第6話 うちのうらにある○○○
お兄ちゃんの背中を見送ってから、わたしはうちのうらにある鎮守の杜の、翔汰の姿の消えたあたりを見やった。
時は夕暮れの刻。
橙に染まった空の下、そのあたりは一面に暗く見え、翔汰の姿も、その奥にある池も見えない。
ざわざわと風に揺られて木々が音をたてる。
聞き慣れた音のはずなのに、今夜は何故か不気味に聞こえた。
部屋の中に入って、網戸を閉める。
もうすぐ七月とはいえ、この時間になれば、エアコンをつけなくても窓を開けていれば過ごせる。
部屋の、フローリングの床の上には、3枚の紙切れが落ちていた。
半紙に、みみずのはったような、文字のような記号のようななにかが墨で書かれている。
お兄ちゃんはごくごく普通の大学生なので、悪霊退散できるような能力もなければ、そういう職にもついていない。
だから半紙で作ったお札だって、映画やアニメのようにひゅんと対象に向かって飛んでいったりも、もちろんしない。
これはたぶんインターネットか図書館の本かなにかで調べて自分で作ったものだろう。
お兄ちゃんは、わたしを守ってくれるために、必死なのだ。
かつて、自分の目の前で、わたしが翔汰に丸呑みされてしまった、あの日から。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます