▼第一章『炎のたからもの』 ♯3
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フィニィは操舵桿を握るグローブの中で、手のひらから汗が滲むのを感じた。
緊張しているから……というだけではない。
感じるはずの無い熱さに、体が反応してしまっているのだ。
その理由はすでに分かっていた。
原因は、バトル・ブリッジの前方ビュワーの彼方に輝く星にあった。
〈じんりゅう〉は今、その星へと艦首を向け、猛烈な勢いで加速中であった。
フィニィの操舵の結果ではない。
その星の恐ろしい程に強大な重力が、〈じんりゅう〉を猛烈に引き寄せているのだ。
フィニィは握る操舵桿と、視覚聴覚その他の五感全てで、〈じんりゅう〉が重力勾配を猛烈な勢いで転げ落ちているのを感じていた。
フィニィは幼い頃に地球で乗った、ジェットコースターやスキーでの記憶を思い出していた。
自分のコントロール下を超えた加速と、それにより達した速度は恐怖でしかない。
ましてや向かうのは、近づくこと自体が極めて危険な灼熱の星なのだ。
刻一刻と、下方からメイン・ビュワーの画面を占めていくその星は、幾重にも重ねられたフィルタリングによりその眩き光が減じられ、直接視認が可能となっていた。
が、フィニィはそれによって、まるでとぐろを巻いた光の竜の集まる巣のような星表面のプラズマ流が認識可能になり、余計に恐怖をつのらせた。
その光の竜は、時に星表面からアーチを描いて飛び上がり、〈じんりゅう〉を瞬時に食らいつくすかもしれないのだ。
フィニィは艦の舵がみるみる内に効かなくなっていくのを感じ、思わず叫んだ。
竜の放つプラズマやら電磁場やらが、宇宙の気流となって艦をランダムに揺さぶっているのだ。
「ちょ……艦長ぉ……これ、本当にやるんですかぁ~!?」
そう叫ぶ頃には、すでに〈じんりゅう〉は光の竜……つまり
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その兆候は、思い起こせば『
太陽系への順調な接近を行っていたものの、〈じんりゅう〉の間接的妨害により減速を封じられた【グォイド光点増援群】は、太陽系を通過することを選択した。
そしてその際、土星圏に|存在した
これにより、人類は戦力において圧倒的に勝る【グォイド光点増援群】に、成すすべも無く蹂躙されずに済んだわけだが、【グォイド光点増援群】の全てが太陽系から完全に去って行ったわけではなかった。
【グォイド光点増援群】のうち少なくとも200隻以上が、太陽に最も接近した際に、太陽表層より高度13万キロの位置で太陽表層より発せられたプロミネンスに接触した。
そして瞬時に意思無き残骸となったグォイド艦は、加速を止め、太陽の強大な重力に引かれ、太陽のリングとなって周回を始めた。
その出来事が意味することを、いち早く理解した者が、人類の中に僅かに存在した。
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「すん……ぐぉい重力だよぉ艦長! それに舵も訊かない! 落っこちる前に推力再増加! 加速して高度を維持します!」
「了解した! ルジーナ、例のブツは!?」
「発見マーキング済みデス!
12時方向距離1000キロに、300キロ間隔で計4柱の当該オブジェクトを確認。
相対速度差、現在プラス時速200キロで接近中……ですが、めっちゃ回転してますデス!」
「フォムフォム、プローブからの情報により、針路下方にプロミネンス発生兆候を複数確認、
「ユリノよ…………今さらだけれども、すこしスピードを出し過ぎではないかな?」
[ダガ減速スレバ即太陽の高重力ニトッ捕マルダケダゾ]
「船体温度、急激に上昇中……現高度から降下した場合、今から20分以内に生命維持限界に達します」
「艦長、太陽放射により各プローブとの通信が困難になってます。このままじゃ…………」
「プローブ1から4信号途絶、プロミネンスにより蒸発した模様なのです」
「プロミネンスの発生を確認! 回避するぞい!」
「ああ! ちょっとまっ――」
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――【
――月SSDF総司令部、中会議室――
30数名が集められた仄暗い会議室の中心に、眩い光の球が突如現れ、ドーナツ型のテーブルの周囲からそれを見ていた面々は、照らされると同時に思わず目を手で覆うか、顔を背けた。
「失礼、すぐに輝度を下げます」
テューラは慌てて、そのホログラムの光の球体の光の強さを直視できるレベルまで弱めた。
そして、室内の面々に、その光の正体がよく知る星であることが伝わった。
「…………太陽か?」
「その通りです。
『
テューラはそう答えながら、光度が弱められ、マグマのような濃いオレンジ色の対流渦巻くホロ太陽をハンドコマンド《身振り手振り操作》で拡大し、その黄道面を周回する極小の物体群をレーザーポインタで指し示した。
それは、太陽のサイズに比してあまりにも細く、途切れ途切れであり、また太陽に恐ろしく近かった。
「ご存じのように、これらは元【グォイド光点増援群】の艦艇ではありますが、プロミネンスに焙られた際に破壊され、今は完全に無害な残骸であると考えられます」
「ああ、それくらいなら我々も理解している。
一時は、太陽をスイングバイして太陽系内に居座ろうとするかもと肝を冷やしたからな」
テューラはその言葉に頷いた。
あの日の出来事は、そうそう忘れられるものではない。
「テューラVS艦隊司令、要点を言いたまえ。
今は太陽に構っている場合ではないと思うのだが?」
「失礼しました。
……ですが順を追って説明させて下さい。
我々が、この残骸でできたごく細く途切れ途切れなリングを観察し続けた結果、現在進行形で太陽に降下しつつあることが分かりました。
これは、太陽表層のコロナに接触し続けるすることで、その抵抗により減速している為です。
もし、これがただの航宙艦の残骸であったならば、そのまま蒸発して無くなるだけでしょう。
ですが…………ここから先は、私共が出したシミュレーション映像となります。
今から約4カ月、遅くとも6カ月以内に、この太陽リングは以下のような変化を遂げる可能性があります」
テューラはホロ太陽の映像を、約四カ月先まで早送りさせた。
「何か映っているのかね」
「私には見えんが?」
「さらに拡大の上、画像調整します」
ほぼ逆光による黒いシルエットでしか見えなかったそれが、再度フィルタリングが成されることで、ほぼ蛍光緑と黒色となった太陽表層を周回する見覚えのある円柱状のオブジェクトであることが見て取れるようになった。。
「これらはこの時点で、太陽黄道面の高度8万キロを時速180万キロで周回することになると思われます」
テューラはわざわざ口に出さずとも、そのオブジェクトが何かを、室内の全人類の代表となった面々が理解したことを確信して、話を続けた。
「つまりこれらは、この高度への降下の過程で、数回にわたるプロミネンスへの衝突と通過を潜り抜けており、当然ながら、本来ならば我々とグォイド双方の艦艇の構成材料で、それによる超高熱に耐えられる物は存在しません。
ただ一つの例外を除いてですが……」
「……つまりあなたは、これが……これらが全てオリジナルUVDだと言いたいの?」
「そうです。
それ以外には考えられないのです。
太陽の放つプラズマの奔流たるプロミネンスに耐えられる物体など、他にはありえませんから。
もちろん、これらは現時点ではシミュレーション……つまり仮説に過ぎません。
ですが、現実となる可能性は非常に高いと考えております」
そこまで告げるとテューラは反応を待ったが、事態を飲み込んでもらうには、まだ少し時間が必要なようであった。
人類が、約三年後に地球に襲来するという【
だが、その決定以後は会議参加者のあまりの多さと利害の違いにより混乱を極め、そのままでは時間を空費するのみで人類の行動意思決定は不可能と判断、【
費やした時間の中で、もっとも賢明な決定であった。
そうして選ばれた各国家間同盟およびレフトアウト国の高官、SSDF各艦隊の司令、各分野の有識者からなる30人の頭脳に、人類の未来は託されることとなった。
多くの不平不満異議があったが、それらは限りある時間の有効活用の為にと封じられ、さらにSSDF総司令部の戦略AIの意見を〈30人会議〉に加えることで、一応の公平性と論理性が担保されることで、人類社会全体の納得が確保された。
「それで~その~今の君の意見に対して、君らが誇る戦略AIのメ……メ……め~」
「〈メーティス〉ですか?」
「その〈メーティス〉はなんと言っているんだね?」
そのSSDF関係者ではない……つまり対グォイド戦闘の知識や経験の無い国家間同盟高官の問いは、当然テューラも予想していたことであった。
「すでに〈メーティス〉には、この仮説は提出済みです。
……というより今ご覧いただいたシミュ映像自体が、最初に私共が〈メーティス〉に提出した仮定を元に、
〈メーティス〉の意見が気になるのはもっともだと私も思います。
ですから、今ここで彼女の意見を聞いておきたいと思います」
テューラはそう告げると、太陽のホログラムを消去し、代わりに立体化された巨大なSSDFのエンブレムを会議室中央に呼び出した。
そのデフォルメ縮尺した内太陽系各惑星を中心にオリーブの枝で周囲をあしらったエンブレムこそが、SSDF総司令部戦略AI〈メーティス〉のアバターなのだ。
[皆さまに当該案件に関する〈メーティス〉の検証結果をお伝えいたします。
女性の声で穏やかに語る〈メーティス〉の、淡泊にして簡潔な答えに、会議室の人間は微かに「数万?」と呟いたきり、しばし沈黙した。
〈メーティス〉、それは初期グォイド大規模侵攻迎撃戦時に起動してからこれまで、幾度かハードウェアたるスーパーコンピュータを乗り換えながら、主にSSDF全体の行動計画の立案と、〈グォイド行動予測プログラム〉での敵行動予測に用いられ、グォイドとの戦いにおいて大いに活躍、貢献してきたSSDFの誇る戦略超AIだ。
人類がその知性と文明を用いてグォイドとの戦いに臨まねばならなくなった際に、高性能AIを製作し、それに戦いの補助を求めるのは当然の選択であり、実際そうせねば人類は早期にグォイドに敗北していた。
事実上、人類の創造した最大最高性能の人工知性と言って良い。
突如として勃発した【ケレス沖会戦】や【木星事変】ではもちろん、土星圏で起きた『
だからテューラは“太陽で何かが起きる”という情報を独自に入手した直後から、許可を得て〈メーティス〉にコンタクトし、助力を仰いだのである。
が、基本的に〈メーティス〉と人間とが、このように直接的に会話をすることは稀だ。
人間とAIたる〈メーティス〉とでは、思考形態に齟齬がありすぎて、直接会話は双方に無用な誤解を生みかねない為だ。
だが理由はその一つだけではなかった…………。
「ああ……つまり君は、オリジナルUVDが本当に太陽にあると考えているのだね? その……総数は不明だが」
[はい]
「ではその…………仮に、その……太陽にある多数のオリジナルUVDを回収で来たならば、君はこれから先の【
[はい。多数のオリジナルUVDを回収し、それを搭載した兵装を用意し用いれば、【
「なんだね?」
[太陽黄道面上空からのオリジナルUVDの回収には、かなりの困難が予想されます。
また、仮にオリジナルUVDが数十、あるいは数百柱単位で回収できたとしても、それにより【
「…………いや、それは分かっているが」
[私は【
「メーティス!」
テューラは思わず訊きもしないことを語り出した彼女を止めた。
〈メーティス〉が人間と直接対話を滅多に行わないのは、彼女と人間たちの間で、グォイドとの戦いにおける意見に、決定的な違いがあるからであった。
「あ~〈メーティス〉君、君が人類脱出用の恒星間移民船を作り、可能な限りの人類を太陽系脱出させることに注力するべきだ……という意見を持っていることは把握している。
だが、それについては後で話し合うということでかまわんかね?」
[はい、失礼しました議長]
