▼最終章『道は地平の彼方に』 ♯1
「なんだなんだ!? 何事だってんだぁ!?」
ノォバは部下である〈ヘファイストス〉のクルーにしてエンジニア達に尋ねたが、答えはすぐには返ってこなかった。
【
艦内のマテリアル・プリンター(汎用造形機)を始めとした自動工作機械群が突然勝手に動き出し、何かの装置を製造し始めたのだ。
当然、ノォバを始めとしたクルー達は大慌てとなった。
【
ノォバは直ちに原因究明を部下に指示した。
当初、ノォバは自動機械群を操るメインコンピュータのバグを疑ったが、そんな器用なバグなど発見されるわけがなく、メインコンピュータが何らかの指令を受け、意図して行ったということが分かった。
ではどこの誰がよこした指令であり、一体何を製造しているのか?
数分後、独力の調査では答えを得られなかったノォバは、止む負えず〈メーティス〉に問い合わせたが、彼女にもまったく心当たりのない現象であり、彼女は困惑すらしていた。
だが新たに分かった事実もあった。
恐ろしいことに、この現象は地球近傍のSSDF施設・艦艇内に存在するありとあらゆる自動工作機械群で発生しているのだ。
〈メーティス〉は明確な答えをくれはしなかったが、納得のいく推測は提唱してくれた。
新たなグォイド大艦隊と共に【
〈リグ=ヴェーダ〉や〈ウィーウィルメック〉の船体には、【
ノォバはクラウド状態のAIを想像した。
つまり宇宙にはグォイドと〈太陽系の
今進行中の謎の現象が発生したタイミングを考えれば、【カチコミ艦隊】の【
ようするに内太陽系各地のSSDFの自動工作機械群に、勝手に命令を下して何かを作らせはじめたのは、【カチコミ艦隊】と共に地球圏を訪れた異星AI“デリゲイト”なのではないか? と〈メーティス〉は推測したのだ。
何しろ初めて会ったばかりの異星文明のAIなのだ、警戒して然るべきと言えよう。
[はじめまして太陽系人類の皆さん。
私は【オリオン文明グォイド被害者の会・同盟艦隊】残存戦力の代表AI“デリゲイト”です。
ま出会ったばかりの段階で、このような会話を行うのは心苦しいのですが……みなさまの製造施設にて起きている現象について、私の行いだという推測は、無理もない考えだとは思いますが、私には身に覚えのない事態であります]
〈メーティス〉からの推測がノォバを始めとした各SSDF施設に届いた直後、〈デリゲイト〉からのメッセージが届いた。
どうやら事態は全部把握しており、ノォバと〈メーティス〉とのやりとりも聞いていたらしい。
[しかしながら、何が起きているのか、私なりの推測がございます。
おそらくですが、皆さまが使用中のオリジナルUVD内の〈太陽系の
デリゲイトのその発言に、ノォバはすぐに心当たりを思い出した。
確かにオリジナルUVD内には、それを生み出した〈太陽系の
オリジナルUVDは、木星の【ザ・トーラス】や土星の【ザ・ウォール】の動力源であるだけでなく、それを制御する為の高度なコンピュータとしての機能があり、それは当然AIとしての機能も有していると考えられた。
ユリノの報告によれば、信じがたいことだが亡き妻レイカの人格もデータとして記憶されている可能性もあるのだという。
そんな存在であれば、人類の自動工作機械群を勝手に制御するくらいは可能だと考えられた。
だが解決しない疑問も二つほどあった。
で結局なにを作ろうとしているのか?
なぜこのタイミングだったのか?
