2.香菜

2週間後、早速引越して来た香菜は新生活の準備を始めていた。

まだ半分ほど段ボールが残ってはいるが、後は荷を解いて中の物を仕舞うだけだった。

休憩にしようとペットボトルのお茶に手を伸ばしかけた時に、ケータイの着メロが鳴り響いた。

一瞬ビクリとし、恐る恐る手に取る香菜。

サブディスプレイに親友の松本環の名前を見てとると、緊張が緩み微笑んだ。


「流石、心理カウンセラーね、タイミングいいわ。」


ケータイの中の画面で環もカラカラ笑った。テレビ電話だ。


「まだ見習いよ。どう落ち着いた?」


「なんとかね。あと半分位かな?見て。」


カメラを切り替えて、部屋の中をゆっくり見せる香菜。

画面の環、無邪気に喜び、


「へぇ素敵な部屋じゃない!相変わらず仕事が早いなぁ香菜は。典型的なA型ね。」


再びカメラを自分に切り替え香菜。


「あら、血液型診断みたいなおおざっぱなもんは取り入れないってのが、ポリシーじゃなかったの、ドクター?」


「それは仕事の話。最近じゃ、朝のテレビの星占いで着ていく服の色まで決めてるくらいよ。」


香菜笑って


「まさか。」


「アハハハ。さてと昼休みも終わりか。そうそう冗談は置いといて(急に真面目な顔になり)、ストーカーの元カレ、あと尾けてきてない?」


香菜からも笑顔が消え、


「うん今んとこ大丈夫みたい。普段仕事行ってる時間帯にこっそり引越して来ちゃったし、前のマンションの方には誰にも行き先教えてこなかったから。」


「そっか。でも気をつけて。ストーカーって連中はそういう目に会うと、がぜん頑張っちゃう粘着質なタイプが多いからね。」


「脅かさないでよ。」


「とにかく、用心に用心を重ねて、やり過ぎて困るって事はないんだからね。明日は朝から手伝いに行けるわ。」


「助かるな。」


「じゃね。しっかり!」


「うん。・・・ね、環。」


「ん?」


「どうもありがと。」


「何よ改まっちゃって。当たり前でしょ。友達じゃない。」


「そうだね。じゃ明日待ってる。」


「バイバイ。」











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