第3章 滅び

第20話 カウントダウン

 1999年12月31日、ボクらは永遠に続くかのように思われていた1900年代に別れを告げようとしていた。街はいつもの暮れよりも賑わい、2000年という未知の年代を迎えようとしている。


 ボクらは集まった。


「ねぇ、2000年ってどんな感じかな?」

「どんな感じって、そりゃ1999年の次の年で、2001年の前の年さ」

「もう、そういうことじゃなくてさ」

「まさか世界が滅ぶとか、そんな話信じているわけ? Y2K問題だって、結局何も起きないじゃん」

「もう、ホント、夢がないというかロマンがないっていうか」

「愛だけでは生きていけないが、愛なしでは生きたくない」

「なにそれ?」

「え? 知らない? 座右の銘ってやつ」

「ざ・ゆ・う・のメイ?」

「あーもう、これだから学のない奴は困るねぇ」

「あー、またそういうことを言う」

「ほらほら、ケンカしないケンカしない、もう、いつもそうなんだから」

「たまにみんなで集まったんだから楽しくやろうよ」

「まぁ、そうなんだけどね。ホラ、ボクら人間と違って、こういうときに何をすればいいかわからないから」

「だからって、喧嘩することないでしょう」

「えー、だってホラ、人間って喧嘩ばっかりしてたじゃない」

「うーん、そー言われてみればそうなんだけど」

「そうでしょう?」

「でも、人間の悪いマネをすることもないでしょう」

「そりゃあ、そうさ。人間のマネをするってことは滅びるってことだもの」

「まぁ、滅びるといっても、人間は出て行っちゃっただけで、きっとどこかの星で、同じことを繰り返しているのだと思うけど?」

「それはどうかな? 人間だって少しは進化するだろう? ちょっとはマシになったんじゃない?」

「まぁ、そうだとしても、ボクらには関係のない話だね」

「そういうこと、ボクらには関係ない」

「そうね、ボクらはボクらだもんね」

「そうとも、ボクらはボクらさ」


 人類が地球を離れて2000年の月日が流れようとしている。

 地球歴2000年。ボクらはカウントダウンを始めた。


「いよいよカウントダウンだね」

「そうだね。カウントダウンだね」

「さぁ、みんな始めるよ」

「ああ、始めよう」

「じゃぁ一緒に数えよう」

「1010,1001,1000,111,110,101,100,11,10,1,0」





『0』と『1』だけで作られた世界は、2000年を迎えた。

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