二限目


オレと清羅は少し遅れて学校へと向かった。

校庭に着くと、当然のことながら既に全員が集まっていた。

オレを一瞥し、皆気まずそうに視線を逸らす。


「やっと来ましたか、神城君。待ちくたびれましたよぉ」


そこにいたのは草壁だった。

朝礼台に腰かけ、足をぶらぶらと振っている。


「まぁったく。君が妙な告白をするもんだから、朝っぱらからつまらない質問ばかり投げかけられて、困っていたんですよ。あ、大丈夫ですよ。ちゃんと真実を伝えておきましたから。君が内海清羅さんの父親を殺したっていう真実をね」


清羅は自分の唇を噛みしめ、草壁を睨んだ。


「……プライバシーの侵害です」

「おやおやぁ? 優等生で従順な清羅さんが僕に意見するなんて、よっぽどのことなのかな?」


清羅の顔が険しくなっている。

険悪な雰囲気でありながら、草壁はその空気を楽しんでいるかのようにケラケラと笑っていた。


「ちなみに反論しておきますが、君達にプライバシーなんていう権利はありませんよ。今の君達の存在価値は、このゲームのプレイヤーであるということだけです。君達の個人情報を僕がどれだけ暴露しようと、文句を言われる筋合いなんてありません。全員が知るべき情報なら開示するし、個人を不利にする不公平なものなら開示しない。僕はね。生徒とは誰であろうと平等に接する心積もりですよ。それこそが、殺人学園を管理する教師としての僕の役割ですからね」


そう言って、草壁は大きく胸を張ってみせた。


「そうそう。これからは僕のこと、草壁先生って呼んでくださいね。言わないと死刑だから。なーんつって!」


その笑えない冗談に、全員が引き攣った顔をしていた。


「さて、教師としてきちんと場を温めたところで、本題に入りましょうか。昨日はみなさんどうでしたか~? ちゃんと眠れましたぁ?」


草壁のことだ。そこに心配などあろうはずがない。

案の定、すぐにその顔には下品な笑みが浮かび上がる。


「クフフ。まあちゃんとチーム分けもできたところですし、もう少し詳しくゲームについて教えておきましょうかね。以前もお話ししたように、あなた達探偵役の勝利条件は犯人役を殺し尽くすことです。しかし、敗北条件は少し違います」


その言葉に、全員が眉をひそめる。

これがチームによる殺し合いなら、勝利条件は相手チームを全員殺すこと。敗北条件は相手チームに全員殺されること。それ以外にないはずだ。


「順を追って説明しましょう。まず大前提として、このゲームは探偵役が一人死ぬことでようやくスタートします。事件が起きて、初めて犯人と呼ばれる存在が生まれるわけですからね」


探偵役が犯人役を殺すことができるのは、事件を推理して犯人役を当てた時だけ。ならば必然、探偵役は犯人役に対して常に後手に回ることになる。

それは探偵役にとって、一つの大きなデメリットといえた。


「犯人役が一回の事件で殺せる探偵役は一人のみ。誰かが殺された時点で『推理時間』に移行し、二十四時間以内に今回の事件の犯人を当ててもらいます。時間内に犯人を処刑できてもできなくても、事件はそこで終了です。それ以降はどのような証拠を持って来たとしても時効が成立し、犯人役を処刑することはできなくなります。この一連の流れを何度か行ってもらい、勝利条件wの満たしたチームの勝ちとなります」


改めて聞いても胸糞悪くなるルールだ。

命の大切さを学ぶためのゲームと言いながら、自分達はその命をゲームの駒くらいにしか考えていない。


「犯人役が先に探偵役を殺す。このルールがあるために、探偵役は犯人役と数で並んだ時点で敗北が決定します。だからこそ、公平なゲームでありながら、探偵役の数が圧倒的に多いのです」


探偵役と犯人役がそれぞれ一人ずつ生き残っているとするなら、先に相手を殺せる犯人役が勝つのは当たり前だ。

それが仮に二人ずつであったとしても、同時に多数の人間を処刑する術でもない限り、先行権を持つ犯人役が勝利する。


「そしてここからが重要なのですが、この『同数だと探偵役が敗北する』という条件は、『推理時間』が始まった瞬間に判定されるのです」


そういうことか。

オレは思わず舌打ちした。


「どういうこと? それって当たり前なんじゃないの?」

「違う。草壁の言う『推理時間』が始まった瞬間ってのは、誰か一人が殺された時だ。つまり犯人役より探偵役の方が一人多かったとしても、そいつが事件発生のために殺されれば、その時点でゲームオーバーってことさ」

