EpisodeⅤ (Not yet a)Day of APOCALYPSE
これまで(EP4各話)のあらすじ
これまでの…………リバース・スラスターズ(Episode4)は!?
▼Overture partⅠ~Ⅳ
火星・木星公転軌道の中間・メインベルト《小惑星帯》内【ゴリョウカク
時に第三次グォイド大規模侵攻迎撃戦より9カ月後――。
秋津島レイカ艦長率いるSSDF‐JX008〈びゃくりゅう〉は、大規模侵攻迎撃戦後に大量発生した野良グォイド艦隊の一つから、オリジナルUVD搭載・超長距離・大質量加減速移送艦〈ヴァジュランダ〉を守るべく、僚艦とともに迎撃へと向かっていた。
だがなんとか第一次攻撃をしのいだ時点で僚艦すべてが戦線を離脱し、たった一隻で、数の上で勝る野良グォイド艦隊の第二次攻撃を迎え撃たねばならなくなってしまった。
生還は絶望的となってしまった〈びゃくりゅう〉の艦長レイカは、妹を含む【ANESYS】適正者クルーの半数に増援を呼びに向かわせる一方で、たった一隻で決死の迎撃を試みる。
しかし、奮戦むなしく、最後の敵戦艦一隻を残し〈びゃくりゅう〉は全ての兵装を使い切ってしまう。
〈ヴァジュランダ〉搭載のオリジナルUVDを、野良グォイドに奪われるわけには決していかないと判断したレイカ艦長は、最後に〈びゃくりゅう〉を特攻させることを決意する。
しかし、〈びゃくりゅう〉が敵艦最後の一隻に体当たりしようとしたその直前、戦闘宙域に駆け付けた一隻のSSDF航宙艦が瞬く間に野良グォイド最後の一隻を撃破し、レイカたち〈びゃくりゅう〉クルーは命を取り留めたのであった。
駆け付けた航宙艦の名は〈じんりゅう〉。
レイカは廃艦処分が決定された〈びゃくりゅう〉を現宙域に残し、この新たな航宙艦JXX〈じんりゅう〉の艦長となって、グォイドとの戦いにのぞむのであった。
▼第一章 『旅の途中』
木星での戦いから、休むことなく土星圏グォイド本拠地への高速慣性航行をもちいた偵察作戦【サートゥルヌス計画】に従事することとなったVS‐802〈じんりゅう〉は、メインベルトを通過し、土星圏への到達を間近に控えていた。
ケイジは内太陽系通過時にノォバ・チーフから送られてきたデータを元に、ケーキ&クレープと名付けられた円盤状のステルス膜を製作し、サティと共に〈じんりゅう〉前方に展開、土星圏本拠地のグォイドの目を少しでも欺こうと試みる。
▼第二章 『パイレーツ・ニンジャ』
〈じんりゅう〉が土星圏へと迫る中、ユリノ達〈じんりゅう〉の女子クルー達は、木星での戦いで限界を超えた【ANESYS】の思考統合を行ったが故の、思考混濁症の初期症状と思しき起床時の度を越えた意識混濁状態に悩まさながら、【サートゥルヌス計画】を無事に終え、生還する為の準備に追われていた。
その一方で、クルー達は内太陽系通過時に、VS艦隊司令部より受けとった【キルスティ・|
その指令は、内太陽系に残った前〈じんりゅう〉機関長キルスティが考え、テューラ司令により承認されたものであり、現在紆余曲折を経て〈じんりゅう〉臨時機関長となったケイジ三曹に対し、残る九人の女子クルーが全員均等に親交を深めよというものであった。
▼第三章 『ダーク・タワー』
土星圏到達が迫る中、ケイジは待つだけの時間を使って、艦載機・昇電の補修と整備をパイロット二人と行ったあと、珍しく主機関室を訪れていたエクスプリカと出会い、彼との会話から、オリジナルUVDに何がしかの知性が宿っており、何かのメッセージを自分達に送っているかもしれないという仮説を聞く。
そしてついに土星圏を観測圏内に納める〈じんりゅう〉。
〈じんりゅう〉は数々のグォイド本拠地の拠点や防衛設備を観測・発見すると同時に、土星の夜の面の赤道上に、全高1万キロ以上はあろうかという巨大な用途不明の塔を発見する。
▼第四章 『グレート・ウォール』
土星最接近当日、〈じんりゅう〉は土星圏グォイド本拠地に察知されることなくこの時を迎えようとしていた。
そんな中、ケイジ含む〈じんりゅう〉クルーは、ふとしたきっかけから全員がここ最近、就寝時に同じ〈びゃくりゅう〉に関する夢を見ていたことが判明する。
しかも時を同じくして主機関室のオリジナルUVD表面が明滅を開始していた。
このことから、クルーに同じ夢を見させているのはオリジナルUVDである可能性に行きつく。
しかもタイミングから考えて、オリジナルUVDは何がしかの“警告”が目的である可能性が高かった。
時を同じくして休息中だったルジーナが、電測ゴーグルを通して、〈じんりゅう〉前方に展開した円盤状ステルス膜【ケーキ&クレープ】の縁部分が、何故か僅かに折れ曲がり始めたことに気づく。
ケイジ達はその事実から、〈じんりゅう〉の右舷側に“何か”が存在することに行きつくが、時すでに遅かった。
〈じんりゅう〉は、突然それまで観測されなかった何かに右舷側から衝突した。
それはUVフィールドで形成されたステルス膜であり、上下幅約30万キロ、秒速1000キロでベルトコンベア状に動く、天体規模の巨大な壁であった。
〈じんりゅう〉は太陽系に対し、
しかもその壁は、形成しているUVエネルギーが1Gに近い疑似重力を壁の内側に発生させており、〈じんりゅう〉は船体右舷に大ダメージを受けながら、
ユリノ達はこの巨大帯状天体を【ザ・ウォール】と命名。
ユリノはこの状況からの打開策を求め、【ANESYS】の使用を決断する。
しかしその時、〈じんりゅう〉バトル・ブリッジには全クルーは揃ってはいなかった。
ユリノはブリッジにいるクルーのみでの【ANESYS】を決行。
【ザ・ウォール】がいわゆる獲物を捕らえる為のトラップであり、捉えた獲物を仕留める為のグォイドが存在することを推測する。
直後に襲来した二種類の新型グォイド、【ザ・ウォール】上を四本の脚部で疾走する巨大な半球状のグォイド=【
いくら破壊すれども、虫の大群のごとく襲い来る新種のグォイドに取り付かれ大いに苦戦する〈じんりゅう〉。
【ANESYS】のアヴィティラは、ケイジ達【ANESYS】に参加していないクルーに対し、間もなく〈じんりゅう〉船体に取り付いた無数の
▼第五章 『トゥルーパーズ イン スターシップ』
直ちにのケイジとカオルコが、艦内に保安用に僅かだけあるライフルで武装し、ヒューボと共に艦内に侵入しようとす
その一方、不完全な人数で行っていた【ANESYS】の
そしてついに右舷より艦内に侵入し始めた
船体右舷では、ヒューボだけでは撃退できず、カオルコと加勢に加わったサヲリで何とか艦内中心部への侵入を防ごうと試みるが限界があった。
ユリノはフィニィに船体を高速ロール機動させることで、辛うじて船体に取り付いた
だがすぐに新たな
その窮地から〈じんりゅう〉を救ったのは、船外から機銃で
行方不明となる昇電を心配する間もなく、艦内に残った
ケイジは奇策をもって右舷通路内にいた残りの
▼第六章 『クラッシュ・ランディング』
ただちにを医療室に運ばれるサヲリ、その一方、ユリノは【ANESYS】の残した『〈じんりゅう〉前方に存在するとある場所に向かえ』というメッセージを頼りに、艦を捨て、シャトル等でその場所へ向かうことを決断、艦内各所のクルーに命ずる。
その最中、【ザ・ウォール】衝突以降、電算室で気絶していたシズの元に、別の
間一髪でシズを救出し、脱出ポッドによる退避を慣行する。
カオルコはクルー脱出の為に艦尾格納庫にあるシャトル〈スクールバス〉へと向かう。
が、そこへたどり着いたのはルジーナだけであった。
残りのクルーが他の手段で脱出すると信じ、カオルコはルジーナと共にシャトル〈スクールバス〉で〈じんりゅう〉を後にする。
バトルブリッジでは、ユリノがオリジナルUVDをグォイドに渡さない為の最重要指令Ωプロトコル実行のために、最後まで艦に残り、艦尾推進ブロックを切り離して【ザ・ウォール】の外へ墜落と同時に叩き出そうと試みる。
が、メイン・ブリッジ経由で侵入してきた
〈じんりゅう〉は主機関室にサティ、医療室にサヲリを残したまま、メイン・ブリッジの操舵席に残ったフィニィの操舵により、ついに
▼『Overture partⅤ~Ⅸ』
第四次グォイド大規模侵攻迎撃戦初期。
土星圏グォイド本拠地攻撃作戦より内太陽系人類圏へと帰ってきた〈じんりゅう〉は、再びメインベルト《小惑星帯》内【ゴリョウカク
しかし、オリジナルUVDを搭載し、〈びゃくりゅう〉の数倍の戦闘力を得た〈じんりゅう〉ではあったが、この戦いに僚艦として参加するのは、〈じんりゅう〉級四番艦として建造されたVS‐804〈ジュラント〉ただ一隻だけでり、しかも同艦はまだ擬装途中であり、主砲も未搭載の状態であった。
レイカ艦長らは、たった二隻で戦艦と空母含むグォイド別働隊に立ち向かうこととなってしまう。
〈じんりゅう〉は先行して【ゴリョウカク
さらに遅れて【ゴリョウカク
だがその時、【ゴリョウカク
〈ヴァジュランダ〉を狙う敵に、絶好の侵入路が設けられてしまったことに驚く〈じんりゅう〉クルー。
その事情をSSDF最高司令部から聞いていたレイカ艦長によれば、その回廊はこれから〈ヴァジュランダ〉がある物体=オブジェクトαを射出する為に形成したものであり、その射出を護衛することこそが、〈じんりゅう〉に与えられた真の最優先目標なのだという。
否応も無く、小惑星帯に形成された回廊の中間部分に移動・待機し、回廊を逆利用して襲来する敵集団を迎え打とうとする〈じんりゅう〉。
〈じんりゅう〉は温存していた【ANESYS】を起動させ、リバース・スラストで回廊内を後進しながら、まずは空母級グォイド二隻が放った飛宙艦載機群を迎撃・殲滅する。
だがその直後、艦載機を全て発艦させきったはずの空母級グォイド二隻が回廊内へ侵入してきたことが、偵察に出したクィンティルラ駆る昇電隊より知らされた。
昇電で得た情報によれば、空母級グォイド二隻は、本来ならば艦載機カタパルトである艦首開口部内に、【ゴリョウカク
〈じんりゅう〉は残り時間僅かとなった【ANESYS】で、空母二隻と戦わねばならなくなったのであった。
▼第七章 『土星(圏最果て)の人』
それぞれの手段で〈じんりゅう〉より脱出し、〈例の場所〉の手前から〈じんりゅう〉、〈緊急脱出ボート〉、〈シャトル・スクールバス〉、〈脱出ポッド〉の順番で
脱出ポッドに乗っていたケイジとシズの二人は、まず近くにいる〈シャトル・スクールバス〉で脱出したカオルコとルジーナに合流すべく、徒歩での移動を余儀なくされる。
ケイジは脱出ポッド内に、惑星不時着に備えて積まれていたリアカーを利用し、生命維持に必要な機材と物資を乗せ、シズと共に移動を開始する。
しかし公転軌道レベルで湾曲してはいるものの、ひたすら平坦極まるアウター《外側》ウォール上を徒歩で100キロ以上移動することは困難を極めた。
だが積んでいた物資による生命維持が限界に達する直前、〈シャトル・スクールバス〉より、カオルコ、ルジーナが向かわせたヒューボットと合流できたことにより、ヒューボにリアカーを引いてもらうことで、辛うじて〈シャトル・スクールバス〉で待つカオルコ、ルジーナとケイジたちは再開することに成功する。
合流を果たしたケイジは、UVキャパシタ内のUVエネルギーを使い切り、もう飛び立てなくなった〈シャトル・スクールバス〉を改造、アウター《外側》ウォール上を走行する車両へと転用することでユリノ、ミユミがいる〈緊急脱出ボート〉へと速やかに移動、二人をピックアップし、さらに不時着した〈じんりゅう〉の残骸までたどり着く。
サヲリとフィニィ、サティとエクスプリカがいるはずの〈じんりゅう〉内部を捜索する一同であったが、艦内には破壊されたエクスプリカとサティの亡骸らしき物体を除き、生存者も遺体も発見されなかった。
一同は〈じんりゅう〉残骸から〈例の場所〉へとむかう方向に、謎の車両の通過痕を発見し、そこにサヲリ達がいる可能性に賭けて移動するのであった。
▼第八章 『Days of Future Past』
第四次グォイド大規模侵攻の初期。
【ゴリョウカク
迫る空母級に対し、後進しながら距離をとりUV弾頭ミサイルを放つことで、人工的ケスラーシンドロームを小惑星群に起こし、最初の小惑星を放つ空母級グォイドの簡易実体弾攻撃をなんとか退ける〈じんりゅう〉。
しかし、ついに【ANESYS】の限界時間が訪れようとしていた。
地上車に改造した〈シャトル・スクールバス〉で〈例の場所〉へとむかうユリノ艦長以下〈じんりゅう〉クルーは、その目標地点の手前で、〈アリゾナ〉級戦艦をはじめとする無数のSSDF航宙艦の残骸に遭遇する。
アウター《外側》ウォール上には、第四次グォイド大規模侵攻迎撃戦の直前に行われた、SSDFによる土星圏グォイド本拠地攻撃作戦中に消息不明となった100隻ちかい航宙艦が墜落していたのだった。
そして目標地点たる〈例の場所〉もまた、正体不明の人類製超巨大航宙艦であった。
〈アクシヲン三世〉という艦名の書かれたその巨大艦の中で、他の〈じんりゅう〉クルーが内部で生存している可能性を求め内部へと足を踏み入れるユリノたち。
しかし、彼女達はエアロックを抜けた途端、何者かにより気絶させられてしまうのだった。
〈じんりゅう〉は【ANESYS】終了後も、【ANESYS】で組み上げた
だがそれも、空母級との距離が縮まることで限界が訪れようとしていた。
艦長レイカは、後退する〈じんりゅう〉から空母級へ向かって煙幕を放ちつつ、空母級後方から追尾中だった有人艦載機昇電の部隊に、その煙幕に紛れて攻撃を仕掛けさせる。
〈じんりゅう〉はマニュアル操船にて、昇電隊の攻撃により空母級の実体弾攻撃が封じられたタイミングを狙い、空母級二隻に接近、一端交差した後に後方から攻撃を仕掛ける。
この試みにより、一隻の空母級を沈めることに成功したものの、残り一隻を撃ち漏らした〈じんりゅう〉は、急ぎ残り一隻の空母級グォイドの追跡を行うのであった。
〈アクシヲン三世〉の中で目覚めたユリノ達クルーは、スキッパーと名乗る対人応対用ヒューボに案内され、艦の中に設けられた人工の砂浜〈アクシヲン・ビーチ〉にて、離れ離れになっていたサティ含む残りのクルーたちと再会する。
彼女達はこの艦に救助されていたのだ。
しかし、この〈アクシヲン三世〉という艦が人類の最高機密に属する存在である為、このビーチにて機密保持の為に半軟禁状態にされていたのであった。
ユリノ達は、ビーチに現れたこの艦の
しかし、シズがほぼ正解を推測してしまった為、やむなく全てが明かされることになったのであった。
〈じんりゅう〉との戦闘で武装を全て失った最後の空母級グォイドは、目標である超長距離・大質量加減速移送艦〈ヴァジュランダ〉に対し、体当たりをしかけようとしていた。
それを必死で追いかける初代〈じんりゅう〉。
だがいま一歩のところで間に合わないことが、すでに決定的と推測されていた。
しかしその時、〈ヴァジュランダ〉がその大質量加速能力で発射しようとしていた物体=オブジェクトαが放ったUVキャノンが空母級グォイドを貫き、〈ヴァジュランダ〉が破片による多少の損害は被ったものの、辛くも最後の空母級グォイドは破壊されるのであった。
フォセッタの明かしたところによれば、この艦は人類がグォイドに敗北した場合に備え、種と文明を存続させる為に、多数の胎児とあらゆる動植物の遺伝子データ、テラフォーミング機材を積み、他の恒星系にて再び文明を復活させる為に建造された恒星間移民船、あるいは太陽系脱出船なのだという。
そしておよそ五年前の第四次グォイド大規模侵攻迎撃戦の際に、人類敗北の可能性を考え、ついに太陽系から離れるべく発進するが、何故かフォセッタ以外の正規クルーは乗り込まず、しかも土星公転軌道を通過する際にこの【ザ・ウォール】に遭遇し、不時着してしまったのだ。
クィンティルラやフォムフォムと同じく、宇宙での戦闘や生活に耐えられるよう人為的に調整された人間=
さらにこの艦は、乗せられた多数の胎児の脳の思考つなぐことで、長時間の超高速情報処理を可能にする準【ANESYS】とでも呼ぶべきシステム=キャピタンを備えており、そのキャピタンは、ユリノ達〈じんりゅう〉クルーとの遭遇と、なし崩し的な情報開示から、彼女達に協力を求めることを選択した。
不時着時に喪失した人造UVDに代わり、〈じんりゅう〉のオリジナルUVDを〈アクシヲン三世〉に換装することで再び離陸し、【ザ・ウォール】の主とでもいうべき
その為の戦闘要員として、ユリノ達は助力を求められたのだ。
そしてユリノ達は、〈アクシヲン三世〉艦首上部に接続された防衛用ユニットへとフォセッタに案内されるのだった。
【ゴリョウカク
ユリノはその発射直前のオブジェクトαの先端上部に、見覚えのある艦影が接続されているのを発見した。
それこそが、先刻最後の空母級グォイドを貫いたUVキャノンを発射した主だったのだ。
ユリノは姉たるレイカ艦長から、それが密かに回収の上補修され、オブジェクトαの防衛用ユニットとして運用されることとなったかつての乗艦〈びゃくりゅう〉であると聞かされる。
そしてオブジェクトαが、人類存続の可能性を少しでも上げる為に、太陽系外へと向かって放たれる一種の箱舟であることを知らされる。
ユリノはレイカと共に「……いってらっしゃい〈びゃくりゅう〉」
と、発進していくオブジェクトαを見送るのであった。
そしておよそ五年半後、土星圏最果てに浮かぶ超巨大帯状天体【ザ・ウォール】にて、ユリノは〈アクシヲン三世〉の防衛用ユニットである〈びゃくりゅう〉と再会するのであった。
命がけで送り出した〈びゃくりゅう〉が、旅の途中で【ザ・ウォール】に不時着していたと知ったユリノは思わず崩れ落ちる。
しかし、同時に〈びゃくりゅう〉の存在こそが、今の彼女達に与えられた最後にして唯一の希望であった。
ユリノ達は今は亡きレイカ艦長からの贈り物がのごとき〈びゃくりゅう〉を用いて、この【ザ・ウォール】から脱出することを決意する。
▼第九章 『ロスト バケーション』
かくして〈アクシヲン三世〉に乗り、【ザ・ウォール】脱出を試みることとなったユリノ達であったが、〈アクシヲン三世〉の艦内のほとんどが、数百年単位の恒星間航行に備えて窒素ガスで満たされていた為、それを呼吸可能環境に変えるのにまる1日以上かかり、その間ユリノ達にできることは何も無かった。
ユリノ達はフォセッタに促され、再びアクシヲン・ビーチへと戻り、そこで自由に過ごすように言われる。
しかし、五年半前に送ったはずの〈びゃくりゅう〉がここに存在していたことに、当事者であったユリノ、サヲリ、カオルコ、クィンティルラ、フォムフォムらはたた落ち込むだけであった。
が、そんな彼女らの悲しみなど一切頓着せずに、この千載一遇とも言える砂浜で遊ぶ機会を、逃す手は無いと考える者がいた。
突如クルー達を触腕で捕まえたサティが、問答無用で自らをウォータースライダーにして、彼女らを人工の水面に放り込んだことを切っ掛けに、ユリノ達はこの機会にひたすら無心で遊び倒すことに決めたのであった。
フォセッタも交え、動力源サティのバナナボートもどきや、ボディボード、ビーチバレー、砂の城作り、シュノーケリング等々で遊び倒す途中、ケイジは水着姿となった〈じんりゅう〉クルーに対し、何かコメントをするという地味に命がけのイベントをこなし、クルーは一日を過ごすのだった。
▼第十章 『コンタクト』
翌日――
早速ユリノ達の〈アクシヲン三世〉での【ザ・ウォール】脱出作戦の準備が開始された。
キャピタンによりあらかじめ立案されていた作戦は五つのフェイズから構成されていた。
◆フェイズ1
【ザ・ウォール】への不時着時の戦闘で、搭載されていた多数の人造UVDの殆どを喪失していた〈アクシヲン三世〉に、〈じんりゅう〉の主機関オリジナルUVDを換装することで、再び飛び立つことが可能なようにする。
◆フェイズ2
〈アクシヲン三世〉の離陸。
〈アクシヲン三世〉内部のプラントで製造された約200基の化学燃焼ロケットを船体周囲に接続し、これを噴射することで疑似的に1Gの重力がかかっている
◆フェイズ3
離陸後、襲撃が予測される
◆フェイズ4
【ザ・ウォール】から飛び立った後、グォイドが制宙権を有している土星圏からの脱出。
◆フェイズ5
キャピタンの推測したところによれば、この【ザ・ウォール】の端には、これを生み出している〈太陽系の
そこでその前に、〈じんりゅう〉がかつて【ANESYS】を用いて木星内で【ザ・トーラス】を形成していたリング状異星遺物の異星AIとのコンタクトに成功したように、今回も【ANESYS】を用いて異星遺物【ウォール・メイカー】内にある異星AIにコンタクトし、〈アクシヲン三世〉を分解しないように要請する。
ユリノ達はフェイズ5の内容にもちろん驚いたが、否応もなく実行するしかなかった。
ただちに〈びゃくりゅう〉のバトル・ブリッジにて【ANESYS】を行い、存在すると思われる【ウォール・メイカー】の異星AIへのコンタクトが試みられるのであった。
キャピタンの推測通り、ユリノ達の【ANESYS】により、異星AIとのコンタクトはなされた。
アヴィティラ《化身》となったはずの彼女達の統合思考体は、何故か学校の教室のように表現された世界に、クルー個々の思考を維持した状態で呼び出されると、今は亡き初代〈じんりゅう〉艦長レイカの姿をした異星AIのアバターらしき存在との対話がはじまった。
異星AIと【ANESYS】との対話は、サティにより【ANESYS】に繋がってはいないケイジやフォセッタにも実況された。
だがそれによれば、どうやらユリノ達の【ANESYS】は、【ウォール・メイカー】内の異星AIではなく、〈じんりゅう〉から〈アクシヲン三世〉に換装作業中のオリジナルUVD内に存在した異星AIと対話しているのだという。
そしてオリジナルUVDの異星AI内には、今は亡き今は亡き初代〈じんりゅう〉艦長レイカの人格が保存されているらしかった。
そのレイカの人格からのメッセージをサティが言語化したところによれば、〈太陽系の
そしてその対話の最後に、あと12時間で〈アクシヲン三世〉および航宙艦墓場が【ウォール・メイカー】の位置に到達し、その直前に、〈じんりゅう〉を襲ったトータス《母艦》・グォイドとトゥルーパー《超小型》・グォイドが〈アクシヲン三世〉に襲い掛かってくるという情報がもたらされたのであった。
▼第十一章 『アップ・ライジング』
約10時間後――。
緊張するフォセッタを他所に、俄然やる気を取り戻した〈じんりゅう〉クルーにより、【ザ・ウォール】脱出作戦の準備が着々と進んでいった。
だが決して準備万端とは言えぬ状態で襲来してくる
さらに【ザ・ウォール】の彼方には、それを生み出してる【ウォール・メイカー】の姿が見え始めていた。
ケイジはサティに協力してもらうことで、オリジナルUVDを速やかに〈アクシヲン三世〉の防衛用ユニット〈びゃくりゅう〉に搭載することに成功する。
ユリノはオリジナルUVDを再起動させると同時に、再び【ANESYS】を行い、今度こそ【ウォール・メイカー】の異星AIとコンタクトしつつ、迫りくる
だが、再び学校の教室状空間に呼び出された【ANESYS】の
【ウォール・メイカー】の使用権限は、先に【ウォール・メイカー】にコンタクトしたトータス《母艦》・グォイドが有しており、
しかし、教室状空間に乱入してきたサティのアバターの助けもあり、
そしてその【ウォール・メイカー】の出した課題とは……人類が、グォイドと同等かそれ以上に、この宇宙で繁栄するに値する存在であることを示すこと……であった。
それらの対話を聞いていたフォセッタは、人類が〈アクシヲン三世〉を用いて恒星間移動を行おうとしていることそれ自体をもって、課題の答えにしてはどうかと提案する。
……と同時に、ユリノ達〈じんりゅう〉クルーに、一緒に〈アクシヲン三世〉に乗って、太陽系外への旅に出ないか? 男性であるケイジもいるんので子孫繁栄にも困らないぞ? と提案する。
これに対し、大慌てでブリッジに駆け付けたケイジは、自分なりの人類が宇宙に繁栄するに値するという理由を述べてみる。
それらの意見を加味した
【ウォール・メイカー】へと〈じんりゅう〉やSSDFの航宙艦の残骸が並ぶ航宙艦墓場が飲み込まれる中、異星AIからの課題をクリアし、辛くも【ウォール・メイカー】到達前に離陸に成功する〈アクシヲン三世〉。
しかし、後方からは引き続き
〈アクシヲン三世〉は残された【ANESYS】の思考統合時間を用いて、あらかじめ準備していた戦術で
▼第十二章 『レヴェナント《蘇りしもの》』
辛くも
これにより、アヴィティラ《化身》に【ウォール・メイカー】への限定的使用権限が移動したことで、【ザ・ウォール】が無数の破片となって崩壊を始めた。
これにより【ザ・ウォール】からの脱出を成し遂げた〈アクシヲン三世〉。
しかし、それまでの【ザ・ウォール】内でのベルトコンベア運動時に慣性が働いた結果、艦は土星方向へと進むことになっていた。
その最中、グォイドが土星圏の最果てに【ザ・ウォール】を生み出した理由となった存在が姿を現す。
かつてUDOと呼ばれた最初のグォイドの集団が来た方向に、新たなグォイドの増援と思われる無数の光点【グォイド光点増援群】が現れたのだ。
【グォイド光点増援群】は、【ザ・ウォール】のステルス機能を用いて内太陽系の人類の目からその接近を隠蔽すると同時に、土星赤道上に建造された【ダーク・タワー】からの減速用レーザーを受信することで、より短時間での太陽系到達を目論んでいたのだ。
もしも【グォイド光点増援群】の太陽系襲来を許してしまった場合、人類が生き延びられる可能性は限りなくゼロに近い。
その事実に愕然とする〈アクシヲン三世〉のクルーたち。
この事態に対し、フォセッタは〈アクシヲン三世〉で土星に乗り込み、赤道上の【ダーク・タワー】破壊作戦の実行を提案する。
減速用レーザーを発信している【ダーク・タワー】が破壊されれば、【グォイド光点増援群】が太陽系内での減速・停止が不可能となり、太陽系の通過を選択する可能性が高いからだ。
だが武装があるとはいえ戦闘用ではない〈アクシヲン三世〉で土星に乗り込むことは、自殺行為に他ならなかった。
しかし、自分達だけが〈アクシヲン三世〉で生き延びることなどできないと抵抗するフォセッタ。
その時、〈アクシヲン三世〉に元は【ウォール・メイカー】であったと思しき銀色の巨大リングが現れると、【ウォール・メイカー】に飲み込まれて分解されたはずの、200隻あまりの航宙艦墓場にあったSSDFの艦艇が現れはじめた。
【ウォール・メイカー】は、【ザ・ウォール】を生み出したように、〈太陽系の
そして航宙艦墓場の残骸から再生されたということは、当然あの艦の再生も含まれていた。
驚愕する〈アクシヲン三世〉の前に、【ザ・ウォール】突入時に無残な姿となって墜落したはずの〈じんりゅう〉が、完全に再生された状態で姿を現した。
しかもその主機関室には、元【ウォール・メイカー】動力源であったと思しきオリジナルUVDが搭載されていた。
▼終章 『遠い
フォセッタ達と別れを告げ、ユリノ達が蘇った〈じんりゅう〉に乗り移ると同時に、〈アクシヲン三世〉を守りながら蘇った200隻余りのSSDF航宙艦艦隊は、【ANESYS】直後であった為、〈じんりゅう〉クルーによる【ANESYS】ではなく、キャピタンと、無人状態での操艦となる再生SSDF航宙艦のAI達によって土星赤道上の【ダーク・タワー】を破壊すべく攻撃作戦を敢行した。
まず無数の【ザ・ウォール】の破片に紛れながら土星大気上層へと降下を果たした艦隊は、赤道を半周する過程で、土星リングに配置されたグォイドの迎撃用実体弾投射砲により、次々と沈められていった。
だが、沈められた艦は囮として土星大気上層を移動していた艦であり、〈じんりゅう〉と〈アクシヲン三世〉を含む本命の攻撃艦隊は、そのさらに下層の土星大気中を進行し、【ダーク・タワー】への接敵を果たす。
すでにグォイド側は実体弾を囮艦隊相手に撃ち尽くしていたため、その他の兵装でしか迎撃できない中、全火力を持って【ダーク・タワー】に攻撃を仕掛ける〈じんりゅう〉他の残存艦艇。
しかし、一点に集中することで防御力を強化する敵UVシールドを突破でいない艦隊。
その最中、〈アクシヲン三世〉を狙った一基のUV弾頭ミサイルから、〈じんりゅう〉が身を呈して守ったことから、再生した〈じんりゅう〉のメインフェレームが絶対破壊不可のオリジナルUVDと同質の物質で出来ていることが判明する。
〈じんりゅう〉はこの驚くべき変化を利用し、絶対破壊不可のメインフレームを用いて【ダーク・タワー】への体当たりを敢行し、艦首などにダメージを受けたものの、無事にこれの破壊に成功するのであった。
ただちに土星リングまで退避する〈じんりゅう〉と〈アクシヲン三世〉他の残存艦艇。
【ダーク・タワー】破壊による【グォイド光点増援群】への影響は、すぐに観測されることとなった。
【グォイド光点増援群】は太陽系内での停止を諦め、通過を選択し、加速を開始したのが確認された。
問題はその結果、【グォイド光点増援群】が間もなく土星圏を亜光速で通過することであった。
ユリノは最後に、再使用可能となった【ANESYS】を用いて、残存艦艇を護衛につかせた上で、再び〈アクシヲン三世〉を太陽系外へと向け加速させ、恒星間移民の旅を再開させることを決意する。
亜光速で土星圏を通過していく過程で、土星やタイタンに【グォイド光点増援群】の艦が衝突し、甚大なダメージが与えられていく最中、全艦を連結することで加速をSSDF再生航宙艦艦隊・残存艦艇。
【ANESYS】
▼エピローグ 『クロニクル』
元〈じんりゅう〉搭載のオリジナルUVD内に宿る異星AIにより、新たに選ばれた目的地・マクガフィン恒星系へと向かう〈アクシヲン三世〉は、航宙再開4か月後、途中に存在した無数のオリジナルUVDが連なってできたリングを通過した結果、僅か40年でマクガフィン恒星系への到着ができることになっていた。
フォセッタは、そのオリジナルUVDで形成された超光速航法を可能にするリングの存在にもちろん驚愕したが、その存在を太陽系の人類に伝える術もなく、旅を続けるしかなかった。
を果たした。
そして40年後……マクガフィン恒星系に到着したフォセッタは、な第五惑星〈マクガフィンⅤ〉を新たな人類の故郷にすることと決める。
その一方で、フォセッタ達はマクガフィン恒星系内にて新たなオリジナルUVD搭載の【ウォール・メイカー】と同等の〈太陽系の
フォセッタは〈じんりゅう〉クルーと過ごしたアクシヲン・ビーチでの思い出を胸に、ひたすら新たな故郷の構築に邁進した。
そして航宙再開108年後〈マクガフィン歴50年〉――
ついに〈マクガフィンⅤ〉地上に降り立ったフォセッタは、ドームシティを建造し、その中に〈ユリノ・ビーチ〉という人工の砂浜を設け、そこに〈アクシヲン三世〉で運んだ胎児から誕生した子供達と訪れた。
初めて砂浜で遊ぶ〈マクガフィンⅤ〉で生まれた子供達を見つめながら、フォセッタはアクシヲン・ビーチで〈じんりゅう〉クルーと遊んだあの時を重ねるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます