▼第四章  『グレート・ウォール』 ♯1

 とても良い夢を見た気がする。

 ハラハラドキドキはしたけれど、最後はハッピーエンドで終わる良い夢だ。

 それに何故か、とても懐かしさを感じた。

 だが、いったいどんな内容の夢だったのかは、目覚ましのアラームが鳴る直前に、目覚めるなり忘れてしまった。


「!!」


 パチリと目を開けるなり、一瞬自分がどこにいるのか分からなくてパニックになりかける。

 ここはいつも就寝している艦長室では無い。

 バトルブリッジの奥に隣接されている待機室内の仮眠用ベッドだった。

 二日前の緊急警報時、よりによってシャワー中であった為に、艦長であるにも関わらずブリッジ到着が最も遅れてしまった反省から、それ以降は土星最接近を終えるまでここに寝泊まりすることに決めたことを、ユリノは瞬時に思い出した。

 この二日間は、この待機室で8時間の睡眠を行なう以外は、可能な限りバトルブリッジで過ごすよう心掛けていた。

 サヲリやカオルコはもっとちゃんと休んだほうが良い云々と言っていたのだが、長くてもどうせあと三日間ぐらいの我慢なのだから、とユリノは押し通したのであった。

 ユリノはベッドから起き上がると同時に、今一度、ついさっきまで見ていた夢のことを思い出そうとして、やはり思い出せなかった。

 ただ、胸の奥が温かい気分で満たされているのを感じる。

 きっと良い夢だったのだと思う。

 だが…………にもかかわらず何故か頬が涙で濡れていたので、とても不思議に感じたのだった。


「…………」


 ユリノは曰く言い難い感情を覚えつつも、思い出せない夢に拘泥していても仕方が無いと、涙をぬぐいベッドから立ち上がることにした。




 ――土星最接近4時間前――。




「おはよう! 何か変化は?」


 すばやく身だしなみを整え、約8時間ぶりに壁一つ隣のバトル・ブリッジに入室するなりユリノは尋ねた。

 バトルブリッジ内には、土星最接近に備え、軟式簡易宇宙服ソフティ・スーツに折り畳み式ヘルメット内臓ベストとグローヴを装着したサヲリ、フィニィ、ミユミ、そして装甲宇宙服ハードスーツ姿のケイジ三曹がおり、それぞれがユリノに挨拶を返した。

 土星最接近時はクルー全員で迎えたい気持ちもあったが、10人のクルーで24時間艦を回す為に、残りのクルーは待機・休息に回っている。

 土星を通過した後も、まだ〈じんりゅう〉の旅は続くのだ。

 全員がブリッジにいて疲れてしまっては交代する人間がいなくなる。


「艦長、【ダーク・タワー】の全貌は分かって来た以外は、特に真新しい変化はありません」

「そう……、ま、悪いニュースがあるよかずっとマシね」


 副長席からすぐに返って来たサヲリの言葉に答えながら、ユリノは艦長席へと着いた。

 同時に自然と視線が左舷側ビュワーやや上方に開いたウインドウに移る。

 そこには土星の夜の面に完全に突入した〈じんりゅう〉の左舷側に、その姿の全てを現した【ダーク・タワー】が拡大投影されていた。

 塔はすでに全高で一万二千キロを越えることが観測で分かっており、暗視映像なので明るい緑と黒とのモノクロ映像であったが、土星の表層に浮かぶ黒き塔の基部は、想像を越えた巨大さを〈じんりゅう〉の前にさらしていた。

 例えるならばひっくり返した百合の花のように、【ダーク・タワー】は末広がりの多角形の基部をもっており、最下部の直径は最大で一〇〇〇キロを越えることが分かっていた。

 つまり、土星の直径約の一〇分の一もの高さがある物体が、人類の知らないところで、いつの間にか土星表層に建造されていたのだ。

 しかもそれは、土星重力に逆らって表層に浮いているだけでなく、土星の自転に逆らってもいる。

 そのような所業を可能とするのに、いったどれほどエネルギーを必要とするのかは想像もつかなかったし、それほどまでにしてグォイドが成し遂げたいことについても、猛烈に悪い予感がしたが、見当もつかなかった。


「それで、こいつの目的の見当は少しはついたの?」

「いいえ艦長、構造からいって一種の砲、もしくは通信施設の類いと考えてはいますが、確証にいたる決定的なデータはありません」


 寝ている間に【ダーク・タワー】の謎について、多少の進展はしていないかという期待は、あっさり否定されてしまった。


[塔ノ構造・規模カラ言ッテ確カニ“砲”カ超強力ナレーザー通信装置ノ類イダトハ考エラレルノダガ、ソノ向キガ謎過ギルンダナ]


 サヲリの報告にエクスプリカが付け加えた。

 【ダークタワー】は、土星の自転に逆らって土星表層を移動していることがすでに分かっている。

 そしてその先細りとなった塔の先端が、つねに一定方向を至高しているらしいことが観測されていた。

 常に土星の夜の面に立つ塔なのだから、それは太陽系の外側を指していることになるはずであった。

 もちろん土星の公転運動により、いつかは土星は太陽の反対側に行くことになり、太陽系外の一点を指すことが不可能になつ時がくるが、土星の公転周期は30年もある為、少なくとも過去約一〇年間から最低二年後まで、【ダーク・タワー】は太陽系の外の一点を指向することが可能なのである。

 だが……、


[スクナクトモ太陽系内ニハ、【だーく・たわー】ガ指シ示シテイルト思ワレル既知ノ惑星・天体ソノ他ハ存在シナイ]


 エクスプリカが8時間前と変らぬ、何度目かの同じ検証結果を伝えてきた。


[調査範囲ヲ太陽系ガマデ広ゲテ見タガ、完全ニ該当スル天体ハ無イ、幾ツカ方向的に近イ天体ハアルガナ……]


 エクスプリカがが補足すると同時に、ビュワーに土星【ダーク・タワー】の先端が向く方向に、直線ラインを伸ばした星間・総合位置情報図スィロムが映しだされた。

 もしも【ダーク・タワー】から伸ばした直線が、太陽系内外のどこかの天体を貫いていたならば、グォイドはその星と通信する為に【ダーク・タワー】を建造したのだという仮説が成立するのだが、少なくとも現状の観測データからでは、塔の指す先には天王星や海王星はもちろん、その先の太陽系外にも如何なる天体も光点も無く、その仮説は成立しなかった。

 もしも巨大UVキャノンやレーザー砲であるならば、グォイド側の準備ができたところで突然【ダーク・タワー】が内太陽系方向を向き、それで内太陽系の人類拠点を攻撃するという可能性も検討されたが、木星よりさらに遠い土星からでは、どんなに巨大でもUVキャノンでは射程が足りず、レーザー砲の場合はどんなに強力であっても、人類のUVシールドで防御が可能なことが分かっていた。

 塔の構造状、実体弾では無いと思われるが、仮に実体弾であった場合でも、木星よりさらに遠い土星からでは、発砲されてからでも対処が可能であるとの結論がでていた。


「……なら、スッキリはしないけれど、私らはこの情報を内太陽系に持ち返ることに専念した方がよさそうね。分かったからって出来ることがあるとも思えないし……」


 ユリノは何度目かの同じ結論を口にした。

 それは重大な脅威を先送りにしているようで恐ろしかったが、同時に自分達は何もしなくても良いという安心感も与えてくれた。


「グォイドが〈じんりゅう〉に気づいてる兆候は?」

「ありません艦長、少なくとも今回のフライバイでこれまでに観測された土星圏のグォイドの迎撃施設には、可動の兆候は観測されていません」


 ユリノは事前に分かっていたことだが、その答を聞いて安心した。

 〈ケーキ&クレープ〉は今も健在で、〈じんりゅう〉前方数十キロに浮かんでいたが、〈じんりゅう〉が左舷を土星に向ける現段階では、隠れみのとしての機能はもうはたしておらず、〈じんりゅう〉はグォイドがその気になれば、いつでも発見できる状態であったのだ。

 もし被発見の兆候があったならば、ユリノは問答無用で叩き起こされるはずであり、そうならなかった段階で分かることであった。


「他にないか新情報は? っていうか………………ルジーナは? たしか今って彼女のシフトじゃなかったっけ?」


 ユリノはブリッジを見回しながら尋ねた。


「ルジーナ中尉は、連日の警戒態勢で疲労が溜まり過ぎたとの艦のドクターAIの判断により休息にあたらせました。土星最接近一時間前までには復帰させる予定です」

「ああ、そうなの。この状況下じゃ無理ないか……電測担当だものね……」


 よどみないサヲリの解答が返って来ると、ユリノはうんうんと頷いた。

 木星雲海内での闘いでもそうであったが、このシチュエーションでの電測員の責任はとても重い。

 〈じんりゅう〉がグォイドに発見された兆候を、クルーの中で最初に掴めるのは電測員なのだから。

 電測自体は艦のコンピュータでも、交代要員のフォムフォムやおシズ、サヲリでも賄えるが、ルジーナの能力がずば抜けていることに変わりは無い。

 結果、彼女がダウンするのも無理なからぬことであった。

 とりあえず〈ケーキ&クレープ〉の影から〈じんりゅう〉が露出し、それから二日経ってもまだグォイドに発見されていないことから、ユリノはルジーナに休息をとらせるとしたら今しかないというサヲリの判断に賛同した。

 土星最接近時に戻って来るなら問題あるまい、と。


「他に報告するような事は特にありません」

「ま、そんなことだろうとは思っていたけどれどね……」


 サヲリの補足に、ユリノは艦長席に深く身を沈めながらぼやいた。

 単調な時間は緊張感と集中力を奪う。ユリノは自分が油断していることを自覚し、戒めようと努めてきたが、ルジーナがそうなように、限界があることも分かっていた。


「大丈夫ですか艦長、よろしければまだ休んでいても構いませんよ」


 サヲリが大きな溜息をつくユリノを気遣って言ってくれた。


「大丈夫、ちょっと心配症なだけ。それに、さっきまで見てた夢が思い出せなくてもやもやしてるかも」


 ユリノは心配をかけまいと、誤魔化すように言った。


「ならせめて朝食ぐらい摂って下さい」

「え……まぁ……うん」


 ユリノは余り食欲が沸いていなかったが、サヲリの声色に断らない方が良さそうだとすぐに判断した。


「じゃ、俺が機関室見て来るついでに、食堂行って何か用意してヒューボに運ばせますね」

「お願いします」


 ユリノが「シャキサクブロック(レーション名)でも良いよぉ~」という間も無く、そう言ってケイジ三曹がすぐに立ち上がり、サヲリが答えると、彼はブリッジから駆け出して行ってしまった。


「…………」


 ユリノは――何も逃げ出すように出て行かなくても……と思ったが、口に出すことは出来なかった。

 何も言えぬまま再びブリッジに訪れる沈黙。

 ユリノは今の自分、いや今の〈じんりゅう〉クルーが陥っている状況を改めて認めた。

 それを一言で表すならば“退屈”であった。

 グォイドの攻撃に備え、警戒を怠ってはならない。

 それは同時に、それ以外の多くの行動も禁じることであり、クルーにとっては緩慢な死へと誘う苦痛であった。

 何かすべきことを見つけたケイジ三曹が、嬉々として駆けだしていった気持ちも分かる気がする。

 が、その退屈を一時ではあるが忘れさせてくれるグォイドでもクルーでも無い存在が、今の〈じんりゅう〉にはいた。


『ユリノ艦長ぉ~、今見ていた夢の内容が思い出せないっておっしゃいましたかぁ?』


 緊張感の欠片も無いサティの声が唐突にブリッジに響いた。


「サ……サティ……いや、確かに今言ったけれど……なに?」


 ユリノは船体中央格納庫で大人しくしているはずの彼女からの艦内通信に、軽く戸惑いながら答えた。

 確かに第一種戦闘配置である今、艦内通信は全艦解放中ではあるが……まさか食いついてくるとは……。

 彼女には今がどんな状況か充分伝えたつもりだったが、クルー以上に退屈が苦手そうなサティに、ずっと忍んでいろというのは、やはり難しい注文だったのだろうか?

 あまり任務に関係ない無駄話ならば、やんわり止めさせようか……とユリノはそう短い間に思考を巡らせた。

 が、ユリノはサティとの会話を止めることはできなかった。


『ユリノ艦長、ひょっとしてひょっとしたらなんですが、艦長が今見たと言う夢の中に……〈びゃくりゅう〉……は登場しませんでしたかぁ?』

「…………出てきた……」


 ユリノは自分が何と答えたか意識するよりも前に、そう答えていた。








「サティ! なんで私の夢の中身が分かったの!?」


 ユリノはそう尋ねる間にも、思い出せなかったついさっき見た夢の記憶が、急激に蘇ってくるのを感じた。

 〈ヴァジュランダ〉、【ゴリョウカク集団クラスター】、姉の死に怯える自分……初めての〈じんりゅう〉、〈びゃくりゅう〉との別れ……。

 正確には、あれは夢では無かった。

 あれは“記憶”だ。


『べつに、たまたまですよ。

 ここ(中央格納庫)を通りかかったクルーの方々との世間話で、最近見た夢の中身が思い出せないってお話を聞いたのもありますしぃ、ワタクシの身体をマッサージチェア代わりにして寝ちゃった人が、寝言で〈びゃくりゅう〉が云々って言っていたのを聞いたので、ユリノ艦長ももしや? って思ったんです』

「……………………はい?」


 サティの言っていることを理解するのに、ユリノはしばしの時間を要した。

 クルーがサティをマッサージチェアにしてるですって?

 ユリノの知らない所で、また変なブームが来ていたらしい。

 ユリノは“なんで誰も私に教えてくれないの……?”と、少し寂しくなった気分を脇におき、話を進めることにした。


「えっと……クルーが寝言で〈びゃくりゅう〉って呟いてですって? 誰が?」

『えっと、たった今ルジーナさんが……それからケイジさんにクィンティルラさんに、他にカオルコさんにおシズさんに…………寝言なんで、今聞くまで何とおっしゃったのかよく聞き取れなかったのですが〈びゃくりゅう〉って言っていたんですね!』

「ちょっと待って……ってことは? みんなが〈びゃくりゅう〉の夢を見てるから、私も〈びゃくりゅう〉の夢を見たっていうの?」


 ユリノは思わず声のボリュームを上げて尋ねた。

 ついでについでに今まさにルジーナがサティをソファ代わりに寝ているらしい。


『はぁい、そうですよ』


 サティは屈託なく答えたが、ユリノはそれどころでは無かった。

 重要なのはサティが自分が今見た夢を言い当てたことではない。

 “皆”が同じ夢を見ていたことだ!


「エクスプリカ! 今の知ってた!? サヲリは!?」

[初耳ダゾ]

「ワタシも初耳です。ですが……ワタシも今言われて思い出しました……ワタシも最近〈びゃくりゅう〉の夢を見た気がします」

「…………フィニィとミユミちゃんは? 同〈びゃくりゅう〉の夢見たの?」


 ユリノはエクスプリカとサヲリとの返答に、何と返せば良いか分からないまま、ブリッジにいる残り二人の方を向いた。


「え!? えぇ~? ……あたしは最近見た夢なんてハッキリとは思い出せないです……ですけれど……その夢に……なんか小さい頃のユリノ艦長とかって出てきます?」

「ボクも〈びゃくりゅう〉云々は分からないけど、その夢に若い頃のテュラ姉って出てきましたか? あとノォバ・チーフにアストリッド姉も……」

「…………」


 ユリノにとって、二人の答はそれでもう充分だった。


 “……クルー全員が、いつから同じ夢を……いや夢という形で記憶を見ている……”


 ユリノの見た夢と同じならば、それは約八年前に〈びゃくりゅう〉が〈ヴァジュランダ〉を守るべく、【|ゴリョウカク集団クラスター】で野良グォイドと戦った時の記憶だ。

 皆が一斉に同じ夢を見るのも奇妙であったが、他にも解せないことがある。

 〈じんりゅう〉クルーの中で、八年前【|ゴリョウカク集団クラスター】で〈びゃくりゅう〉が〈ヴァジュランダ〉を守り、初代〈じんりゅう〉に助けられた一連の出来事の当事者であったのは、ユリノとサヲリとカオルコ、クィンティルラとフォムフォムの五人だけしかいない。

 他のクルーはまだSSDFに入ってもいないくらいだろう。

 つまり、経験したことのない記憶の夢を、彼女らは見たことになる。

 そんなこと、ユリノの知る常識からはありえなかった。

 しかし困ったことに、兆候とと思しき事態に心当たりが無いことも無かった。

 ユリノは答えを性急に求める前に、〈じんりゅう〉の中で最も客観性をもち、かつ論理的思考ができる(はず)の存在に、まず訊いてみることにした。


「エクスプリカ! なんでこんなことが起きたのか分かる!?」

[チョットマテゆりのヨ、ソンナコトイキナリ訊カレテモダナ…………]


 突然尋ねられたエクスプリカは、ヴーンという電子音をたてながら考え込み始めた。







 ――ほぼ同時刻、〈じんりゅう〉中央格納御――。


 ルジーナは目が覚めたからといって、他の人々のように瞼を上げるということはしなかった。

 そもそもしたくても出来なかった。

 彼女の顔面には【センリガン】という名の航宙艦の索敵に特化したHMD状デバイスが、分厚いアイマスクのように眼球部分にはめ込まれており、彼女自身が単独でモノを見ることはそもそもできない。

 だが幼いころから境遇で生きてきた彼女は、今さらその事実に驚くことなど無かった。

 目が覚めた瞬間に、自分が中央格納庫のサティを寝床代わりにして熟睡してしまったことも、〈じんりゅう〉の今の状況もすぐに思い出した。

 何か夢を見ていた気がするが、そんなことは気にもせずにルジーナが目が覚めて一番最初に行なったことは、頭部HMDを介して〈じんりゅう〉の索敵系にアクセスし、土星圏最接近間際の〈じんりゅう〉に危険が迫っていないかを確認することであった。

 もちろんブリッジの電測席で行なう方が精度と効率は上だが、【センリガン】が使えるルジーナは、ブリッジから離れていてもある程度の情報確認は可能であった。

 自分が〈じんりゅう〉の危機を見逃せば、〈じんりゅう〉が沈み、皆が命を失う切っ掛けとなりかねない。

 だからルジーナは、目覚めたならばすぐに電測の確認を行なおうと眠りにつく前に決心し、事実目が覚めるなりそう行動したのであった。

 幸い【センリガン】デバイスを通じて彼女に届く〈じんりゅう〉左舷方向に広がる土星圏に、これといった異常は確認されなかった。

 少なくとも、すでに〈じんりゅう〉の存在がグォイドに気取られていて、次の瞬間飛来した実体弾によって〈じんりゅう〉が沈む……という心配はなさそうだ。

 ルジーナは三度土星圏方面に異常が無いかを調べ、そう結論を下した。

 そして、念の為に〈じんりゅう〉の左舷方向以外になにかしらの異常が無いかを調べ………………その結果発見してしまった。

 〈じんりゅう〉は土星圏をフライバイしようと慣性航行中しているのだから、当然、艦の周りの位置関係は刻々変化していく。

 だがそれでは説明のつかない変化を、ルジーナは〈じんりゅう〉前方で見つけてしまったのであった。


「!!」


 突然跳ね起きたルジーナに、彼女を包んでいたサティがぶるっと身体を震わせて驚き、さらにそれに驚いたカオルコが、ルジーナの隣で「何事だぁっ!?」と跳ね起きた。


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