第13話
「え、服部さんのこと」
「ンだぁ、埒が明かねえなぁ。服部さんの何をそのハンゾーにするって言うんだよ」
と、じーちゃん。少しお怒りモードに入ってるかもしれない。もう、気が短いなあ。
「うん、だから服部さんをこれから『ハンゾー』って呼ぼうってこと。せっかくさ、短いけどウチのこと取材するために、何回か来るんだから、その方が打ちとけやすいじゃない」
「そうかぁ、なんかおかしくないか、その意見。なんかこじつけっぽいなあ。それに服部さんだって、イヤ、だろうよ」
ギクっ、鋭いなトーシローは。だから、頭がいい奴は苦手なんだ。とくに理数系は頭の回転が速すぎる。まあ、トーシローの指摘はばっちり当たってる。渾名でもつけて、友達になっちゃえば、まあ友達のことを悪くは書かないだろうと、さっきのやり取りを見てて、とっさに思ったのが、ホントーのところ。このままの状況で、三人を置いて学校に行くのはやっぱり、イヤ、だ。もうここは、早く打ち解けて、さっさとオトモダチモードに突入しちゃうのが、いちばん手っ取り早い。もう、わたしの登校時間まで、秒読みだし。どうしたらトーシローの追及をかわせるかを考えていたら、ハンゾー本人がしゃべり始めた。
「いやあ、うれしいです。そんなに気をまわしていただけるなんて感激です。もうこちらの家族になっちゃったような、気がします」
アレま、意外と上手くいきそうだね。うん、われながらいい作戦だったかも。
「じゃあ、ぼくもお嬢さんのことを『アルミ』ってお呼びしていいですか」
げ! そう来たか。うーん、いきなりでそれは、ちょっとイヤかも。うーん、でも背に腹は代えられないっていうし、まあ交換条件としては泣くしかないか。
「モチロン、いいですよ。ってことは、オッケーっていうことですよね」
「はい、大丈夫です。でも、ひとつだけいいですか」
うーむ、何が大丈夫なんだか。まあ、これですこしは安心して学校に行けるってことね。
一件落着、良きにはからえ。
「え、はい。なんでしょうか」
「どうして、『ハンゾー』なんでしょうか。ぼくの名前は『半平』なのに」
なんだ、そんなこと。もー、何聞かれるのかと思って、ほんのちょびっとでもビクついて損した。
「服部さん、知りませんか『半蔵門』って」
「え、あ、知ってますよ。地下鉄の駅というか、メトロの線の名前なのかな」
「当たってますけど、ハズレです。『半蔵門』というのは、皇居、昔の江戸城の御門の名前、です。ちょうど、そこんトコを走ってる大通り『新宿通り』が皇居に突き当たるところにある門の名前が『半蔵門』なんです。その昔、徳川家康に着き従っていたといわれる忍者『服部半蔵』の屋敷跡があったことが、その名前の由来です。だから、単純です。服部だから『ハンゾー』分かりやすいでしょ」
いやあ、知識ひけらかしちゃったかな。どうも、爪が大きすぎて、隠すに隠せないねえ。うらむよ、天国のかあさんととーさん。
「え、そうなんですか。それ、聞いちゃうと『半蔵門』を知らなかったことが恥ずかしくって言いにくくなりますが、ぼく忍者の末裔なんですよ。だから『ハンゾー』って聞いてびっくりしちゃって」
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