しあわせジャック
つゆり
しあわせジャック
ジャックは、森にひとりきりでした。
森の近くにはちいさな町があって
そこにはひとがたくさん住んでいます。
ジャックは友だちになりたくて、町に近づきました。
けれどひとは、ジャックを見るなり
悲鳴をあげて逃げていきました。
ジャックは、ひととは違う形をしています。
オレンジ色の大きなカボチャのあたま、さんかくの目、ギザギザの口。
黒いとんがりボウシに、黒いマント。
びっくりさせては悪いので
ジャックはいつも森に隠れ
そおっと町をのぞいていました。
ある夜、ジャックはいつもより町がにぎやかなことに気づきました。
のぞいてびっくり。
オレンジ色の大きなカボチャのあたま、さんかくの目、ギザギザの口。
黒いとんがりボウシに、黒いマント。
町にはジャックの仲間たちが走りまわっていました。
ジャックは、勇気を出して町へ入っていきました。
町のひとたちは、みんな陽気に迎えてくれました。
ジャックと同じかたち、同じかっこうの仲間たちと
手をつなぎあって家をまわります。
「トリック・オア・トリート!」
声を合わせてそういうと、ドアが開き
ひとがでてきて、お菓子をたっぷりとくれました。
もらったお菓子をみんなで分け
うまくいったぞ、と笑い合います。
やがて夜も深まると、同じかたちの仲間たちは
みんなそれぞれの家に帰りはじめました。
ジャックには家がなかったので、森へ帰りました。
次の日の夜も、ジャックは町へやってきました。
昨日いっしょに遊んだ仲間たちは、もういませんでした。
町もいつもどおりでした。
ジャックはふしぎに思いながら
ふしぎそうにこちらを見ているひとたちにいいます。
「トリック・オア・トリート!」
すると、ひとたちは大きな声で笑っていいました。
「カボチャのぼうや、今年のハロウィンはもう終わりだ。また来年だよ」
ジャックはがっかりして、森に帰っていきました。
今日もジャックは、そおっと森から町をのぞきます。
もらったお菓子を少しずつ食べます。
あの夜のことを思い出すと、自然と笑顔になります。
ジャックはひとりきりでしたが、とてもしあわせでした。
そして来年、またみんなに会えることを
とても楽しみにしているのでした。
しあわせジャック つゆり @nuit
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