1.沙織

皆で嘲笑っているその時、上から何かが降ってきた。


一番近くにいる少女が歩み寄って拾い上げた。



「なんだ生徒手帳じゃん。誰んだろ?」



不思議そうに広げて見ると、そこには沙織の名前が書かれていた。



「あれ?沙織のだ」


「嘘?貸してみ」



莉那も駆け寄り、奪い取る様に中を覗き込んだ。

最初のページに貼られている無表情な沙織の写真が見つめ返している。



「あいつ、焼きそばパンダッシュって言ったのに、何処で道草食ってんだよ!?」


「あはは。莉那、お約束w」


「いじめカッコ悪い」


「戻って来たらお仕置きだべぇ」



莉那は手帳が降ってきた空を見上げた。

ちょうど頭上にのぼって来ていた真昼の太陽の中に黒い点が見えた。



「何だアレ?」



眩しそうに見上げていると、小さかった点が段々と拡がって大きくなっていく。



「チッ(あいつまた何か投げ落しやがったな。超ムカついた、マジで一辺シメてやる)」



莉那は内心そう考えながら、舌打ちして額の上に手をかざした。

ようやく彼女にもそれが何なのかよく見えた。






満面の笑顔で笑っている、初めて見る沙織の顔だった。






ドズンッ!!



刹那、鈍い音とともに莉那の頭上に沙織が落下した。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る