第7話 Level 1:ゴースト屋敷『命の保証なし』
ということで。パーティが成立しました!
サラのパーティ
お金/60G
進行中イベント/なし
ノア
魔法使い・レベル2・善神信仰
/ステータス異常なし/RP3
シロウ
戦士・レベル6・悪神信仰
/ステータス異常なし/RP5
名前 ノア
職業 魔法使い
性格 タカビー
信仰 善
■■
レベル2
HP 18
MP 20
RP 3
カルマ 1
体力 17
腕力 3
知力 32
敏捷度 10
・・・ ・・・
装備
武器 とねりこの杖
防具 頭・布の帽子
腕・金の腕輪のパプリカ
体・魔法使いの服
足・普通の靴
アイテム ・地図レベル1
・やくそう
・やくそう
・なし
・なし
名前 シロウ
職業 戦士
性格 こわがり
信仰 悪
■■
レベル6
HP 56
MP 0
RP 5
カルマ 0
体力 55
腕力 23
知力 7
敏捷度 3
・・・ ・・・
装備
武器 戦いの剣
防具 頭・木製の兜
腕・手甲
体・鉄の鎧
足・普通の靴
アイテム ・地図レベル2
・おやつ
・不思議な薬
・やくそう
・アイテムボックス
├やくそう
├やくそう
├やくそう
├やくそう
└なし
「……悪神信仰!?」
「え、そうだけど……生き返るの、タダだし。や、そんな顔したって今さら信仰は変えられねぇんだからな! モードはやさしめにしたんだから、いいだろう!」
パーティを組むのにはとにかくモードはそろえとかないといかんのである。
私たちは乾杯をした後(会計はシロウが払った)、外に出た。
■ ■ ■ ■
「まずはですねぇ、教会に挨拶に行っておかねば!」
「え、めんどくさい」
バッチョは両手を縦に振った。
「何を言うんですか! 長いものには取りあえず巻かれておけ、それがうちのじいちゃんの口癖でしたよ!! 教会にはどうせお世話になるんですから。今のうちに付け届けを送っておくんですー!!」
「でもぉ……バッチョさん」
カンナがおずおずと口をはさんだ。
「最近の付け届けの相場は、200ゴールドに高騰してるんですぅ」
「え」
バッチョが固まった。付け届けの相場? ……なんかえらく汚れた感のする教会じゃないか?
「うかつなものをもっていくと、黒いリストに登録されるって噂ですし……先に軽いイベントをこなしてから、お金を貯めて挨拶に行った方が、心証もいいかと……」
「そもそも200ゴールドもないし!」
「200ゴールドのものを、ノアさんとサラさんの二人分ですぅ」
……反論はどこからも出なかった。
パーティの会計は私がにぎることになった。じゃんけんに、負けたのである。
私が持ってたのは50ゴールド、ノアは装備を買ったとのことですかんぴんだった。シロウは仲間と別れてしばらくモンスター狩りにいそしみ、お金を貯めて「戦いの剣」を買ったそうで。しかも余ったお金でやくそうを買いまくったそうで。
「貧乏だよね……しかも戦士・魔法使い・武闘家ってなんかすごく戦闘力寄りに偏ったパーティじゃない? 先々苦労しそう」
「大丈夫だよ、たぶん。ほら、俺薬草買うの趣味だし」
「妙にいっぱい持ってるなぁと思ったら! そんな趣味もつなぁぁ!!」
「でも、戦士は素早さが低いですから、回復しようと思ったらもう仲間が倒れてるってこともあります……サラさんが薬草をもってた方がいいと思いますぅ……」
カンナのアドバイスに従ってシロウの持ってたアイテムボックスを受け取ることになった。
すると。
「……持ってくのか……」
寒風が吹きすさんだかと思った。世にもおどろおどろしい、ため息まじりの声だった。シロウの肩の上にいきなりあらわれたギャング面のハムスターみたいなのが、喋ったのだ。
「あ、これ俺のナビ。ハムスターのモンタ」
「いや……ハムスターっていうかなんか似て非なる物って感じ……?」
ノアが言うとシロウは首を傾げた。
「なんかやさぐれてるから前の仲間にも嫌われてたんだよなー」
よしよしと撫でられているモンタは確実に殺意のある顔つきをしていた。
このパーティのかわいらしさは、すべてカンナに凝縮されていると言っていい。つーか断言しなければなるまい。
■ ■ ■ ■
冒険。冒険といえば、イベントである。
リンダ・リングでは一本のストーリーというものが存在しない。プレイヤーたちは各自でイベント屋(仕事斡旋屋と取り説にはあるらしいけど)に行き、好きなイベント参加権を買うのだ。