その答えもまた、デリゲイトが提供してくれた。
[皆様の施設内で製造中の機械は、現在までの完成度から推測して、我々の文明で使用しているトラクタービーム発生装置である可能性が高いと思われます。
また、我々の【
デリゲイトは淀みなく語った。
ノォバは半分は納得したが、のこり半分は、新たに登場したワードに困惑した。
「“トラクタービーム”ってなんだよ? それで何するつもりなんだよ!?」
ノォバは自分達の感知しないところで勝手に進行する事態に、激しく憤ったが、どうすることもできなかった。
―火星公転軌道上・某SSDF秘密航宙艦建造ドック――
【
必要最低限の人数で作業中だったSSDFの航宙艦建造エンジニア達は、半パニック状態に陥っていた。
最終擬装作業中だった〈アクシヲン一世〉の主動力源に、突然火が灯り、勝手に発進態勢に入り始めたからだ。
巨大な船体の外で作業中だったエンジニア達は、大慌てで退避を始めた。
恒星間移民船とは聞かされているが、〈アクシヲン一世〉は明らかに太陽系脱出船であり、現在擬装は90%以上が終わっているが、肝心のクルーと脱出すべき乗客が一切乗っていない。
にも関わらず〈アクシヲン一世〉は完全に無人で動きだしたのだ。
原因は皆目分からなかった。
おそらく搭載されているメインコンピュータの仕業と思われるが、確証があるわけではない。
考えられるのは、乗せるべき人間を迎えに行った可能性だ。
地球や火星圏から他の航宙艦で乗ってきた人間を、どこかでランデブーしたうえで移乗させ、〈アクシヲン一世〉はグォイドのいない人の住める他の恒星系を目指して旅立つのだ。
だが、だからといって今内太陽系に出向いていくのは危険過ぎる気もする。
エンジニア達はいっそ自分達も〈アクシヲン一世〉に乗って、内太陽系脱出してしまおうかと考えもしたが、結局〈アクシヲン一世〉が地球圏に向かって発進しても、誰も実行には移さなかった。
家族がある人物は、故郷に家族を残して自分だけ旅立つ気にはなれなかった。
独身の人間達は、自分だけ〈アクシヲン一世〉に乗って種の存続の責任を負う度胸などそうそう沸かなかった。
そしてなによりも、まだ地球圏で戦ってるSSDF迎撃艦隊と、帰還を果たしたという〈ウィーウィルメック〉達の勝利を信じていた。
「じょ~きょ~報告ぅっ!」
ケイジはかつて〈じんりゅう〉が、木星圏にて【ザ・ウォール】に突入した時のような衝撃に、必死でひじ掛けを握りしめながらエクスプリカに向かって怒鳴った。
訊かないと誰も教えてくれそうにはないと思った。
〈じんりゅう〉はついに【オリジナルUVDビルダー】へと到達した。
水面のように同心円状に波打つ、鏡のような銀色の膜が張った巨大リング……それがケイジが突入直前に見た【オリジナルUVDビルダー】の姿であったが、それはケイジにはワープゲイトの類に見えた。
そして実際、その円盤の水面に突入した瞬間、〈じんりゅう〉は劇的な環境変化に襲われた。
個体の壁にで激突したかのような衝撃が過ぎ去ると、今度は船体がデタラメに回転を始めたのか、ケイジの肉体を予測不可能な回転G襲った。
外景を映すメインビュワーには、ほぼホワイトアウトしていて何も判別できなかったが、ケイジは〈じんりゅう〉がまたワープゲイトの類を通過し、いずこかへ瞬間移動したに違いないと確信していた。
……それも、ビュワーをホワイトアウトさせるほどにとても眩しい所にだ。
[観測機器ヲ信ジルナラバ〈ジンリュウ〉ハ現在、超高速ノぷらずま流ノ向カイ風ノ中ニ突入シタモノト思ワレル]
「なんん……じゃそりゃ!? 太陽の中にでも突っ込んだのかぁっ?」
[可能性トシテハ割ト有リエルト思ウゾ……]
「…………」
ケイジはエクスプリカの機械のくせに投げやりな答えに絶句した。
半分冗談で言ったつもりだったのだが、マジでFTL《超光速》航法でどこぞの恒星の中に飛び出してしまったのか!? と。
もしそれが事実だった場合……ケイジはその後の未来を上手く想像することができなかった。