「そして事件発生のための殺人は、僕達には防ぎようがない……ってことだよね」


前嶋はようやくその意味に気付き、顔を青くさせた。


「何を怯えているんですか? これはごくごく当たり前の話ですよ。誰かが殺されて探偵役と犯人役が同数になった。それが二人以上ならまだゲームとして成り立ちますが、それぞれが一人ずつになった時のことを考えてみてください。探偵役は自分が探偵役であることを知っている。なら残ったもう一人が犯人役に決まってる。こーんな拍子抜けでつまらない推理が堂々と宣言されるんですよ? まったくもってナンセンスです」


それは傍観者の理屈だ。

実際に殺し合いをやらされているオレ達に、つまらないも面白いもない。

しかし、そんなことを今更抗議する気にもならなかった。


「皮肉なことに、このゲームで犯人役を殺すためには、犯人役に探偵役を殺してもらわなければなりません。となると、二人いる犯人役を殺すには、少なくとも二回事件が起きなくてはならない。そのことを踏まえれば──」

「生存者>生きている犯人役×2+1」


突然の津川の言葉に、オレ達は全員彼の方を見た。


「状況に応じて考えるなら、これが一番簡単な計算式だろう」


前嶋が、せっせと両手の指を折りながら考えている。


「犯人役が一人しかいない場合、探偵役が二人になればこっちの負け。犯人役が二人いる場合は探偵役が三人になれば負け。そう覚えておいたらいい」


オレの助け船にもぴんとこなかったらしく、未だ前嶋は頭を抱えてぶつぶつと呟いていた。

一見すると探偵役に不利な条件ばかりのような気もするが、数に圧倒的な差があることを考えれば、やはり不利なのは犯人役だろう。

何故なら探偵役が六人、犯人役が二人という内訳なら、たとえこちらの手に負えないような難事件が起きたとしても、オレ達探偵役役は最低でも二回は事件をスルーできるからだ。

事件を解決できなかった時のデメリットがないのなら、これは大きなアドバンテージといえた。


「勝利条件と敗北条件についてはこんなところですかね。それともう一つ、『ワルプルギスの夜』で犯人役のお二人に伝えた犯人役だけの特権について教えておきましょう。みなさん、自分の部屋にあったスライド式のトレイはご覧になりましたか?」


そう言われて、オレは思い出した。

あの部屋に唯一存在する引き出しで、ドア側の壁に埋め込まれる形になっていたのを覚えている。


「あれは簡単に説明すると、郵便受けみたいなものです。正確には凶器を受け取る場所、なんですが」

「凶器?」


清羅の問いに、草壁は頷いた。


「あそこに注文書を入れておくことで、自分の求める凶器が受注されるようになっているのです。……クフフ。中には犯人役の方々もビックリ仰天した“とっておき”もありますから、探偵役のみなさんはいざという時のために驚く準備をしていてください」


仰天、か。

少なくとも、日常生活で手に入れられるようなものではないのだろう。


「探偵役にとってはこの上なく不利なルールだな」

「不利? とんでもない。これは殺人のバリエーションを増やすための趣向ですよ。あくまでもルールは公正公平です。その証拠に、犯人役には一つの制約を設けさせてもらいましたからね」

「制約?」

「どんな凶器だろうと、我々が責任を持ってそれをお届けします。しかし、一度外に持ち出したものを、再度自室に持ち帰ることは禁じる。つまり、我々から授かった凶器は、確実に証拠として現場に残る、というわけです」


それが公平なルールなのかは置いておくにしても、確かにそれなら探偵役の推理の妨げになる可能性はぐんと減る。


「これは注文した凶器に限りません。実際に殺害に利用した凶器は、全て部屋への持ち込みは禁止です。他人の部屋に入ることを禁じている以上、これは当然のルールと考えてください。まぁ、死んだ人間の部屋は“固室”ではないので別ですけどね。クッフッフ」


もしもオレが殺されれば、必ずこいつの枕元に立ってやろうと、オレは誓った。


「既にトレイの中へ注文書を入れておきましたから、学校が終わったら各自確認しておいてください。あ、注文書は犯人役しか使えませんが、全員分用意させてもらいましたのでそのつもりで。一度注文すれば夜のうちに新しい注文書が追加されますから、そこから足がつくことはありません。犯人役のみなさんは安心して凶器を注文してください」


全員分の注文書があるということは、注文書を持っていることで犯人役であることがばれる危険性はゼロということだ。

外出禁止の夜十一時に注文書をトレイに入れておけば、朝には新しい注文書が必ず届く。

このルールから犯人役を割り出すのは不可能だろう。


「草壁刑……先生。質問があります」

「ふむ。なにかな? 内海清羅君」

「これは犯人役と探偵役の殺し合い。犯人役は探偵役を殺し、探偵役はその犯行方法などから事件の犯人を割り出す。そこまでは分かりました。ですが、探偵役が犯人役を殺す方法をまだ教わっていません。事件を推理して、犯人を暴いて……それから? 先生方がその正否をジャッジして、指摘された生徒を殺すんですか?」

