第二十五話・守り抜いた笑顔~これがなによりのご褒美かもね~
「
「まあ、なんとなね。でも、援軍はちょっと遅かったかな」
「まさか…あれを倒したのか?」
「うん。でも、ボロボロになっちゃった。
改めて自分の機体の状況を見る。ブースターはいかれ、砲は両方壊され、両腕がない。当たり前だが、「
「いや、大手柄だよ」
「それに、あいつを逃がしてしまった。遠くない未来、大きな障害になるのは分かっているのに…」
「それは、仕方がない事だよ。この瞬間くらい、未来の脅威より現在の喜びを謳歌しよう」
そういって
「敵機、四百十二機中三百八十七機撃墜、二十五機撤退。僚機、九十四機残存。敵影なし。僕達の完全勝利だ!」
「あ、あの、もう少しボリュームを…!」
止まらない。鼓膜が破れそう。それに気づいた
「大丈夫、
「うん、分かっているよ」
救えなかった命もある。でも、今歓声を上げている人達の命は守れた訳だ。その事を考えると自然と頬が緩んでしまう。
「まあ、本当に
「
そう言って、頭を下げた。何か返事を言おうとした時、画面が別のものに変わった。どうやら制限時間は短いらしい。 次に移ったのは、
「私の作戦では、ここまで上手くいかなかったでしょう。心から感謝します」
すぐに別の画面に切り替わる。やはり、返事を言う時間は貰えないようだ。
次は、
「『
恐らく最後であろう。
「
もうこれで終わりと思っていたが、
「え、
「扱い酷くないっ⁉」
考えてみたらいつもこんな感じな気がする。今回は戦闘モードでそういう会話あんまりしなかったけど。
「
平等なのだろうか?まあ、いいか。みんなに伝えたい気持ちはただ一つ。俺からも感謝の言葉を言いたかった。
「皆さん、俺に付いて来て頂き、本当にありがとうございました!」
少しづつ歓声が止んでいく。俺達にはやらねばならない事がまだまだある。そろそろ、機体を帰投させなければ。さあ、「
「
「
整備員の一人が止める。正直、そういう扱いは止めて欲しい。英雄願望がある訳でもなく、逆に特別扱いされるのが苦手である。恐らく、
「いえ、止めなくていいですよ。こうなる事は分かっていましたから」
「そういう訳だ。さっさと作業に戻りな!」
俺を庇った整備員は、そう言われて渋々作業に戻った。俺を想っての発言なのにすいません…
「機体がボロボロなのはしょうがない。戦闘だからこうなる事もあるさ。でも…使ったな?」
「…使いました」
「そもそもこいつは付けている意味が有るのか?射程、威力、飛距離、弾速、全て小型
「ノリで強そうには見えます!」
実際は強そうであっても、強くはない。こいつを付けた理由は別にある。
「それに、一発しか撃てないし、腕戻ってこないし」
「回収すればその場で腕を付ける事が出来ます!まあ、推進エネルギーがないので一発しか撃てないのは変わりませんが…」
「それに、整備がめんどくさい。もう一度飛ぶようにするのにどれだけ時間が掛かると思っているんだ」
「一応利点もありますよ…チャージ時間がないのと、敵の不意を突けるのはこの兵器の良いところです!」
「それだけだろ」
「でも、今回それが役に立ちました」
「…確かにな」
ようやく正座から解放してもらった。というかこの人、パンツ見られた時より怒っていないか?
「で、次の出撃はいつだ?お前の見立てでいい」
「恐らく、二日後くらいですね…」
「まじか…二日でこれを直さないといけないのか…」
素人目に見ても、二日で直る損傷ではなかった。しかし、直して貰わないと戦う事が出来ない。心苦しいが、
「…ご迷惑掛けます」
「いや、仕事だしな。高給取りだし、その分はやんねえと。しっかし、これは時間が掛かるな」
そう言って、
「そういや、お前に二人お客さんが来てるぞ。会ってやれ」
二人?一人は
「おにい、こっち」
声がした方向を向く。そこには資材にちょこんと座っている
「取りあえず、ハイタッチね。イエーイ」
「イエーイ」
パチンと手と手を合わせる。
「おにい、よくやってくれた。褒めて遣わす」
「なんか偉そう」
「かぐやだから実際に偉いのだ!」
「そうだった!」
「それで、何か話があるのか?」
「大体分かっているでしょ」
「まあ、ね。じゃあ、言い方変えるよ。この戦争を終わらせる方法思い付いたのか?」
「一応ね、二度手間だからここでは説明しないけど。この後すぐに会議になるからそこで説明する。私はおにいを迎えに来たの」
「…忙しいなあ」
どうやら休む時間はないようだ。仕方がない、もう敵は次の戦いの用意を始めているだろう。すぐにその対策も考えなければならない。それにしても、お腹が空いた。もう夕飯時だ。どうやらご飯抜きになりそうだ。
「すぐって言っても、三十分後くらいだから、少し休憩してていいよ」
「そうする。うう、ご飯が食べたい…」
「それについては抜かりがない、
取りあえず、ハハーっとひれ伏してみた。まあ、実際ありがたいんだけど。
「そういや、
「おうおう、感謝しなさい。どうせ
ばれてる。いつもながら、
「あ、後、そろそろ
「びいいいいいいいいろおおおおおおおおどおおおおおおおおおおおおおおおお!」
何かが俺に猛スピードで飛びついてきた。
「ああああああびいいろおおどおお!会いたかったああああ!すううううはあああああ!天鵞絨の《びろうど》匂い!
「ちょっとは、落ち着こう」
「ふみゅ!」
「だって私、
「なら、しょうがないか」
しょうがないのかっ⁉
この人は本当に、
「嘘みたいだろ…あれ、私のおねえになるかもしれない人なんだよ…」
いつの間にか
「
「使用人っ⁉」
いや、まあ、服装で薄々気づいてはいたのだが。
「良いんですか?主と使用人が…その…恋人なんて」
「それは大丈夫。
なるほど…それならいいのか?
「ただし、二十七歳!」
は?今何て言った?
「二十七歳⁉私より年上⁉」
おいおい、お嬢さんって言ってしまったよ!というか見た目若いなおい!
「失礼ですが、
「おにいは十二月が誕生日だから、まだ十六歳。つまり十一歳差」
「十一歳差⁉」
干支が一周しそうだ。使用人の立場以前に、そっちの方が大丈夫なのか?
「それでも二人は仲がいいけどね。愛に年の差なんて関係ないの一つの例かも」
「はあ…」
改めて二人を見る。
「すうううはあああ!すうううはあああ!」
って、いつまであの人は頬ずりしてんだ⁉そろそろ
「やっぱ
癒されるのっ⁉
「
「おかえりなさい!」
その言葉を放った
「…うん、ただいま!」
釣られて俺も笑ってしまう。
ただ、今は、この笑顔を守れただけでも、良しとしますか。
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