力操作で宙に浮くことなど造作もないことだ。


目標ターゲットは倒した。リンボここから出るぞ」

 三人の前には巨大な山が――巨魔・ヨルムンガンドが倒れていた。その体はまるでカマイタチにあったかのように全身が切り刻まれ、胴には巨大な穴が開いている。


「なぁ凌駕。こいつ何ポイントだ?」

「そうだな……十万くらいにはなるんじゃないか?」

「ヒャッホー! やったぜ!」


 リーは手を叩いて喜ぶ。まるでゲームをクリアした時の子供のようだ。

 彼らにとっては魔獣狩りはゲームでしかない。そしてゲームである以上、必ずクリアする。それがたとえ、超大型魔獣ヨルムンガンドの討伐であったとしてもだ。


「そういえばにぃに。はみだしの方にも魔法使いの集まりがあるらしいね」

「あぁ、そうみたいだな」

「あ~、俺たちの狩りゲームを邪魔してるやつらだな。確か名前は――」


「シャングリラ」


 凌駕が答える。

「そう。それだ。あいつらにはレアキャラのを横取りされてイライラしてたところだ」

「でも被験者を倒したって情報はないよ? 何でかな?」

 奏音は首を傾げる。

「彼らが関わって後、『03』と『05』の消息が掴めない」

 凌駕はリストを見ながら呟いた。そこには数字と詳細なデータが表示されており、『02』には罰印が付けられていた。

「もしこの二つを向こうが始末したんなら、リーより格上かもね。キャハハ!」

「なっ!? あんなゴミダメの連中と俺を一緒にするな!」

 リーは奏音の言葉に憤る。

「リー」

 凌駕はリーを言葉で鎮めると、リストの更新ボタンを押す。

「新しい獲物の情報を得た。今度は二体だ。悔しかったらこれで挽回すれば済む話だろう?」

 そこには二つのワイズマンズ・レポートのデータが映し出される。


 Wiseman's Report -04-

 Wiseman's Report -06-


 顔写真と潜伏予想範囲が記されている。その範囲にははみだしも入っていた。

 彼らにとってレポートの内容はさして重要ではない。


 存在そのものが罪なのだ。


「はっ! ならさっさと行ってサクッとヤッちまおうぜ」

「あぁ、この街の汚点は全て排除する。私たちというがより輝くために」


 その言葉で、彼ら――極限の希望アウスヴェーラは動き出す。


 を携えて。

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