第7話激戦
「こころ、アカネ、ここで待機しててね。」
「は~い。」
「了解です。」
何ともこの子達といると調子狂わね。この子達は、訓練生の中でもレベルの高い子達で今回は実践を兼ねて連れてきた。あの子達にとっては初任務となる。こころはどっちかというと、回復専門だ。名前通り温厚な子で、セミロングの可愛いらしい子だ。アカネはロングの髪に鋭い目つき、主に雷系の魔法に長けている。
「カノン、隆史、行くわよ。」
「うっす。」
「はいはい。」
その後、二人にそこを頼むと目的地に足を急がせた。冷たい風が頬を撫でた。目的地に着いたが、異様な空気が漂う。何かがおかしい。現地に着いてから30分程度の時間が過ぎていた。しかし、作戦時に確認していた位置情報によると、ここに敵がいるはずなんだけど、その気配がない。機械の故障かな?私を含めて作戦に投入された人数は5人。隆史とカノンと私以外はタイムマシンに万が一の事を考え、待機させておいた。と言うより、戦力を分散しておいただけだ。このマシンが無ければ当然帰れないからね。
「ねぇ、隆史、何かがおかしくない?」
「まぁ、そうだな。確かに妙に静かっていうか・・・。」
「不気味ね。」
カノンが次の言葉を付け加えた。風が止み、嫌な汗が出た。
「隆史、カノン準備はいい?」
「いつでもいいよ。」
「こっちもだ。」
森の奥に潜む何者かに向けて先手を打つ作戦で準備をした。ここは遠距離に長けているカノンで初撃を試みるのが妥当だ。
「カノン、目標は北東の方角、距離300メートル、範囲はやや拡大、属性は無でお願い。」
「OK~。」
カノンは手から遠距離型ライフルを取り出し、北東の方角に銃口を向けゆっくりと構えた。風が再び吹き始める。固唾で息を飲む。カノンはライフルに魔力を注ぎ込み、人差し指を引き金にかけた。次の瞬間カノンの撃った弾丸は的確に目標に着弾した。が、しかし、森の奥のターゲットに何の変化もなかった。外した?いや、着実に打ち抜いたはず・・・。それとも効いてない?いろいろ憶測が頭の中にぐるぐると巡った。
「今の一撃はなかなかよかったけど、60点かな。」
ようやくターゲットのおでましか。森の奥から出てきたその人物に固まるしかなかった。
「嘘だろう・・・。」
隆史が後ろに思わず仰け反った。私も隆史と同じ心境だった。あの作戦内容だとこんな大物がここにいること自体おかしいからだ。もしかして、これは罠・・・。
「何で?って顔をしてるな。いい表情だ。その間抜けな顔に面して特別に教えてやろう。」
不敵な微笑を含みながら一歩ずつ前進しながら近づいてきた。愛らしい見た目とは裏腹にとてつもない埋めることができない差を全身で感じた。
「今回の我々の作戦はお前たち幹部の始末が目的だ。あのレイナと翔が相手ならこちらも分が悪いからな。ただ、利用価値はある。降伏をしてこちら側につくというのなら殺しはしない。どうだ、一分は待つぞ。」
「でも、それならこっちにレイナと翔が来てたらどうするつもりだったの?」
「な~に、そんな事か。そんなの安易に想像がつく。情報を操作すれば戦力を分散することはまず予測がつく。次に、あちら側に相当強い敵がいると情報を流せば、自ずと主力である翔とレイナはそっちにいく。まぁ、その宛が万が一外れても、翔とレイナがどちらもこちら側に投入されることは回避できるからね。それがさっきの問の答えだ。今度はこっちの番だ。さぁ、返答を聞かせてもらおうか。」
有無も言わせぬ凄みがある態度で、立っているのがやっとであった。彼女は涼しげな表情で辺りを一瞥した。
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