第六話・迷子の迷子の天鵞絨くん~いや、俺は至って真面目なんだって!~
慣れ親しんだはずの基地の中、
こうなった経緯を思い出す。土曜日の朝、いつも通り準備をして、いつも通り歩いて基地へと向かい、いつも通り基地の中に入った。余りにいつも通りだったので、父に注意されたにも関わらず、訓練用ドッグに辿り着いてしまった。そこまでは、まだいい。そこからがいけなかった。気が付いた時にそのまま引き返せば良かったが、「訓練用ドッグは南側、出撃用ドッグは東側、それじゃあこの道を行けば辿り着くはず」と道に迷う典型的パターンを行い、今まで行ったことがないよく分からない場所に着いてしまった。しかも帰り道が分からない。正直、どうすればいいのか途方に暮れている。喉が渇いた…ふと、周りを見てみる。自動販売機も水道も水分補給できそうなものが全くない。昔、
「がぁぁぁがぁぁぁぁみぃぃぃぃだぁぁぁぁいぃぃぃぃざぁぁぁぁ!」
「うお、なんだ⁉」
余りの嬉しさに泣きながら飛びついてしまった。
「という訳なんです…」
「あーはっはっはっは、お前十年近くここに通ってるのに、迷うか普通」
思いっきり笑われた。しかし全くである。自分でも呆れてしまう。
それにしても
「すいません!いつまでも抱きしめて」
パンツじゃないから心奪われない。パンツじゃないからすぐ謝れる。俺、偉い!(?)
「気にすんな、私とお前の仲だろ」
背中をバンバン叩かれる。痛い。まあ、確かにそんなことを気にする仲じゃないのかもしれない。
「
「もうそんなになるのか、時が経つのは早いね。でも急にどうしたんだい」
「いえ、これからの事を考えると感慨深くなって。大佐の指揮下で戦うかもしれませんし」
当時はまだ私はそこまでの地位ではなかった。しかし、この十年、大分昇進した。この子を教えている内に、私自身も
「なあ、
「ここに来た時のまま決心は揺らいでいません。覚悟はとっくに出来ています」
「そうか…なら、ちょっと来い、話がある」
そう言って、少し歩いたところの長椅子に連れて行った。そこに
こいつの話を聞いた時、私は立派だと思った。母の意思を継ぐ、その志は尊いものだ。だが、まだ六つの子供だった。訓練に耐えきれるわけないと思った。だから敢えて、全力でこいつに技術を叩き込んだ。厳しくすれば音を上げる。あきらめてくれる。こんな事をせず、子供らしく遊んでいなさい。そういう思いで鍛えた。ところが、こいつはあきらめるどころか弱音すら吐かなかった。そうしてどんどん成長していった。そのうち、私は
しかし、現実は非情だ。ここまで努力していても、
「私はな、不敬ではあるとは思うが、お前の事を本当の息子のように思ってるんだ。だから、出来れば危険な事を指せたくない。死んで欲しくないと思っている。まあ、それでも、お前は戦いに出るんだろうな…」
「そう思ってくれるのは正直嬉しいです…でも、これは、俺の生きる意味なんです!」
分かっていた。こいつの想いは実の母親からくるものだ。私なんかが止められるものではなかった。ならば、出来る限り守ってやろう。こいつが死なないように私が付いてやろうじゃないか。
「そうか…なら
「その台詞、男女逆ですよね⁉」
確かにそうだな。まあ、細かい事だ。
「あとな、お前、私の指揮下って言ったな。一応、
「確かに、その権限は持っています。ですが、軍の大人たちが、たかだか十六の高校生の命令を聞くとは思えません。だから、今はその事は考えない方向で…」
そう言うと思った。残念だ。私より、こいつに指揮をして貰った方が勝率が高いのに。
「まあ、戦闘が起きた場合とりあえずは私の指揮に入ってもらうか。初めての実戦な訳だしな。だがな、もし、私や他の誰かに意見があるなら遠慮なく言ってくれ。戦場でのお前の目は頼りになるからな」
「はい!精一杯、期待に応えます!」
「んじゃ、そろそろ待機場所に移動するか」
そう言って歩き出すと、後ろから
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