第12話:見守る力
「お袋、親父が動いた……ウルカ達も行かないと!」
ジン・ガインの行動を敏感に察知したウルカが、母親を急かす。
しかし、フルカは娘の進言を、静かに却下した。
「まだ時ではありません。ですが、いつでも出られる準備だけはしておきなさい」
「でも、親父が!」
ウルカが食い下がる。
そんな娘を、フルカは一喝した。
「ウルカ!」
「お、お袋……でも……親父が、親父が心配だ!」
母の厳しい態度に委縮しながらも、自らの主張を貫こうとする娘。
勇猛果敢な獣神族の血を伺い、母親は少し安堵する。
だがしかし、バッドの妻として、それよりも母親として、愛娘を死地に赴かせることは出来ない。
そしてそれを望んでいるのは、他でもない夫、サー・バッド自身だ。
「お父様を信じなさい、私達が剛腕を振るう時は、この身を犠牲にしてまでも、お父様のお命をお守りする時のみ……ですがお父様は、それを決してお許しにはならないでしょう……分かりますね? ウルカ」
フルカは血気に走る娘を、優しく問い諭す。
「ウルカ小さいから、良く分かんない……」
純心に首を傾げる、娘。
「この娘は、素直なのか馬鹿なのか……」
フルカは顔を伏せ、娘に見られぬように目頭を押さえる。
「お袋? なぜ泣く!」
それを敏感に察し、母親を慮る娘の仕草に、母はさらに涙を流した。
「とにかく、私達はお父様の号令があるまで、あくまで待機……艦隊を守るのが役目なのです」
「親父や姉ちゃんたちの帰る場所を守るのが、ウルカの役目なんだな? だったらやらねば!」
ウルカは逡巡しながら、母親の投げかけた質問の答えを、確実に汲み取っていく。
「賢いですね、ウルカ……その通りですよ」
その姿に、歓喜の涙を流す母親:フルカ。
「お袋? 何故泣く!」
ウルカが再び動揺する。
「いえ、お母さん、ちょっと嬉しくて……」
フルカはそう言って、優しく微笑んだ。
「ここでお母さんと共に見ていなさい、お父様の真の強さを」
ウルカとフルカが駆るジン・アニマ、そしてユリスとカタリーンの駆るジン・デーヴァ。
後陣を固める神機が見守る中、最凶と呼ばれた二つの神機が、今、激突する。
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