変わらぬ瞳
第十一話 不慮の事故
ミストは写真を撮るのが好きだった。
写真といってもこの世界でのそれは立体映像である。
カメラの仕組みも魔法によるもので、フィルムも特殊な魔法媒体だった。
ある日そのカメラで魔力のほとんどないフィレンが写真を撮ってしまった。
「フィレン!」
当然、魔力疲労により三日ほど寝込むことになる。
「……俺何したんだっけ?」
朦朧とする頭で問いかけるフィレン。
「迂闊でした。きちんと『魔力のない小さなお子様などの手に触れないようにすること』って書いてあるのに」
ミストはいたって真面目に答えたのだが、フィレンはむくれるのだった。
「なんだよ……俺もうお子様じゃねえぞ……」
「いえ、重要なことなんですよこれは。
魔力疲労は治らないこともあるんですからね。ウォレフスキー製のカメラは特に、注意が必要だったんです。失念していました……我ながらカメラ愛用者失格ですよ」
「うぉれふすきー製? 何か関係あるの……」
「カメラというものはですね、フィレン、仕組みをカラクリで作ってある一般向けのものと、魔法仕掛けにしてある品質重視のものとの二種類があるのです。ウォレフスキー社はなかでも魔法仕掛けの物を専門とする会社なわけですよ」
ミストはカメラの社名ロゴをぽんぽんと示しながら言った。
「私のような魔法師なら、これで撮影するくらいの魔力は瞬間回復のうちですみますが、魔力のない人にとってはおおごとです。貴方のように使い果たしてひどい魔力疲労に陥ってしまう。私がヒーラーでよかったですね。体力疲労と違って魔力疲労は治らないこともあるんですから。さあこれを飲みなさい」
言ってミストは特別調合の魔力回復薬をすすめた。
「……うぐっ甘ぁあああっ!」
それは材料のなにもかもが激甘な薬なのだった。
「我慢して飲む!」
ミストは器の底をおして無理やり飲ませたのだった。
「まったく、一体何を撮ったんですか」
とプレビュー画面を覗くと、
「……こんなものを」
そこには魔力不足のせいでうすぼんやりとでしかないが、ミストの姿が映っていた。
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