イベントシナリオを書いているのは、色々な人たちだ。R=R社のオリジナルイベントもあれば、ネットで登録したシナリオマスターたちによるイベントもある。私たちが買うイベントには署名がついていて、人気抜群のマスターのものだと「売り出した途端品切れ」ってこともあるらしい。
まぁそういうのはレベルがもーちょっと上がってからの話。
開始直後のプレイヤーなんかは、レベル0のイベント屋でタダのシナリオを仕入れるしかないのである。
「シロウがいるからしばらく楽ができるよね!」
「ああ、サラさんまた取り説読んでないのバレバレな台詞」
ノアが「読んでないの!?」と目を大きくした。
……リンダに怒られた話を聞いて爆笑してから、説明してくれた。
「モンスターのレベルはパーティメンバーのリンダポイントの平均に対応するレベルだから。戦闘システムからいって、そんな楽じゃないよ。むしろ大変かも」
「あっ、ごめん、ごめんよ。そんな顔しないでくれよ」
シロウがあわあわしながら謝った。メンバーに迷惑をかけることが、なんというかトラウマになっているらしい。
「さっさとイベント屋に行こう! 俺、いい店知ってるんだ。安いの」
「レベル0のイベント屋のは、全部ただなんですが……」
「…………」
■ ■ ■ ■
ギムダの通りを行く冒険者たちの間をぬって、初心者の区画に行った。色々な説明をしてくれる館の勧誘の声を片耳で聞きながらシナリオ屋に入る。
扉に「レベル0」とあるから分かりやすい。
中に入ると、客は私たちの他にはいなかった。カウンターの向こうにいるおじさんに話しかけると、自動的にウィンドウが立ち上がった。ああ、人が操ってるのじゃないキャラクターは喋らないって、こういうことか。
斡旋屋:どのシナリオにする?
1.「畑を荒らす魔物を退治して下さい」(推奨レベル2)
ギムダの町の南にあるタラッタ村の畑を荒らす黒い影。村の人たちを救って下さい! 報奨金が出ます。
2.「眠りの森のじいさん」(推奨レベル1)
ギムダの町を出て東にある森に一人で住んでいるおじいさんを起こしてあげてください。
3.「ゴースト屋敷:命の保証なし」(推奨レベル?)
かなりキてます。それはまさしくホラー映画! このゾクゾクに君は耐えられるか。屋敷の奥にあるアイテムを取って下さい。心に傷を負いたくない方はやめておいた方が……報奨金が出ます。
「なんかひとつだけ毛色の違うのが混じってるよね?」
推奨レベル「?」というあたりが、気になるじゃないか!!
見るとシロウはがたがた震えていた。
「なんでこのイベントがここに!! なんで!?」
しばらくなにか黙りこくっていたバッチョは、情報を検索でもしていたらしい。顔を上げると笑い出した。
「あっはっはっはぁ、このイベントあんまり怖いんで行く人がいなくなったんですねぇ。レベル0のイベント屋って、落ちるトコまで落ちたってことですな。なにしろこれねー、いわくつきなんですよ。R=R社のプロデューサーにサディストがいて、その人が丹念に丹念に作り上げたイベントなんで、とにかくマジ怖い」
「やりたい。やりたい!! 怖いの好き!!!」
「ええええええ、そんな。いやだ俺!!!!」
シロウを黙らせたのは、ノアの笑顔だった。
「ゴーストが怖いのって、戦士としては致命的って言ったわよね?」
「う…………」
「私たちはあなたと行くことにしたけど、喜んで厄介者を背負う余裕なんか、ないわけ」
「うう………」
「このあたりでバッサリと『お化け怖いのボクたん』とおさらばしてくれないかな。そうじゃないと、私たちがあんたとおさらばってことになるけど」
「ううう……」
シロウはだらだら汗をかいた。
「旦那旦那、男になってくだせぇ!」
バッチョがぶんぶん飛んでいる。
そして、長い長い時間をかけて、シロウはこくりとうなづいた。私とノアは手を取り合ってゴースト屋敷ゴースト屋敷ぃ! と喜んだ。
するとシロウの肩にひょっこりとあらわれたモンタが、
「命知らずな奴らめ……」
とぼそりと言った。
……なんだかすごくいやーな気分になってしまった。
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