2.香菜

まだ新築の香りが残るその部屋で、マンションの管理人が家探しに来たOLを愛想よく案内している。


「出来てそう経ってないから綺麗なものでしょう?」


水島香菜(26)は後に続き、部屋を見渡した。


「そうね。日当たりもとってもいいみたい。」


管理人は自分が褒められた様に誇らしげに、陽光が差し込む窓を指差しながら答えた。


「南向きですからね。角部屋で、お隣もまだ空き室なので、静かですよ。」


「ええ、外の道路の音も別に気にならないし。あら、この姿見大きくて素敵。」


言われてリビングの壁の方を管理人は見やった。


「喜ばれる方多いんですよ。既製品でこの大きさのミラーを買ったら結構するでしょう?」


大きく頷きながら香菜。


「本当。いつもどうしようか迷って結局買いそびれちゃうの。」


すかさずアピールする管理人。


「全ての部屋に造り付けてあるんですよ。特に女性にはお洒落に敏感な方が多いですから、気に入って頂けるみたいです。」


“きっと自分もその一人ね”


と香菜は思ったが口には出さなかった。

再び歩き出しながら管理人は尋ねた。


「お風呂場とトイレは別なんですけど。」


「ええ構いません。却ってその方が嬉しいの。」




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