第十三話・天鵞絨くんの現代戦争講座~ちょいと面倒だから、適当に聞き流して構わないよ!~

 もうすぐ作戦会議が始まる。作戦会議の前に、現代の戦闘について語ろうと思う。そんな事を言われたら、どんな難しいを言われるか分からない。そう思われるだろう。しかし、とても簡単なのである。AMエーエムによる遠距離攻撃、緋緋色金ひひいろかね製の武器による近距離攻撃。それだけである。そんな、単純な戦闘である。

 ここから先は何故こうなってしまったかという蛇足である。

 地球防壁膜アースシ-ルドを研究していた十二国家は、ある一つの結論に至る。そのエネルギーの生成に電気エネルギーが使われているという事である。自分達も全く同じものを作ろうと真似てみた。真似てみたものの全く別のものが生成されてしまった。

 それがAMエーエム

Allオール

Meltingメルティング

energyエネルギー

万物融解エネルギーとも呼ばれるものである。その性質は、既存の法則を全く無視しあらゆるものを溶かすというものだ。その発生方法は電気エネルギーをある一定の法則で加速させるというものであるが、何故それで発生するかは分かっていない。このエネルギーに関係する、観測されていない十八番目の素粒子があるとか、別次元に繋がり、そこから得ているなど多くの説があるものの結局のところ解明されていない。何故発生するのか、何故融解するのか分からないが確かに存在するそれを有効利用しない訳にもいかなかった。

 最初はその性質を利用し金属加工に使われていた。そして金属加工、生成の技術は大きく発展した。発展し過ぎた。

 その発展の結果「青生生魂あぽいたから」という新たな合金を生み出してしまった。名は古文書「竹内文書たけうちもんじょ」に出てくる伝説の鉱石から取ったものである。これが作られるまで二番目に硬い物質とされていた。ロンズデーライトという物質がある。もともと隕石が地球に衝突した時出来るこの物質は、AMエーエムの金属生成技術の発展により、人工的に合成出来るようになった。そのロンズデーライトに特殊な鋼を合成し出来たのが青生生魂あぽいたからである。それは、あらゆる衝撃に耐える硬度、砕けにくい柔軟性、非常に優れた遮熱性と夢のような金属であった。この素材を使った装甲により、現行兵器は効果が通らなくなり、無価値の存在になった。それにより、軍はAMエーエムの兵器利用を開始する。あらゆる物質を溶かしてしまうAMエーエム青生生魂あぽいたからも例外ではなかった。結果、開発されたのがAMエーエム砲である。その原理についてはまた長くなるので今回は割愛させてもらう。あらゆるものを溶かすその砲開発により、人類は最強の矛を手に入れたのだ。

 それからしばらく経ったのち、また新たな物が開発される事になる。それが「緋緋色金ひひいろかね」である。こちらも、古文書「竹内文書たけうちもんじょ」に記された伝説の鉱物である。伝説では、青生生魂あぽいたからと同一とされたそれは、やはりロンズデーライト原材料である。その性質は、青生生魂あぽいたからと比べ、生成が難しく、値が張る。比重が高く、重い。耐熱性が低く、高温下に長く晒すと変形・変質するなど、装甲には向いていなかった。しかし、硬度のみは青生生魂あぽいたからを超え、武器として加工した場合、青生生魂あぽいたからを切り裂き、貫き、砕く事が出来た。AMエーエムはその不安定さにより近距離で使用し続ける事が出来ず、 緋緋色金ひひいろかねはその高価さより使い捨ての弾丸にする事は躊躇われた。その為、AMエーエムは遠距離攻撃、緋緋色金ひひいろかね製の武器は近距離攻撃に使われる事になった。

 ようやく最初の話に戻る。長々と語った結果、何が言いたいというと、現代の戦いはミサイルなど飛び交わず、撃つ、切る、刺す、砕くを主とする、戦国時代の合戦に近いものに逆戻りしたのだった。

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