「チッチッチ。甘いなぁ、内海君。探偵役が犯人役を殺さなければならないと言っている以上、殺すのはあなた方探偵役ですよ。そのための画期的なアイテムも作ってあります」


そう言って草壁が取り出したのは、一つの拳銃だった。

片手で持つことのできる小型のリボルバー銃で、大仰な撃鉄まである。


「知らない人も多いだろうし説明しておきますが、これが拳銃です。お友達との噂話で聞いたことくらいはあるでしょう? まあこの銃は普通のものとは違っていて、僕達は『クリシス』と呼んでいますがね」


言うやいなや、草壁は無造作にオレへ銃口を向けた。

背筋が凍り、思わず避けようとする。が、草壁が撃鉄を引いた瞬間、自分の身体に異変が起こった。


「……な、なんだ? 身体が……動かない?」


その時、ピーと自分の首元から機械音が聞こえた。


「緑色に、光ってる……?」


オレはそれを聞いて、ようやく現状を理解した。

全員が装着している首輪。あれには小さなランプが備わっている。そこが今、草壁に撃鉄を引かれたことで緑に点灯しているのだ。


「今、僕が神城君に撃鉄を引いたことによって『テミスの審判』が始まりました。こうなると銃口を向けられた人間は特殊な電波によって急激な肉体運動を阻害されます。無理やり動こうとすると脳が焼き切れるのでご注意を」


まるで試したければご自由に、とでも言いたげだ。

無論、そんなことをやる馬鹿なんていない。


「『テミスの審判』は、探偵役が犯人役を指摘する際、その人物に向けて使用することができます。そこで行われる探偵役の推理が事件を審査する教員に妥当と判断された場合、ランプが青に光り、トリガーを引くことができます。すると銃口を向けられた犯人役は……」


バン!


オレはびくりと肩を震わせた。

突然大声をあげた草壁は、その効果が絶大であったことを確認して、にんまりと笑った。


「という銃声と共に銃から特殊なセンサーが発信され、首輪に内蔵された針が飛び出す仕掛けになっています。その針は一瞬で延髄を貫き、犯人役は一瞬で死に至るというわけです。まあつまりは、本物の拳銃だと思ってくれればいいのです。引き金を引ければ、銃口を向けた人間を殺すことができる。犯人が数多の凶器で人を殺めるように、探偵は推理で人を殺す。簡単なルールでしょ?」


ようやく、草壁は銃口を下ろした。

先程から感じていた奇妙な違和感がなくなり、自由に身体を動かすことができるようになった。緑に光っていたランプも消えているようだ。

兵士達が、生徒それぞれに草壁の持っている銃とまったく同じものを配り、全員がしげしげとそれを見つめている。


「勘の良い人は察していると思いますが、推理をぶつけられるということは、その反証もまた可能だということです。推理を述べるということは、その推理に反論されるリスクを負うということです。人を殺す人間に相応のリスクがあるようにね」


草壁は、意味深に頬を歪ませた。


「犯人役の反論が妥当だと判断された場合はランプが赤に点灯し、テミスの審判は強制終了となります。状況によっては証拠も存在しない泥沼の推理合戦になることもあるでしょうから、まあ今から話術でも鍛えておくんですね」


オレはそっと自分の首輪に触れた。

ただの首輪であるはずがないとは思っていたが、まさかこんな機能があったとは夢にも思わなかった。


その時だ。

突然、学校内からチャイムの音が響き始めた。ところどころ音が途切れているし、どこか錆びついているような音程で、聞いているだけで不安感が増してくる。

草壁は中央校舎を見上げた。その屋上付近の壁には、大きな時計が埋め込まれている。おそらく十字架をモチーフにしているのであろうそれは、見るからにおどろおどろしく、長針と短針が重なる中心部は針のようなオブジェが飛び出している。


「おっと、もう一限目が始まってしまいましたね」


全員が薄気味悪さに眉をひそめていると、草壁はようやくそれに気付いたようだった。


「ああ、さっきのチャイムですか? 申し訳ありませんねぇ。随分昔に廃学校になった場所を再利用しているので、ところどころガタがきているんですよ。この時計も殺人学園に合わせて外装をいじっただけでしてね。ちょっとした衝撃で壊れるオンボロなんです」


