第二十話・破盾~もう守るものはなにもない、ここからは命のやり取りが始まる~
「な、何だ⁉う、お、ぐああああああああああ⁉」
爆発と閃光と共に、私の機体は大きく吹き飛ばされた。
「さらばだ、我が半身!わしがくたばった時にまた会おうではないか!」
そして、小型索敵艇に映った「
「行くが良い、若者よ!次の時代を作り出すのはお前達じゃ!」
「
「何が起こった⁉」
どうやら敵の輸送艦が爆発したらしい。状況を把握し、ニヤリと笑った。
「馬鹿め!爆発で一網打尽にでもしようとしたのか?爆発程度では、
しかし、機体はかなり飛ばされてしまった。早く味方と合流しなければ。そう思っていたら、レーダーに
目を凝らす。そこには、白と緑のカラーリングの雄々しい
「味方じゃない⁉」
その言葉を最後に彼の人生は終わりを迎えた。相手の斬撃よりコクピットを真っ二つにされてしまったのだ。
「まずは一機!」
さて、相手は疑問に思っているはずだ。何故ダメージを与えられない爆発を起こしたのか?簡単だ。確かにダメージはない。だが、至近距離であの規模の爆発を食らえば爆風で機体が吹き飛ばされる。装甲をパージしたのもその為だ。もし、装甲を外さず爆薬を爆発させれば、それも装甲が防いでしまう。艦内部の爆発に留めてしまう。だが、装甲を外した場合、装甲も一緒に吹き飛ばされる。相手の機体は装甲と共にバラバラに放りだされる事になる。そうなると敵は一機づつ孤立する。連携や陣形なんかあったもんじゃない。さらに爆発や吹き飛ばされたショックで混乱している者もいるだろう。それに対してこちらは、事前に爆発を避けれる場所まで移動していた。爆発による被害は全くない。さあ、この状況で、強襲を掛けられたら、敵は対応出来るだろうか?
「全機、作戦通りお願いします!」
時は作戦会議まで遡る。
「…このように、相手の体制を大きく崩す事になります」
これが今回の攻めの手だ。相手の行動に合わせて、「
「確かに、その状況ならこちらが一方的に攻撃出来るでしょう。しかし、得られる時間はごく僅かですよ」
「そうですね。約一分間。早ければ、このくらいの時間で相手は立て直すでしょう」
実際にはもう少し長い。だが、リミットを付けるのであれば、余裕を持っておきたかった。
「その時間で何が出来るんですか?」
「全機一回は攻撃出来ます。一人一機撃破。理屈だけならこれで百三機落とせますね」
そう、理屈だけならばこれで敵の四分の一がいなくなる。だが、実際そんな上手くいくわけもない。しかし、近づかせる事は出来る。
「狙った敵を必ず倒せるのなら苦労はしないです。大体、百三機別々の敵に攻撃する訳がありません。必ず被りが出てきます」
そう、同じ敵を攻撃してしまう可能性。これを潰す。
「それについては考えてあります。まず、爆破の前に、小型索敵機を使って管制室で敵機をマークします。最低でも百八機。出来ればそれ以上。そのマークした敵を一人一人に振り分けます。爆破後、その振り分けた敵を、管制室から攻撃位置まで誘導。これで同じ敵を攻撃する可能性はなくなります」
攻撃位置を誘導する事で、パイロットは操縦のみに集中出来る。結果、失敗の可能性は大きく減る。
「もし、一分のリミットの間に二機目を落とせそうであれば、また別の敵機まで誘導します。これなら、もしかしたら百八機以上倒せるかもしれません」
あくまで理想である。八十機くらい落としてくれれば後の戦いが楽になる。
「裏方も忙しくなりそうですなあ」
総司令が二コリと笑う。何か嬉しくなる要素なんてあったかな?
「
「いいえ、その作戦で良いと思います」
了承を得た。改めて皆に告げる。
「皆さん、あくまでリミットは一分です。一分経ったら別の作戦へ移行しますので、深追いは禁止させて貰います」
話は現在へと戻る。
俺は誘導に従い、二機目の攻撃位置へ移動していた。
「見えた!」
敵機は混乱しているのか、まだ止まったままだ。動き出すまでに決めたい。小型
「
情報の集計は
「今回の攻撃で撃墜した敵は九十八機。百三機いかなかったね…」
「…いや、上等だよ」
敵機は四百十二機いた。この攻撃前に、三十一機落としている。残りは、二百八十三機。予定通り進めても問題なさそうだ。
「全機、陣形を組んで、次の段階へシフトして下さい!」
再び作戦会議に遡る。
「一分間経った後の話ですが、ここからは少し長くなります。一度全ての内容を聞いてから、質問などをお願いします」
今までは出来るだけ被害を出さないよう作戦を組んできた。だがここからは、犠牲者が出る事も覚悟しなければならない。
「まず、四機一小隊でチームを分けます。これは、普段からそのような割り振りなので、予備機に乗る人以外はそのままの小隊で大丈夫です。その小隊の一機づつに具体的な役割を与えます。与えられた役割事に装備が違うので、一つ一つ紹介していきます」
端末のパネルに機体情報を上げる。
「腰に着いた小型
続いて次の役割と装備を映す。
「次にシューターの役割です。少し離れた位置からアタッカーを援護します。アタッカーはシューターが居る事も留意して、最悪攻撃はシューターに任せ、自分は防御に専念する事も考えて下さい。装備は中型
ここまでの二機が敵を倒す役目。これから紹介する二機はサポートがメインになる。
「次は少し変わった役割になります。ディフェンダー、守る役割です。 ディフェンダーには厚さ五センチになる盾を装備させてもらいます。この盾は、一発だけなら
ここまでで、戦闘のみならこなせるだろう。だが、個別の役割に集中せざるを得ないので、周りが見えなくなる。その対策が必要だ。
「これが最後になります。コマンダーの役割です。戦場全体を見渡し、必要が有れば他三機に支持を飛ばして貰います。戦場の状況を把握しながらも、次の目標を決めたり、自らも攻撃を行ったりして下さい。やる事が多いです。なので、小型索敵艇の管制室はコマンダーのサポートをお願いします。装備は身軽でいて欲しいので、ディフェンダーと同じ小太刀を持って行って下さい。決して無理はせず、生き残れるように動いくようお願いします」
これで役割についての説明は終わりである。これからは、その小隊で何をするのかを説明しなくてはならない。
「仮に前の作戦で、敵を百機倒しても、まだ敵は三百は残っています。ですが、いきなり味方が次々と撃ち落とされて冷静でい続けられる人間は僅かしかいません。そこを突きます。三百対百ではなく、四対一を心掛けて、小隊で一機一機潰していきます。敵機を倒すごとに相手の戦力が減り、混乱は広がります。それを繰り返し、相手を削っていきます」
ここからは、相手が体制を立て直す前に、どれだけ戦力を削ぎ落とす事が出来るかの勝負になる。できる限り、ここで勝負を決めたいところだ。
後の細かい指示を説明し、長かった作戦会議は終わりを迎える。
「これで会議は終了致します。皆さん、ご武運を祈ります」
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