第十六話・大切な人~どんな時でも、彼女が居てくれるから立ち上がれる~
「もう、大丈夫なの?」
「自分の子供たちが必死に頑張っているんだ。ここで立ち上がらなければ親失格だからな」
確かに、先ほどと比べて顔色が良い。どうやら、もう大丈夫のようだ。
「それで
それを説明するには、まず会談を振り返らなければならない。
「お父さん、会談での
「ああ、あの挑発的な態度か?」
首を振る。
「そっちじゃない。
「ん?それは作戦がうまくいったからではないのか?」
それもある。だが、それだけではおかしいのだ。
「冷静に考えてみて。確かに、作戦が成功し三対一を避ける事が出来た。でも、
「まあ、そうだな」
「私達『
「なるほど。確かにそうだな。『
「それにね、『
「
「それを調べるの。具体的にはこの数年の
端末で手に入る情報なら簡単なのだが、これは他の国と交渉しデータを貰わなければならない事だ。かなり時間を要する作業となる。
「
「現状の把握は大事。それに、これが必ずしも悪い情報ばかりではないと思う。案外、逆転の秘策が思いつける何かが見つかるかもしれない」
これは私の感。でも、こういう時は結構当たる。
「さあお父さん、作業を始めるよ」
「今回の襲撃を乗り切らないと、全て無駄になってしまうかも知れないぞ」
それについては大丈夫。
「まあ、おにいがなんとかしてくれるから」
「…それもそうだな」
「すいません、
「あ、
整備員の目が向いた方を見てみる。そこには何故か、布で仕切られたスペースが存在していた。まあ、いいや。居るなら入ってみよう。
「えっとですね、そのー…って
布をめくり中に入る。そこには
「女子更衣室は女性パイロットが使うので、今いっぱいな状況で。普段は交代制で、一気に出撃する事はないですからね。それならしょうがないと、
整備員の言葉はもう俺の耳には届いていなかった。そこには迷彩柄のスポーツタイプのパンツが存在していたのだ。迷彩柄、さらにスポーツタイプは色気がない代表な下着の一つだと思われる。だが、それは間違いだ。ただ、その魅力を引き出すのが少し特殊なだけである。まずは、スポーツタイプの方から解説する。例えば、色気がある女性が履いていたとする。それはとてもミスマッチだ。可愛らしい美少女、ミスマッチ。静粛な女性、ミスマッチ。素朴な女の子、ミスマッチ。大概の女性はミスマッチなのである。だが、筋肉のついた逞しい女性については、これほど似合うものがないだろう。迷彩柄も同じ事だ。こちらは女性自身の特徴ではない。職業によって合う合わないが決まってくる。例えば、看護師。やはりミスマッチだ。ショップ店員、ミスマッチ。ウェイトレス、ミスマッチ。巫女、ミスマッチ。だが、軍属の女性が身に着けるとこれほど嵌るものはない。つまりだ、軍属で引き締まった肉体の女性が迷彩柄のスポーツタイプを身に着けていたら、それはとてもマッチする。その姿は一つの芸術品と言っても差支えない。いや、しかし、いくら完成している事柄と言っても、他の可能性を考えないのはいけない事だ。迷彩柄が他に似合う衣装や職業が有るかもしれない。そもそも、先に上げたミスマッチの例が好きな人も居るかもしれない。しまった、俺としたことがパンツの可能性を狭めてしまった。パンツというのは、常に無限の可能性があるものだ。だからこそ、パンツの可能性を狭めてしまう思考は万死に値する。反省しなければ。さて、改めて新たな迷彩柄の可能性を…
ドゴォ!
考え… ドゴォ?
音のなった方に目を向ける。俺の足元だ。そこには床にスパナが突き刺さっていた。
「その床みたいになりたくなかったら…さっさと出ていきな!」
そうはなりたくなかったので、すぐに退散することにした。
またやってしまった。くそっ、パンツめ!お前が魅力的過ぎるからこうなるんだ!
「たく、お前は何やってんだか…」
「本当にすいませんでした!」
目の前には、着替えが終わって、資材に座っている
「ですが、大変魅力的でした!ありがとうございます!」
「…お前、本当に反省してんのか?」
怒られた。こちらとしては正直な感想を言っただけなのだが。
「まあ、まだ高校生のガキにパンツ見られたくらいで、ビービー言い続けるんも大人げねえな。しゃあねえ、許してやるか」
やっと正座から解放された。普段だったら、殴られているところだ。
「で、なんで私を探してたんだあ?」
「あ、『
「
そんな事を思っていると、
「ところでな、その、秘密の七つ道具は本当に付けたまま出るのか」
「
間違ってもらっては困る。
「それ、本当に役に立つのか?」
「
「
「痛いところ突かれたっ!」
「
「こいつを積む為に、技術の粋を掛けて軽量化したから、本来は『
「うぐぐぐ」
しかし舐めて貰っては困る。何の策もなく乗せている訳ではない。
「真面目な話、既存の戦い方だと、同格以上の相手と戦う時対策されてしまいます。ですが、既存の枠からかなりはみ出た
「…そんなもんかね」
「ん~まあでも、こいつには神様が憑いているから、大丈夫だろう」
「神様?」
何それ、知らない。
「ああ、知らないのか。『
「なるほどー」
俺は余り信心深くないけど、そう言われればありがたい気がしてきた。
「後、よく老人達が『
「え⁉じゃあ、この基地が『
「それが由来さ。というかまさか、十年前の事件。その凄惨な事件が、神がおわすはずの『
「全然!」
「おい!当事者っ!」
全く知らなかった。ただ「
「で、結局何が言いたかったんですか?」
「いや、縁起が良い機体だから落とされたら承知しねえぞってな」
「ご心配、ありがとうございます」
「…おう」
俺は「
「気いつけていけよ」
「はい!」
そう勢いよく答え、コクピットに乗り込んだ。
いざ、コクピットに入るとやはり緊張してしまう。
「
長い黒髪を後ろに束ね、使用人服に身を包んだ、可愛らしい顔立ちの女性。トレードマークの月の髪飾りが光を反射している。
「誰なんだ、このお嬢さん」
「…恋人です」
「へー、この人が」
本当は軍に入れないはずだ。でも、
「この通信機を部外者に使わせる訳にいかなくてな。話をさせてやれなくて悪いな」
「いえ、そこまで我がまま言う訳にもいきませんから」
「く…ふ…あははは」
自然に笑みが零れた。いつの間にか不安がなくなっている。いい感じに力が抜けたようだ。うん、俺はもう大丈夫だ。ありがとう、
「
イ ッ テ ラ ッ シャ イ
いってらしゃい
「行ってきます!」
完全に
「
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