オレと清羅以外の面々が、どこか納得したように頷いている。

スラムの学校に通っている人間には分からない変わった部分というのが、少なからずあるらしかった。


「それでは、さっそく一限目の授業を行う部屋へと参りましょうか。みなさんついて来てください」


オレ達は、草壁の後について校舎へと入って行った。

ウレタン樹脂の廊下が伸び、前後に扉のある教室が並んでいる。普段通う学校とまったく同じだ。

変わったことと言えば、授業時間であっても教室に誰もいないことか。


草壁は、それら教室を素通りし、一つの部屋のドアをスライドさせた。

室名札を見上げると、そこには『予行室』と書かれてあった。


「さあ、入って下さい」


少し躊躇しながらも足を踏み入れる。

そこはまるで遊戯室のようだった。

小さな棚が壁に沿って並べられていて、その上にはいくつものミニチュア玩具が置かれている。

中央にはテーブルが一つあり、付随する台の上に無線機が置かれている。その周りを囲むように人数分の椅子があった。


「まるで箱庭ですわね」


唐突に、ユリアが言った。


「箱庭?」

「心理療法の一つです。クライエントが正方形の砂場に好きなミニチュアを置いていき、完成した風景やその過程を見て深層心理を推察したり、症状を改善させたりするものです。わたくしも何度かやらされたことがあります」


