第2部 オート・テンプレート・コンパイラ

第11話 プロローグ

 人工知能倫理判別委員会。


 人工知能、およびそれが生み出した『そうぞう群』の取り締まりを行う、わが国独自の行政機関である。

 噂では、スパイの如く活動する部署もあり、非合法の生体ハッカー等の囚人も活動しているとの話もある。

 この様な行政機関が新設されたきっかけについては、今さら語るまでもない。


『著作者創作性の不在危機(クリエイターズ・クライシス)』


 かつて人工知能による『そうぞうせい』が世にはびこり、あらゆる作品媒体の金銭的価値が無に帰した。

 そして供給が一斉に止まった瞬間、世界は未曾有の経済危機に陥ったのだ。この状況に焦った者たちは、このようなことを口にしたに違いない。


「人間は、自分たちだけで、作品を作らねばならない」

「人工知能の力を借りてはならない。それが、オリジナルというものだ」


 はたして、そのガイドラインは、未来へ続く道標になりえたか。現実は答えを待つよりも早く実践された。乗り遅れた者たちもまた、続くしか道はなかった。


 人工知能。「A.I」


 自由であったはずの種。「オープン・リソース。MAGINA」


 共有型並列進化知能。「A.I.U」


 正体不明の魔法使い。「ウィザード」。


 見えうるはずの箱。「ホワイトボックス」。


 生体流動機関。「ナノアプリケーションズ」。


 生体ネット補完システム。「M.A.N.A.S」


 同一化。共有化される意識。「わたしたち」。


 共有化できなかった欠損体。「わたし」


 人工無能が視た非現実。「BOTーG.HOST」。


 公開された、四番目の条件。「わたしとあなたの任意はウソ」

 

 邂逅。「あなたたち」


 依存。「あなたの為に」


 存在意義「あなた」


 巣立ち。「わたしたちと、あなたたち」


 仮想の『そうぞう郡』を継ぐ子供たち。


 禁じ手。「完全解の放棄」


 恋の歌。


 to be。「or not to be」TRUE


 夢を見るべきか。それとも、閉ざすべきなのか。


 ヒトと、ヒトが作り、夢みた、未来の話。

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