第6話:戸惑い、そして決断
差し伸べられた手を、マナクリは振り払う。
「貴様の誘いに乗ったのは、目的の物を手に入れるためだ。戦神族は誇り高き孤高の破壊神……他の神族と馴れ合うなど有り得ん」
マナクリの拒絶反応は厳しい。
このままでは、頑として溶け込むことはないだろう。
「それは困った……しかし目的の物を手に入れたとして、天上回帰する方法はあるのか? 戦雲は君が思うほど甘い代物ではない、神機と言えど単機で突破するのは不可能だ」
バッドがやれやれと言った表情で、説得に掛かる。
「知った風な口をきくな、試した訳でもあるまいに」
「試したさ、ジン・ガインで、何度もな……結果は散々、見事に黒焦げだったよ」
マナクリの問いに素っ気なく答えると、彼女の表情が一層険しくなっていく。
「だがしかし、単機では無理でも、4つの神機が集まれば、戦雲突破も夢ではないと俺は考えている」
「その根拠は?」
マナクリが眉を顰める。
「……合体だ!」
バッドは、ニヤリと笑って右手の親指を立てる。
「神機4機による合体、その為にも君の力がいる……目的は同じ、地上を顧みず、無益な戦いを続ける神の世界を崩壊させることだ。お互いに利害は一致している、協力し合う事が最も良い手だと思うが?」
マナクリの3つの瞳を真直ぐに見据え、バッドが問いかける。
「その合体とやら……我が手を貸せばすぐに出来るのか?」
マナクリはゆっくりと言葉を紡いだ。
バッドは首を横に振る。
「いや、残念ながらまだ人数不足だ、合体には俺の他、9人の女神を必要とする……獣神族・光神族・戦神族の女神がそれぞれ3人揃わなければ合体は出来ない。君は6人目の女神だから、残りの3人を見つけるまで、当分はこの荒野で神を探す事になるな」
「敗軍の女神を拾う旅か……それでは弱者しか手に入るまい、そのような者を束ねたとしても、たかが知れているのではないか?」
マナクリが嘲る。
「マナクリ、君は弱者か?」
そんな彼女に、バッドが問う。
「どの口でそれを言うか……疑うなら、この場でもう一度拳を交えてみるか?」
苛立ちに任せて拳を握るマナクリの態度に、広間にいるベニを筆頭として、ウルカ、フルカ、ユリス、カタリーンの5人に怒りと緊張が走る。
バッドは、彼女たちに感情を抑える様に手で合図すると、マナクリの拳に手を添え、言った。
「君が弱者ではないように、バッドナンバーズもまた弱者ではない。俺は期せずして地上に墜ちた不遇の女神、その柱たちを家族として迎えてきた……この家族、如何な強大なる力を持つ君と言えども、崩すことは叶わんぞ?」
バッドは、強い意志と信頼の籠った視線をマナクリにぶつける。
背後に渦巻く、5人の女神たちの殺気。
マナクリは一息吐き、拳を収めた。
「分かった、お前の言う通りにしよう……家族にでも何にでもなってやる……だがな!」
マナクリが鬼気迫る表情でバッドを指さす。
「協力するのはあくまで天上回帰するまでだ、それ以降は例え合体が出来なくなろうとも我の自由にさせてもらう」
そう言ってズカズカと歩き、饗宴の上座にどっかりと座った。
「ふ、乗り気じゃないか……」
その光景を見守りながら、バッドは口の端を歪め、微笑んだ。
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