本当に太陽の真ん中に出てしまったならば、〈じんりゅう〉は蒸発してオシマイ以外のエンディングなどありえるのだろうか? と。
バトルブリッジ内の計器を見る限り、やはり〈じんりゅう〉をとりまく環境は、プラズマとしか言いようのない高熱高圧空間であり、おまけに高速で流動していた。
そのプラズマの向かい風が、〈じんりゅう〉をデタラメに回転させており、ケイジはすでに吐き気を覚えていた。
この宇宙に、太陽の中以外でこのような環境の場所があるのか? ケイジは思い付くことができなかった。
[UVしーるどハ、〈えっくす・ぶーすたー〉ノオ蔭デ今ノトコロ維持シテイル。
ガ、UV出力ハ無限ニアッテモしーるどじぇねれーたーガモタナイ、耐エラレルノハアト数分ガ限度ダロウ。
あヴぃてぃらハ現在、〈ジンリュウ〉ヲぷらずま流ノ速度に同調させつつ、プラズマ流の外ニ脱出スベク、ぷらずま濃度ノ薄イ方向ヘト〈ジンリュウ〉ヲ移動サセテル。
ダガ……]
「“だが”……なんだって!?」
[ぷらずま流ノえりあガドノ位ノ規模ナノカハ不明ダ。
〈ジンリュウ〉ガぷらずまノ圧力ト熱ト輻射ニ耐エラレテイル間ニ脱出ガデキルカハ保証デキナイ]
「~っ!」
ケイジは一瞬叫びたくなった。
[加エテあヴぃてぃらハ、〈太陽系ノ
アマリ言イタクハナイガ、ド~モ彼女ハ難航シテイルヨウダ、彼女ガ〈ジンリュウ〉ノ操艦ニ注力スル余裕ハ……]
エクスプリカの言葉は最後まで続くことはなかった。
向かい風に翻弄されていた〈じんりゅう〉のランダム回転が急激に収束し、またビュワーを満たしていた光が減衰していったのだ。
〈じんりゅう〉がプラズマ流から脱出し始めると同時に、〈じんりゅう〉が加速することでプラズマ流との速度差が縮まり、ランダム回転を抑え込むことができたのだ。
どうやら最終ステージ到着と同時にゲームオーバーは免れたらしい。
ケイジはメインビュワーに徐々に映りはじめた景色に目を凝らした。
【オリジナルUVDビルダー】が【ワープゲイト】の類であったとしても、そこからオリジナルUVDが出てくる場所であることには間違いないはずだ。
……あるいはオリジナルUVDの故郷とでも言うべきか……。
ともかくここからオリジナルUVDがやってくるのだ。
そこはどういった場所なのだろうか、ケイジは大いに興味があった。
〈じんりゅう〉は船体右舷方向にプラズマ流の薄い場所を見つけ、移動しているらしい。
メインビュワーの画面右側から光が薄まるのと同時に、ただの真っ白な光の壁でしか無かったプラズマ流が、白色から金色、銀色へとランダムに淡く色を変化させ、UVシールドに衝突しては後方に流されてゆく、目視できる無数の筋となって認識可能になっていた。
やがて〈じんりゅう〉は、90度船体を横倒しにした潜水艦が、高速航行しながら海面へと浮上するかのように、船体右舷側からプラズマ流をかき分けつつ脱出を果たした。
ケイジは一気に視界の開けたプラズマ流の外の世界に目を凝らした。
〈じんりゅう〉の左舷側は、淡い白に近いプラズマ流の巨大な壁が視界を覆っていた。
だがそれ以外の方向には、目視確認できるものがった。
右舷や右舷下方は、ケイジにも馴染みのある宇宙の星々が見えた。
だが〈じんりゅう〉前後方向では、左舷に見えた向かい風状のプラズマ流の壁が、はるか遠方で奇妙かつ緩やかなカーブを描きながら右舷方向へ曲がりつつ、そのまま頭上へと伸び上がっていた。
そしてその一方で、左舷を覆うプラズマ流の壁は、そのまま上方へと垂直に際限なく伸び上がっていたわけだが、〈じんりゅう〉直上はプラズマ流で覆われているわけではなく、プラズマ流は右舷方向から伸び上がったプラズマ流との間に、巨大なD字型の隙間が設けられていた。
そのD字型に見えた隙間の向こうには、星一つ見えないまったくの闇の空間であった。
そのD字型の隙間の彼方は、ケイジがかつて見たことも無い程の、完璧な闇であり暗黒であった。
それは宇宙空間でよく見かける、太陽に対する惑星や衛星の影に酷似していると言えば言えた。
例えば太陽の手前に浮かぶ水星を見かけた時などは、一見全くの黒い影に見える。
だが23世紀の今、太陽系各地に人類が進出したこの時代において、水星にもSSDFの何らかの施設が存在し、一見真っ黒に見える影の中にも、何かしらの人工の光が見えるものであった。
またガス惑星の木星の夜の面であっても、ガス雲に走る落雷やオーロラなどの自然現象の光を観測することができる。
だが今ケイジの頭上を覆う巨大な暗黒は、暗黒である以外の一切の光が一粒とて見つけることができなかった。
文明の光はおろか、天候その他の自然現象による光も反射の類も一切見えない……まるでそこに何も無いかのごとく……。
こんなすぐそばで眩くプラズマ流が周回しているにも関わらず、それに何も反射されないわけを、ケイジは考え付くことができなかった。
だからケイジはそのD字型のプラズマ流の隙間を、あくまで暗闇としてしか認できなかった。
それ以外は皆目分からなかった。
その代わりに、〈じんりゅう〉がプラズマ流から脱出し、距離をとるのに従い、〈じんりゅう〉を頭上から見下ろす巨大なD字型の暗黒空間以外の空間の様子が把握できてきた。
ケイジはなんとか想像力を駆使して、〈じんりゅう〉の左舷側に巨大なプラズマ流製の円盤が回転していて、その円盤の頭上部分でD字型の穴の開いたプラズマ流製の屋根が覆っているのだ……と。
もちろん、ケイジはそんな形状の天体の存在など記憶になかった。
さらに異常なことを、ケイジは目を凝らすうちに発見した。
真上のD字型に穴の開いたプラズマ流から、〈じんりゅう〉右舷方向にむかって、まるでレーザーのような恐ろしく細い光の直線が伸びているのが見えたのだ。
だがその光の直線がレーザーでないことはすぐに分かった。
Y字の分かれたプラズマ流と同種の光を放っていたし、D字型の穴から離れるにつれ、その太さを増していたからだ。
レーザーでは基本どちらもありえない現象だ。
つまり真横に伸びる直線(に近い)光は、レーザーではなく、収束されたプラズマ流のビームの一種に違いなかった。
そこまで〈じんりゅう〉周囲の光景を観察した段階で、ケイジは今〈じんりゅう〉がいる空間について、およその見当がついていた。
ケイジはブリッジ内の計器を再度確認し、〈じんりゅう〉が猛烈な遠心力に襲われていることを確認した。
そのGに耐える為に、今〈じんりゅう〉は遠心力の発生源に向かって90度船体を内側にバンクしていたのだ。
太陽系内で見る星々の感覚で言えば、普通は視界に対し、赤道が水平になる角度で見るし想像する。
だがケイジは今、赤道が頭上で前後に走る位置でこの天体を見ていたのだ。
だからケイジは円盤状のプラズマ流を水平に見た状態を想像した。
D字型の穴と想像するのではなく、いわばかまぼこ型の半円形の穴が開いているのだ……と想像した。
「エクスプリカ……ひょっとして……ここって……」
思えば、この事態の予兆と考えるべき現象はすでに発生していた。
【
もしそのような現象が発生するのであれば、巨大な重力源の存在がなければあり得ない……と、時間遅延現象の発覚当初は推測されていた。
そして実際、超巨大重力源は存在したのだ……ワープゲイト……いや【オリジナルUVDビルダー】の彼方に……。
[アマリ認メタクハナイガ、〈ジンリュウ〉ハ現在、超巨大ぶらっくほーるノ膠着円盤ノ上ニイルと思ワレル……]
エクスプリカは極めて渋々と言った口調でそう告げた。
誤解を恐れずケイジの理解してる範囲内で説明を試みるならば、【
空間の向こうに行ってしまったので、この宇宙からは巨大な“穴”としてしか認識できないのだ。
問題なのは、その強大過ぎる重力だ。
強大過ぎる重力は、周囲の物質を引き寄せ吸い込むだけでなく、空間と時間に、通常宇宙ではありえない作用をする。
空間を捻じ曲げ引き延ばし、時間を吸い取る。
時間がBHに向かって吸い取られた結果、時間が引き延ばされ、通常空間での時間よりも進みが遅くなるのだ……とケイジは理解していた。
