第11話 聡の覚醒?

『自分の意志を龍人達がグルになって無視したのだ!』怒りが俺の身体の中を駆け巡る。


 見知らぬ住宅街を駆けて、小さな公園に着いた。裸足の足の裏に砂利が食い込むが、俺は無視して走った。


「痛い!」 公園の砂利の上に小さなガラスの破片が落ちていたのを、踏んでしまい痛さに足を止める。痛みと、情けなさで、涙が溢れそうになり、顔を上げた俺は空に輝く満月を見つめた。


『青龍! 青龍が私に逆らうだなんて!』


 赤龍、白龍、黒龍にも俺は『出ていけ!』と怒鳴ってはいたが、心の奥の奥では信頼していた。そして、青龍は一番信頼していただけに、自分を裏切った! と腹を立てたのだ。


「青龍なんて大嫌いだ!」と、口に出した途端に、悲しそうな青みがかった黒い瞳が脳裏に浮かぶ。


『青龍!……あんなに綺麗なのに……』


 一度だけ、子供の頃に青龍に龍の姿を見せて貰ったことがある。満月の空を飛行する青龍は夢のように綺麗だった。


『何時も龍でいたら良いのに……そう、龍人の姿に戻った青龍に文句を言ったら、龍の姿では側にいれないからと悲しそうな顔をしたんだ……』


 悠然と空を飛ぶ青龍を、自分が俗世に留めている! 俺は男と結婚するつもりは無いが、龍人達は好きだった。本来の姿を封じ込めて、自分の側にいることを選択した龍人達が諦めてくれたら良いのだが、それは無さそうだ。


「私が黄龍だから、側から離れないと言うけど……私は本当に龍なのだろうか?」


 俺には全く龍としての自覚は無い。何だか龍人達を騙しているような心地悪さを感じているし、やはり自分は男だからと拒否感もある。


「龍だと納得できたら、何か変わるのかな? ああ! 何だかよくわからないよ!」


 夜空に輝く月を眺めながら、青龍が龍の姿になった瞬間を思い出す。


『龍人の姿が溶けて、青龍が龍になったんだ……月の光を浴びた青い鱗が煌めいていたなぁ……』


 俺は身体がどんどんと熱くなり、うっすらと黄金色に光っているのに気づかなかった。


「我が君!」何時もとは違う怒りに狼狽えた龍人達だが、裸足だと気づいて慌てて追いかけてきた。


 公園で月を見上げていた俺が、発光していたのに驚いたが、それより足を怪我している方を優先させてしまった。


 青龍が大袈裟に騒ぎ、おんぶして連れて帰る。俺は放心状態で、逆らうことも忘れていた。


『もしかして……さっき変な感じだったのは……』


 青龍に足を拭いて貰いながら、俺は奇妙な感覚は何だったのだろうと身を振るわせた。


 足の治療は青龍が力を使って済ませたが、何時もは稟としているのに、目を伏せておどおどしている。


「我が君がお怒りなら、元のアパートに引っ越します」


 悄々とした青龍なんて見たくない! 


「出て行ってくれるなら、アパートに帰るけど……どうせ、出て行ってはくれないんだろ? デカい男が4人も居候しては、暮らしていけないよ」


 パァッと龍人達は笑顔になる。俺は本当は龍なのかも? と考えると頭の中がグルグルになってしまい、家のことなどで怒っている場合では無くなったのだ。

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