〈30人会議〉の議長を務める壮年男性の言葉に、〈メーティス〉は恐ろしい程素直にそう答えた。
互いに、意見が決定的に違うことは理解していた。
〈メーティス〉をはじめとしたAI群は、グォイドとの戦いに際し、太陽系内からの脱出が最良の選択肢だと考えていた。
というより、戦って勝利することをほぼ絶望視していた。
ゆえに確実性の高い選択肢を提唱したのだ。
それに対し、人類は絶対的反対を唱え、グォイドとの徹底抗戦を選択した。
どちらの選択が論理的に妥当だったかはさておき、結果として、人類はグォイドとの戦いに勝利し続け、人類は己の選択の正当性を証明してみせたわけだが、それも【
故に〈メーティス〉は再び人類太陽系脱出案を提唱し始めたのだが、幸いにも、根幹に〈アシモフ三原則〉が刻まれた彼女は、人間に従順であった…………少なくとも今は。
「〈メーティス〉意見をありがとう、ご苦労だった」
テューラはこれ以上話が横道に逸れないうちに彼女にそう告げると、〈メーティス〉のアバターは素直に消え去った。
「あ~……え~っと、とりあえず…………私の提案はご理解いただけたかと思います。
質問がある方はどうぞ仰ってください」
「もちろんあるわ」
テューラは即座に挙手した女性高官に、軽く咳払いをしてから「どうぞ」と促した。
「あなたが言う、太陽を回るオリジナルUVDを回収することの戦略的価値は分かりました。
けれど先ほど〈メーティス〉が言っていた、オリジナルUVDの回収には困難が予測されるという点について、まだ説明されていないと思うのだけれど?」
「確かにそうですね、ではご説明いたしましょう」
テューラは再びホログラムを呼び出した。
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「うおおおおっりゃあぁあ~!!」
操舵補助席にかけるクィンティルラが、掛け声と共に極めて乱暴に操舵桿を倒すのを見た次の瞬間、ユリノは「ひいいぃぃぃ!!」
と叫ぶ途中で、首からグキリと嫌な音が聞こえた気がした。
同時に、メインビュワーの彼方の景色が90度ロールし、直前まで画面を縦に縦断していたプロミネンスの光の柱が、画面下方へと回り込んで消え去っていった。
だが、ビュワーにはすぐにまた新たなプロミネンスの柱が現れていた。
「アイツもかわすぞ!」
問答無用でクィンティルラが再度操舵桿を倒し、新たなプロミネンスを回避した。
だが遅かった。
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「太陽リングを形成しているオリジナルUVDを回収するには、六つのハードルをクリアする必要があります。
一つめは“重力”です」
テューラは輝度を下げた太陽表面を、ゴマ粒のように小さなオリジナルUVDが周回する光景をホロ投影させた。
一見して太陽にあまりにも近い。
そう見えるのは、太陽があまりにも巨大であるから、という理由もあったが、いずれにせよ灼熱の星の表面に、あまりにも近い高度を周回していることには変わりなかった。
「〈メーティス〉のシミュが正しければ、オリジナルUVDがすぐに太陽の重力に引かれ落下していないのは、【グォイド光点増援群】だった時代の速度で、太陽を高速で周回しているからだと思われます。
つまり、太陽のオリジナルUVDを回収したくば、太陽の重力に抗いながら、この高度まで降下する必要があります」
テューラはそう説明させながら、手のひらの上に、比率的にやや巨大に投影した1200分の1スケール程のホロ〈じんりゅう〉を呼び出すと、それをつまんで、太陽表面を周回するオリジナルUVDに近づけ、そして手を離した。
〈じんりゅう〉は池に小石を落とすがごとく、太陽表面に落下して消えた。
「もちろん、ただ降下しただけでは、太陽の重力には逆らえませせん。
仮に〈じんりゅう〉を回収作戦に投入させたとして、〈じんりゅう〉主機オリジナルUVDのパワーをもってしても、スラスターが耐えられないでしょう。
とはいえ、オリジナルUVDの出力をもつ〈じんりゅう〉でなければ、太陽のオリジナルUVD回収は不可能かと考えます」
「その……重力の問題にはどうやって対処するつもりなの?」
「ああ、それについては、〈じんりゅう〉を太陽に接触した【グォイド光点増援群】のように、東から西方向へ加速させながら降下させます。
これにより〈じんりゅう〉は、太陽を周回する遠心力と、太陽の重力が釣り合った状態となり、落下する心配はなくなります。
つまり〈じんりゅう〉を太陽の衛星……と言いますか新たな惑星にするわけですね」
テューラは、新たなホロ〈じんりゅう〉を、周回するオリジナルUVDを広報から追いかけるように、ホロ太陽黄道面東西方向から放ちながら説明した。
航宙士官なら誰でも思いつきそうな常識的な話であったが、〈30人会議〉の非航宙士の高官には噛んで含めるように説明する必要があった。
「ですが当然、新たな問題が出てきます。
“高度”と“速度”と“プロミネンス”というハードルです」
テューラは周回する太陽のオリジナルUVD群上空に、無事ホロ〈じんりゅう〉が周回し始めたのを確認すると、ホログラムを自動再生させた。
「ご存知のように、太陽の表面は有り体に言って灼熱地獄です。
オリジナルUVDの周回する高度に降りるだけで、〈じんりゅう〉の船体にかかる熱のストレスは相当レベルとなります。
そして速度……重力に抗う速度を出した場合、秒速7万キロ近い速度を出さねばならないことになります。
そしてプロミネンス…………」
テューラが説明を続ける最中、ホロ〈じんりゅう〉の進路上の太陽表面に、いくつもの炎の柱がうねるようにして立ち上がった。
「太陽表面を覆うプラズマ化したガス層“コロナ”からは、プロミネンスと呼ばれるプラズマガスの噴出現象があります。
もしも〈じんりゅう〉の進路上でこれが発生した場合、重力に抗うだけの高速を出している〈じんりゅう〉が回避するのは、非常に困難でしょう」
そうテューラが語る最中に、太陽表面から立ち上ったプロミネンスのアーチに、〈じんりゅう〉は回避を試みる間もなく自ら突入すると、蒸発して消え去った。
「つまり、太陽からオリジナルUVDを回収するのはめちゃめちゃ大変ということです」
テューラは〈じんりゅう〉の主機オリジナルUVDと、オリジナルUVD
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――【
「あ~あ」
操舵補助担当クィンティルラの無理矢理な回避行動は、無駄に終わった。
一瞬メイン・ビュワーがホワイトアウトしたかと思うと、全ビュワーがダウンし、シミュレーション終了と赤い文字が表示された。
〈じんりゅう〉は沈んだ…………というよりプロミネンスに突っ込んで溶けて蒸発した。
シミュレーションを行う前から分かっていたことだが、太陽黄道面を周回するオリジナルUVDを回収するのは、一朝一夕ではかなわない目標だった。
「やっぱこうなったか~」
左右に分かれたメイン・ビュワーの彼方から、テューラ司令がそう他人事のようにぼやきながらやってきた。
太陽を掠めた【グォイド光点増援群】搭載のオリジナルUVDが、太陽を周回している……その可能性にいち早くたどり着いたユリノ達は、それを回収し、対【
だが、シミュレーションの結果至った結論は、今のところただ一つであった。
ユリノは改めてテューラ司令に尋ねる他なかった。
「本当にこれ……やるんですか?」と。
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「テューラ司令……質問がある」
「どうぞ」
「君は太のオリジナルUVD回収にはハードルが六つあると言ったね?」
「はい、確かに言いました」
「君が今言ったのは重力、高度、速度、プロミネンスの四つだけだ。
残りの二つは何かね?」
テューラは予想はしていたが、できれば触れられたくなかった質問に、若干の精神力を消費してから答えた。
これから告げることを、喜んで聞く人間などいないだろうからだ。
「残るハードルの内一つは“HOW”……どうやって回収するか? です。
周回中のオリジナルUVDは、ランダムな回転運動を繰り返していると考えられ、これを〈じんりゅう〉あるいはその他の航宙艦で、この状況下で回収するのは、技術的に難易度がとても高いのです」
「もう一つは?」
「もう一つは、他の五つほど存在の確証あるハードルではありません。
……が、私達や〈メーティス〉等のAIは、それがあると信じています……」
「何が?」
「人知れずに太陽の近傍まで潜入していた……グォイドの妨害です」
テューラの言葉に、しばらくの間〈30人会議〉の面々は沈黙したままだった。
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