そしてBHの周囲には、膠着円盤なるプラズマ流のリングが高速周回しているのだという。
これはBHのそばにあった星が、BHの強重力吸い込まれる過程で生まれたもので、星を構成していた物質が、BHに重力で引っ張られる力に対し、回転運動に伴う遠心力が釣り合った結果、延々とリング状を維持してしまったものだという。
その一方で、膠着円盤にならずに吸い込まれたプラズマ流の内のごくわずかが、BHの南北の極点で互いに激突し、吸引された時の速度で膠着円盤に対して垂直方向に飛び出していったのが、ケイジがレーザー光かと思った直線光の正体【高速ジェット】なのだ。
理屈から言えば、膠着円盤も高速ジェットも、いずれ形成する為の質量が尽きて消滅するはずなのだが、それは人間の尺度では永遠と思える程の遥か未来のことなのだろう。
〈じんりゅう〉はこのBHの周囲に形成された膠着円盤の中に、ワープゲイトを潜ったと同時に飛び出してしまったのだ。
かまぼこ型のプラズマ流の隙間は、一切の反射も光も発さない星などではなく、そもそもそこには何も無い穴だったのだ。
〈じんりゅう〉から見えるかまぼこ型の黒い穴は、例えば土星のリングの上から見た土星の位置にあたる巨大な黒い穴だったわけだが、では何故にかまぼこ型の上の縁までプラズマ流が見えていたのか?
常識で考えると、惑星の北極点をプラズマ流が通っていたことになってしまう。
だがBHの場合はそういった常識が通じなかった。
かまぼこ型の上の縁に見えるプラズマ流は、〈じんりゅう〉から見てBHの穴の反対側の膠着円盤のプラズマ流なのだ。
本来ならば、球状の穴に隠れて見えないはずの〈じんりゅう〉の反対側のプラズマ流が、BHの重力で間の空間が歪められたことで〈じんりゅう〉の位置でもプラズマ流の光景が届くようになってしまったのだ。
〈じんりゅう〉の前後でプラズマ流がグニャリとカーブしているように見えるのは、プラズマ流が曲がっているのではなく、空間の方が歪んでいるのだ。
だから〈じんりゅう〉がどんなに進めども、プラズマ流のカーブの基部にたどり着くことは無い。
進んだ分だけカーブの基部も遠ざかるだけだ。
プラズマ流は曲がって見えているだけで、実際に曲がっているわけではないからだ。
今〈じんりゅう〉は膠着円盤の北天側の面上に位置しているため、BHの球状の穴の北半球しか見えず、結果黒いかまぼこ型の穴しか見えていないが、
もしもっとBHから遠ざかり、膠着円盤の外まで離れれば、かまぼこ型の穴の下に上下対象の下向きのかまぼこ型の穴が見えるはずであり、BHは巨大な小文字のeのようなプラズマ流の輝きに見えたのかもしれない。
ケイジは驚愕すると同時に、なにか深く納得してもいた。
オリジナルUVDなどという……絶対に破壊不可能であり無際限のUV出力を有するなどという、この宇宙の理からはずれた物体を生み出す場所として、凄く相応しいと思ってしまったのだ。
これまで判明してきた〈太陽系の
オリジナルUVDが、具体的にどのようにしてBHから生み出されるのかはまだ不明だが、ようするに【オリジナルUVDビルダー】とはBHのことだったのだ。
まさかBHそのものが人工物だとは思いたくは無いが…………。
とはいえ〈じんりゅう〉の置かれた環境の謎が解かれたとしても、根本的な目標の達成はまだ成されたわけではなかった。
〈じんりゅう〉はここまで来ることで、〈太陽系の
それも一刻も早く達成せねば人類が滅びかねない。
すでに〈太陽系の
【
ならば、この空間にもそのグォイドの元となった船がいる可能性はないだろうか?
少なくとも、ここまで来た〈じんりゅう〉を、グォイドが放置してくれると考えるのは楽観が過ぎると思っ――。
[けいじツカマレ!]
そうエクスプリカが怒鳴ったのとほぼ同時に、〈じんりゅう〉の左舷上方すぐそばのプラズマ流の壁が弾けた。
ケイジは緊急回避した際のGで首が折れるかと思った。
[敵襲ダ!]
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