第17話 規則十六条 彼女との別れ
停電。電力供給が停止してる事である。
俺達四人は食堂で携帯電話でニュースを見ている。TVを何故つけないかってのは先ほどの通り停電してるからだ、つかないから。
二階にある物置からもってきた懐中電灯をテーブルの上に置き、四人が座ってる。
俺とマルタと八葉とテンだ。アヤメさんは、二日酔いで朝方に自室へ戻って再び寝た。
「どや? 復旧しそうや?」
俺の横でマルタが携帯を覗き込んでくる。
「んーこの付近は全部停電みたいですね。暫くはこのままかも」
「なんぎやな~。これじゃビールもヌルイままやん」
「ふん。僕は、こんな暗闇怖くはない」
そんな八葉は大きくなったテンにくっついている。昨日ご飯を食べまくり妖力を増やしたと聞いた。
俺の視線に気付いたのか反論してくる。
「僕は唐突な音が嫌いであって暗闇っヒャ!」
喋り終わる前に雷が鳴り響く。
「なんぎやな~」
誰に言うわけでもマルタが喋る。
「テン。この家、大丈夫だよね?」
「そうね。一応私達が住むにいたって補修はしてるし、建物は古くても新品どうようよ」
「とりあえず避難勧告は出てないみたいなので今日はもうどうしようもないですね」
夕飯はというと。こんな状態じゃ料理も作れないので、出前をとおもったけど街が停電しているので出前もこれない状態だ。
建物がギシギシ音を立てている。
時間は午後七時半、寝るにはまだ早い。
「どうしましょうね~まったく」
「バラバラに過ごすより万が一。避難勧告など出たときに動けるように、一緒に居たほうが良いと思います」
「せやなーしかし暇なのが問題や」
「多分数時間もすれば台風も過ぎると思うから。そしたら各自寝ればいいかな」
暇つぶしを考える。このメンバーで怪談なんぞしてもきっと面白くないだろうし、ゲームは停電で出来ない。
「ようは明るくなかったらいいのね、それ」
テンが狐火を空中に出すと部屋の中が明るくなる。
「おお、凄い」
「ありがとー素直な子すきよーで、これからどうするの?」
テンの活躍の後何も考えてなかった。食堂の入り口から声がかかった。
「アタシ、アタシやお前の小さい頃のお話を聴いてみたい」
「俺の!?」
見ると寝ていたはずのアヤメさんが食堂へと入ってきた。
「起きたけど、こう暗くっちゃ何も出来ないからね、下に下りたら固まっているんだもん、アタシも混ぜてよ」
「僕もシュウがなんでこんなに、馬鹿になったのか気になる」
「そこ! 人を馬鹿馬鹿言わない!」
俺は声のほうに指を刺す。
「そっか、いいのね」
テンが変った返事をしてアヤメさんが座る席をあける。
「それじゃ、アヤメの話はウチが話してあげるん」
「心配そうな顔しなくてもテンも補足するから安心して」
さ、どうぞと言わんばかりに俺に視線が集中する。
「んー俺は特に何もないとおもうけどなー」
「シューイチ君は幼稚園とかかよったん?」
「ああ。そういえば、通った」
数十秒無言の空間が生まれる。
「『通った』で終らせてどないすんねん。成績とか先生とかの思い出あるやろか」
鋭い突っ込みが肩に入る。確かに、そうか。
「ごめん。こういうのやった事無くて。そうそう、幼稚園に通ってた時は俺は静かな子供だったともうよ。お遊戯では端から数えるほうにいたし、運動場でもボッチってわけでもないけど遊びの中心に居たことはなかったなー」
「なんでなん?」
声と共に背後からから飲み物をだし、ビールの缶を開ける音が聞こえる。
「なんでって事は……うーん。目立つのが嫌いってわけでもないし。なんか自然と?」
「お前は一人が好きなのか?」
「いや、そういうわけでは」
苦笑しながら思い出を語る。
「幼稚園の先生はあんまり記憶に残ってないけど、楽しい先生だったと思うよ。ほら、嫌な先生なら記憶に残るでしょ」
「ふーん、思い出か……今のアタシには何も無いからな」
「これを思い出って事にしたらどうかな?」
俺の提案にアヤメさんがビクと顔を引く付かせた後に微笑む。何時もの笑みではなく熱い魂がやどったような笑みであった。
「ああ、そうだな。この語らいを思い出としよう、そしてそれからどうなった?」
「ははは、ありがと。両親に関しては、色々好きにさせてくれたよ。『勉強しろ』は、まぁ適度に言ったけど、強制もなかったし。今回の日本に残るって話も俺の好きなようにさせてもらったから。それでダメなら諦めろとは最後言われたけどね」
「いい、両親やな~素直な子が育つわけや」
何か照れくさい。
「他の二人は?」
「おい、あきらかに僕を排除した発言だろ」
アヤメさんの隣から殺気が飛んでくる。
「お前はまだ語るほど無いだろ」
返事が返ってこない事をみると勝った。
「そうやなー。それじゃウチから話すか。アレはまだ織田信長が生きてた頃や」
俺は一息ついたために飲んでたお茶を噴出しそうになる。
「織田信長って!」
「うん、冗談や」
この人は……本当にその時代にいたっていっても信じてしまいそうだ。
そもそも本当の年齢を知らない……。
「さ、話すで、ウチは最初に会った時に話したか忘れたけど、ロシア生まれでな。両親共に狼族の血を持っていたわけや。冬はやっぱ厳しくてな~親子三人で暖(だん)をとったものや」
「身を寄せ合って?」
疑問を問いかける。
「いや、アルコールや」
やっぱりか。
「んでな、毎日山を駆け上っていたらコレはアカンっていわれてな、強制的に日本に留学や。ひどいとおもわへん?ちょーっと、山一つ分の果物を食べただけなのになー」
「山一つ分ってどんだけ、もちろん冗談だよね」
「半分は本当や」
何時ものテンションの声が聞こえる。
「まぁ、おかけでアヤメにも出会えたし、今ここに居る事もできるんやけどね」
「その頃ね手を余した人狼がマルちゃんをこっちに送ってきたのは」
懐かしいのかテンの目が遠くを見ている。
「それじゃテンが変りにアヤメの昔話しますか、テンはその頃からなんていうか低良く奉られていてね」
「今でもこの人はすごいんやで」
興味心身と八葉が身を乗り出して聞いている。
「アヤメちゃんの家は結構旧家でね、割と厳しい家だったのよ。そこで家の中で暮らしていたんだけど友達作りも大変なので、外国からお友達を呼んだわけ。それがマルちゃんね」
「へーそんな昔から」
「テンからは詳しく話せないけど、ぶっちゃけると人間が嫌いな一族って言えば良いかしら、それなのに一人娘が人間と駆け落ちしちゃってもう大変。一族どころか地域を別ける争いになってね、身の危険を避けるためにアヤメちゃんの母親がお寺に預けたの」
「あったなーそんな事も」
みると新しい缶ビールを開けているマルタに、アヤメさんの手にもビールが握られていた。
「ふーん、人間と妖怪か……私の血はハーフなんだな」
「そうそ、暫くは住職の世話になってたんやけど、ウチも本国から呼ばれてなちょっと就職の為に帰国したんや」
「そうね、マルちゃんは本国に残されたアヤメは人間の学校へと共存派の進めで通ってました。が」
気になる所で止めたテンの言葉の続きを待つ。
「人間社会に精通した妖怪達がこのアパートを持っていてね、此処ならもっと人と知り合えるって事で表向きは住む事になったの」
「って、事は裏があるんですね」
「正解~本当の目的はちゃっちゃと婿を見つけて子供を作って共存派の勢力を広めたいって所よ」
俺の背中をバンバンと叩くテンにゲスな笑いをしているマルタ。考え込むようなアヤメさんの顔にむくれている八葉の顔を見渡す。
「僕はまだ許婚のままで居たいんだけど! こら、頭をポンポンするな」
「物理的にむりやろ」
「最近では同性婚も出来る国があるんだ!」
「せやかて、仮に結婚しても子供は産めへんぞ?」
八葉の頭をポンポンする姿が見える。はっきりと、見える?
丁度話の終り際で停電が復旧したらしい。TVをつけて様子を確認する。
「お。台風も過ぎたみたいシューちゃん外みてくれる?」
「そうですね、雨音も弱くなったきがします」
「なら、昔話はこのへんでねよか。色々あって疲れたわー」
その五割はマルタが引き起こしてるが黙っておく。
俺も皆も食堂を出て各部屋に戻ろうとする、すると背後から呼び止められた。
「おい、お前」
「ん? なにアヤメさん」
「いや、なんだ……記憶が戻ったアタシと今のアタシどっちが好きだっ」
「は?」
「良いから答えろっ」
周りを見ても全員が部屋に戻った後で、もう一度振り向くと真剣な顔のアヤメさんが其処にいる。
真剣な顔に真剣に答える。
「どっちも。わっまって、殴るポーズはやめて、もちろん記憶が戻ったアヤメさんも好きだよ。でもワイルドなアヤメさんもカッコイイというか嫌いではない、です。はい」
俺が真面目に答えると、突然アヤメさんが笑い出す。
「ぷ、ばーっか何真面目に答えてるんだよ、またな」
俺とすれ違う時にその唇にキスをして食堂を出るアヤメさん、突然の事に俺は立ち止まって見てしまった。
追いかけたい衝動にかられ急いで廊下にでるも既にシーンとしている。
仕方が無く自室へ戻り布団へと倒れこむ。知らない間に眠ってしまった。
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