そう言って、ユリアは何かを思い出すようにくすくすと笑った。

何を思い出していたのかは、聞かないでおくことにする。


「じゃ、草壁先生がその箱庭療法でアタシ達をセラピーしてくれるわけ?」

「とんでもない。君達にこびりついた悪がそんなチンケなもので拭い落とせるなんて思いませんからね」


前嶋がぴくぴくとまぶたを痙攣させている。

おそらく今頃、挑発なんてしなければよかったと後悔しているに違いない。彼女の場合、素で聞いていた可能性も否めないが。


「貴重な授業時間を浪費してわざわざここに招待したのは、あなた方に模擬殺人学園を行ってもらうためです」


それを聞いて、ようやく合点がいった。


「なるほどな。デモンストレーションってわけか」

「そういうことです!」


このミニチュアを駆使して殺害現場を作り出し、『殺人学園』に見立てて殺し合いの予行練習をしろというのだ。

不服の一つも言いたいところだが、予行とはいえ経験値を積めるか否かというのはとても大きい。デモンストレーションができるのなら、それに越したことはない。


「でも、それって犯人役がミニチュアを作るということですよね。私達はどこで待っていれば?」

「この部屋の奥に待機ルームを用意していますので、そちらを使ってください」


草壁が、部屋の中央にある廊下に向けて手を差し出した。

どうやらこのまま進めということらしい。

渋々オレ達はそこを進むと、ちょうど八つに区切られた狭苦しい直方体のボックスがあった。黒々としていて、取っ手付近には仰々しい鎖がじゃらじゃらとついている。


「一人一部屋ですよー。間違わないでくださいねー」


草壁が廊下の奥から身体を傾け声をかけてくる。

各々が不満を露わに舌打ちしながらも、ボックスの中に入った。

人一人がやっと入れるくらいの大きさで、中には椅子と備え付けデスクがあり、そこに先程の部屋にもあった無線機が置かれている。

ゆっくりと取っ手に手をかける。が、既に鍵が掛けられているらしく、びくともしなかった。

少し強めに壁を叩いてみた。どうやら衝撃を吸収する材質を使っているらしく、何の音もでない。


「誰か聞こえるか!?」


叫んでみるも、しんとしている。

遮音性も高いらしい。勉強空間としてはもってこいだ。

オレは早速椅子に座り、無線機を手に取った。

モニターがついていて、テレビ電話のようにやり取りできるらしい。

おそらく、犯人役はこれを使って草壁に指示を出し、殺人現場を作製するのだろう。敢えて外に出さないのは、ジオラマ以外の情報を判断材料にさせないためか。

心理療法と酷似した環境だというのなら、ある程度知識を持つ人間が見れば痕跡から犯人を割り当てることも可能といえば可能なのかもしれない。

随分と徹底しているなと感心しながら、オレはスイッチを押した。

何の反応もない。

どうやら犯人役以外の人間には、ただの玩具が配られているらしい。


オレは息をついて椅子に凭れ掛かった。

犯人役が殺人現場を作るのに掛かる時間は三十分か、一時間か。どちらにせよ、非常に退屈な時間であることは間違いなかった。


◇◇◇


どのくらい時間が経っただろうか。

椅子の上でうたた寝をしていると、唐突に扉が開いた。


「お疲れ様でした~。無事、ジオラマは完成しましたよー」


オレは憮然として立ちあがり、ボックスから出た。

草壁の声で目覚めるとこんなにも不愉快になるのかと、自分でも驚くほどだった。


「あ~、キッツぅ。アタシ、閉所恐怖症の毛があるんだよね……」


ボックスを出たところで、前嶋が膝に手をついている。


「大丈夫か?」


オレが手を差し出すと、ぱっと顔を明るくし、しかしすぐに複雑な様子で目を背けた。


「あ、ええーっと……だ、大丈夫。ありがと」


そう言って、前嶋はそそくさと歩いて行った。

如月と目が合うと、露骨に視線を避けて足早に歩いていく。

そういえば、殺人を告白していたことをすっかり忘れていた。

オレは行き場をなくした手を握り、そのまま戻す。

ふと見ると、ばっちり清羅にその場面を見られていた。悲痛な面持ちで彼女は下を向いている。


「あれれ? お二人ともどうしたんですかね」


鳥江がきょときょとと彼女達の後姿を観察してから、こちらを向いてにこりと笑った。


「ね」

「……お前、何か忘れてないか?」

「え? 何がです?」


本気で覚えていないらしい。

……まあ、別にいいか。

オレはため息をついて、彼女の背中を押した。


「さっさと行くぞ」

「あ、もう! 押さないでくださいよ~」



部屋に戻ると、何もなかったテーブルの上に見事なジオラマが出来上がっていた。

よくある切妻型の屋根つきの家が真ん中に鎮座し、その周辺を凹字型で道が囲んでいる。方位を示すシールがテーブルの隅に貼られていて、それによれば家の北側は工事中のようで、工事現場と家の間は通り抜けができないようになっているようだ。


「はい、ではみなさん、これを持って座って座って~」


そう言って草壁から渡されたプリントには、この状況の補足説明が入っていた。

どうやら登場人物もオレ達らしく、各々のアリバイやどこにいたのかなどといった情報が細かに記載されている。

そこに書かれた自分の情報を読み、オレは辟易した。


「それでは、さっそく模擬殺人学園を始めていただきま~す。今回はデモンストレーションということですので、クリシスを使う必要はありません。犯人が殺人を実行するために仕掛けた特殊な方法、トリックを暴き出し、好き放題議論して犯人を推理してください。私が適宜判断し、それが有効かどうか判断させていただきます。もちろん死ぬこともありませんのでご安心を」


そう言って、草壁はストップウォッチのタイマーをセットした。


「『推理時間』は二十四時間ですからね。それに倣って二十四分ということにしましょうか。はい、それではスタート!!」


説明もほどほどに、草壁はストップウォッチのボタンを押した。


「え? もう始まるの? 事件なんて起きてないけど……」


前嶋がジオラマを見回してから言った。


「おい草壁。別にジオラマには触れて構わねえんだろうな?」

「ええ、結構ですよ。原型が分からなくなるまで弄るのは禁止ですが」


清羅が黙って家の屋根に手を触れる。


「これ、取れるようになってるね」


清羅はそれを持ち上げた。

そこに映る光景を見て、オレは改めてため息をついた。


家の中には、オレの名前が書かれた人形が血を流して倒れていた。


「クフフフ。まあ今の生徒間の好感度を見るに、妥当な選択なのではないでしょうか」


いやに含み笑いの多い草壁を見て、オレはすぐにこいつの仕業だということに気付いた。

本当に、一度くらいぶん殴ってやりたい。

オレは自分の激情を押えつつ、犯行現場を観察することにした。


家の作りは非常にシンプルだ。東側の高い場所に小窓があり、南側に出入り口が一つあるだけで、他には特に何もない。中にあるのはオレの死体と、凶器である人の頭くらいの大きさの石、そして財布の三つ。それらがちょうど西側の壁に沿うように密集している。

プリントによれば、オレは自分の財布を取りに家へ向かい、そこで殺されたらしい。後頭部には一発だけ石で殴打した痕があり、即死だったようだ。人形とはいえ、オレの分身が苦しまずに死んだことに安堵すべきなのだろう。


「一体オレは、何でこんな何もない家で財布を落とすハメになったんだ?」


この家は空き家だったようで、今は電気も通っていないらしい。

およそ民間人が来るような場所ではない。


「たぶん、そこは突っ込んじゃいけないどころじゃないかな」


清羅はそう言って苦笑いした。

まあ、要は殺人事件を成り立たせれば良いのだから、全てに整合性を持たせる必要はないのだが。


「アリバイもちゃんと書いてるね。注目すべきなのは監視カメラかなぁ」


凹の南側の二隅に、監視カメラがあるという設定らしい。

肝心の家のドア前にカメラがないところが実に作為的だ。

南側の通路は直線状に伸びているが、東西の道は工事のために寸断されている。つまり南にある出入口を通って家に侵入するなら、必ず監視カメラに姿が映るというわけだ。

プリントに書かれた情報を少しまとめてみた。


神城耕一…財布を取りに家へ向かい、後頭部を石で殴打され死亡。午前九時、西側の監視カメラに犯行現場へ向かう姿が映っている。

鬼瓦涼音…第一発見者。その場で警察を呼ぶ。午前十一時、東側の監視カメラに犯行現場へ向かう姿が映っている。

前嶋ゆかり…西通路沿いの家に住んでいる。昨夜の監視カメラに外から西通路へ入って行く姿が映っている。

鳥江結…東通路沿いの家に住んでいる。昨夜の監視カメラに外から東通路へ入って行く姿が映っている。

如月圭…朝七時から犯行発覚まで工事現場にいたものの、犯行現場となった家の様子はきちんと確認していなかった。

ユリアンヌ・ローレンス…朝十時に如月圭の元へ。犯行発覚まで共にいる。如月圭同様、犯行現場となった家の様子は特に確認していない。それ以前のアリバイはなし。

津川孝太郎…その日一日、内海清羅と共にいたと証言。

内海清羅…その日一日、津川孝太郎と共にいたと証言。


オレはそれを眺め、顎に手をやって考えた。

単純に考えるなら、犯人は一人しかいない。しかし……


「よーし、はりきっちゃうぞー。まず一番怪しいのは涼音よね。だいたい、第一発見者ってだけで怪しいし」

「は?」


涼音が威圧感のある目で前嶋を睨んだ。


「……ねぇ涼音。これゲームだから。本番じゃないから。ね?」


涼音は黙ったまま依然睨みつけている。

前嶋はみるみるうちに小さくなり、しゅんと頭を垂れてしまった。


「まあでも、疑わしいのは確かだよね。犯行が可能だと分かっているのは涼音さんだけなわけだし」

「だったら言わせてもらうけど、私が犯人なら絶対にその場で警察呼んだりしない。他の人が死体を発見してくれるのを待つよ。第一発見者が犯人だって言うならね」


確かにそれはそうだ。

わざわざ犯人が疑いのかかる行動を取るとは思えない。


「でもそうなると、誰が耕ちゃんを殺したんだろ。監視カメラの情報じゃ、家の中に入れたのは耕ちゃんだけになるけど……」

「は! 自殺!? もしかして自殺ですか!?」

「ええと……どうやって?」


皆がそれぞれ意見を出し合っている中、先程から前嶋は項垂れてずっと黙ったままだった。

なんともか弱いメンタルだ。


「……前嶋。お前も何か喋ったらどうだ? デモンストレーションなんだから、率先して経験を積んでおいた方がいいぞ。涼音、そういうことだから許してやってくれ」

「やだ」


ガーンと、鐘を鳴らすような古臭い音が前嶋から聞こえてきた気がした。


「あ、あはは。涼音ちゃん、私からもお願い。ね?」

「ちっ。しょうがないなぁ」


ぱあっと前嶋は顔を明るくさせた。


「はいはいはーい!! 私、この窓が怪しいと思う!! これを使って犯人は神城を殺したんだよ!」


途端にうるさくなった。

ユリアと津川がオレを睨んでくる。オレは居た堪れなくなってそっぽを向いた。


「この窓を唯一使えた人物は……」


自然、東の監視カメラに映っていた鳥江に視線が集まった。


「わわ、私じゃありませんよ!? 第一、窓を使ってどうやって殺すんですか! 家の中に脚立はありませんから出入りはできませんし、凶器を投げるにしても遠すぎますし!」


ユリアはくすりと笑った。


「あなたが実はとんでもない怪力だった、という可能性は否定できませんね」

「なな、なんですかそれ! 詭弁です! ありえないです!」

「なら、ありえないことを証明してください」


鳥江はぽかんとした。


「しょ、証明?」

「当然じゃありませんか。この中に犯人がいると確定している状況で、今現在、神城さんを殺せた可能性があるのは鳥江さんただ一人なのです。いくらありえそうになくとも、ありえる可能性が僅かでもあるのなら、それはあなたが犯人であるという証拠です。それを覆したいのなら、これ以上に信憑性の高い仮説を提示するより他ありません。で、いかがです? 何かありますか?」

「……」


ピー、と鳥江の首輪から音が鳴った。


「え!? え!? なな、なんで!?」

「え? だって認めたんでしょう?」

「認めてません認めてません! いいから早くブザーを切ってください!」


渋々草壁はそれを止めた。


「え、ええとですね……。私は犯人じゃありません! 何故なら……何故なら……」


鳥江は次の言葉が出て来ないらしかった。

頭を抱え、うんうんと唸り、言葉を絞り出す。


「そそ、それなら涼音さんが犯人という方がまだ納得できるんじゃないですか!?」


苦し紛れではあるが、一利あるといえばある。

元々、涼音の無実の証明は心証という一点のみだ。物理的に殺せる人間であることに変わりはない。


「でもさぁ。それならこの財布ってなに? ただ殴るだけならこんなもの必要ないよね。状況証拠と真実とで、矛盾があるじゃん」

「それは……神城さんをおびきだすために……」

「へー。喜んで第一発見者になる犯人が何の意味もなく被害者をおびきだすんだー」


心底人を馬鹿にしたような目を、鳥江に向ける。

鳥江はたじたじだった。


「それに、神城君は九時に家へ入ったんでしょ? で、私が十一時。こんな何もない家で二時間も財布を探してたなんて、作りものにしたっておかしくないかなぁ。それに窓から犯行は不可能って言うけどさ。何らかの装置を使って石を射出したのかもしれないよ? 怪力だったっていうよりはよっぽど信憑性あるし、ずいぶんまともな犯行だと思う。私からすれば、何のトリックもなくただ殴って殺すよりも、よっぽど犯人役“らしい”殺し方だと思うけど」


鳥江は既に涙目だ。

少しかわいそうになってきた。オレがどうにかフォローしようと口を開けた時だった。


「まったく、揃いも揃って馬鹿ばかりだな」


津川はそう言って、大仰にため息をついてみせた。


「その説は間違いだ。証拠もある」

「証拠? 一体どこに?」


如月が心底分からないとでも言うように、ジオラマをきょろきょろと見回した。


「お前らの推理力を見てやろうと思って黙っていたが、面倒だ。答え合わせに入らせてもらうぞ」


答え合わせ。

ということはつまり、津川は既に誰が犯人なのか分かっているのか。


「まずお前らがうるさく騒いでいた鳥江が無実である証拠だが、仮にこいつが怪力の持ち主だったとしても、神城にそれを投げ当てるには、窓から狙いをつけて、振りかぶらないといけないことになる。だがそれを神城に気付かれずにやるのは不可能なのさ」

「どうして? この財布と後頭部の傷を見るに、耕ちゃんは財布を取ろうとしてたんでしょ? 隙なら十分あったと思うけど」

「後ろを向いていようが関係ない。何故なら、もし鳥江が窓にいたのなら、朝方に差し込む太陽の光が阻まれて、大きな影ができるはずだからな」


あっ! と、そこかしこから声が聞こえた。


「小窓が一つしかないことを考えても、ここを遮れば家の中はそれなりの暗がりになるだろう。気づかないはずがない」

「さ、財布を探してたんだから電気つけたのかもしれないじゃん!」

「プリントをよく読め。空き家で電気は通っていない」


前嶋はしばらく固まり、配られた書類に目を通し始めた。

どうやら素で忘れていたらしい。


「ま、犯人役がそこまで考慮してこのジオラマを作ったとは思えねえがな」


じろりと草壁を睨むも、あの男は意にも介さず口笛を吹いていた。


「人の頭を割れるだけの重さだ。いくら怪力でも、かなり力を溜める必要がある。十メートルも離れた位置にいる人間なら、すぐに気づいて避けるだろう。何らかの装置を使ったとしても同様だ。機械である以上、そこに固定する必要がでてくるが、それこそ影ができて神城に気付かれる」

「じゃあ誰がどうやって殺したんですか?」

「決まってる。この家に誰も入っていないなら、上から落とすしかねえだろ」


ユリアは眉をひそめた。


「それは今さっきあなたが否定しましたが?」

「窓からはな」


津川の真意が分からず、全員が困惑した様子だった。


「草壁。このジオラマに犯人を暴くための証拠は全てあるんだな?」

「ええそうですよ。間違いなく、全てジオラマで表現しました」

「なら安心だ」


津川はそう言って、凶器となった石をひょいと掴み、それをオレの人形の頭上へ掲げ、落とした。

オレ達は、茫然とそれを見つめている。


「つまりはこういうことだ」

「……もしかして」


自信なさげに、清羅が呟く。

慌てて取り外した屋根を持ち上げ、掲げてみせる。


「こういうことですか?」

「ああ」


清羅は驚き、まじまじと屋根を見つめている。


「あ、あのー……私達にもちゃんと分かるように説明してくれませんか?」

「まだ分からねえのか? この家の屋根は、実際にも“取り外し可能”だったってことさ」


しばらく沈黙が流れる。

ようやく言っていることが理解できた時、鳥江が思わず立ちあがって叫んだ。


「ええ!? そそ、そんなのアリですか!?」

「ありだろ。ルールには抵触していない」


オレは津川を擁護しながら、そこに高鳴りを感じずにはいられなかった。

ミステリーというジャンルが昔に流行ったというのも良く分かる。自分の趣向に合った驚きのトリックと好きな名探偵ができた時の気持ちは、何にも代えがたい興奮だ。


「ゲームを分かりやすくするための配慮……と思わせたトリックってところだ。なかなか面白い試みだが、分かる奴が見ればすぐ分かる。ここまでくれば、もう答えは明白だろ。工事現場にあるクレーン車を使って屋根を取り外すことができたのは、ずっと工事現場にいた如月のみだ」


ごくりと、如月は息を飲んだ。


「で、でも僕は家の周りには近づいてないよ。クレーン車を使うことはできても、僕にだって犯行は不可能だ」

「別に、お前が実行犯だとは言ってねえだろ」

「え?」

「犯人は二人いる。当然もう一人は前嶋、お前だ」

「ふ、ふ、二人って……そそ、そんなわけないじゃん?」


前嶋の声が震えている。

完全に動揺していた。


「これが殺人学園のデモンストレーションなら、実際と同じで二人犯人役がいても何らおかしくはねえだろ」


津川はにべもない。

淡々と、そのまま推理を語っていく。


「おそらく神城の財布は犯人役があらかじめくすねておいたんだろう。屋根を取り外してジオラマと同じ場所に財布を落とし、それを神城に知らせておけば条件は完成だ。あらかじめ屋根を取り外した状態にしておき、神城をおびき出す。神城も奇妙には思うだろうが、殺されることを警戒するほどじゃない。神城がそれを取りに来て屈んだ時に、石を落とすって寸法さ。真上からの影なら反応も遅れるだろうしな」


津川はくいとメガネをあげた。


「これが俺の推理だ。間違ってると言うのなら、俺の仮説より信憑性の高い推理を持って来い」


二人は完全に黙り込んでしまった。

とうとう、如月が椅子にもたれかかった。


「参ったよ。降参。津川君の言う通り、僕と前嶋さんが犯人だよ」


その時、ビープ音が鳴り響き、如月と前嶋のランプが青に変わった。


「終了~~!! デモンストレーションで見事勝利したのは、探偵役の皆さんでした~!!!」


ぱちぱちと、草壁は拍手している。


「いやぁ、デモンストレーションにしてはなかなか白熱したんじゃありませんか? まあ、個人的には津川君がもう少し自重してくれればと思うところもありましたが」


津川は鼻を鳴らした。

草壁は感性もどうかしている。

津川があっさりと推理したからこそ、その凄さが際立っているのだ。見世物ならスタンディングオベーションで称賛を送っていたところだ。


「私はまだ納得してないけど」


涼音がふてくされるように言った。

……どうやらミステリーというやつは、受け手側によって評価が変動するらしい。


「そうでしたか。如月さんが前嶋さんと共犯……」


ユリアはじっと前嶋を見つめ、如月へ顔を向けた。


「心中お察しします」

「どういう意味よそれ!」

「ハハ、ありがとう」

「如月! アンタもお礼で返すな!!」


仲睦まじい談笑が交わされる。

如月が思わず漏らした。


「でも、思いついた時は結構いい線いくと思ったんだけどなぁ。やっぱり津川君には敵わないや」


津川はふんと鼻を鳴らした。


「当たり前だろ。今回の件で分かったと思うが、俺はお前らより優秀だ。探偵役の馬鹿共は馬鹿らしくぼーっとしておけ。お前らに代わって、俺が全ての犯人役を皆殺しにしてやる」


それは探偵役としては頼もしい言葉でありながら、危うさも感じさせるものだった。

死刑宣告を受けることとなった罪状もそうだが、津川はどこか自分の命を軽視している。それは油断と言い換えても良いかもしれない。

いつか、その気質が足を引っ張ることにならなければいいが。

その時、ふと津川と視線が合った。津川はちらと廊下を目配せする。

オレがそれに対し反応しようとした時だった。

再びあの気味の悪いチャイムが鳴った。


「さて、ちょうどチャイムを鳴ったところですし、ここで解散ということにしましょうか。では最後に君達にはこれを受け取ってもらいましょう」


そう言って草壁が差し出したのは、学校の校章だった。

金色に光るそれには、足首からロープで吊るされ、足をくの字にして身体を伸ばす人間のシルエットが描かれていた。

殺人学園らしいといえばらしいが、なんとも悪趣味なデザインだ。


「これは『吊るされた男』というタロットカードを模したものです。別名死刑囚とも呼ばれており、正位置の状態では忍耐、奉仕、努力、試練といった意味が隠されています。君達もこのかわいそうなハングドマンのように、忍耐を鍛え、努力によって試練を乗り越え、最終的には社会に奉仕できるような立派な大人になることを我々は願っています」


とんだブラックジョークだ。

オレは思わず舌打ちした。


「さて、これから君達にはごくごく平凡な学校生活を送ってもらいます。授業中に居眠りしたり、放課後に友達とダベってみたり、女の子と手を繋いで帰ったり、甘酸っぱぁい思い出をたくさん作ってください。そして────」


草壁は一際残忍な笑みを浮かべ、オレ達を見回してから、言った。


「その日常が壊される苦痛を、ゆっくりと楽しんでください」


二限目 了

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