第10話 逆流水

  逆流水。

  重さ、一リットルあたりマイナス一キログラム。

  重力の小さな方向に向かって落ちて、溜まる。


 雨が逆さに降る惑星があった。地面から逆流水の水滴が漏れつづけているのだ。

 下から上に雨が降る。

 ジョルジアルジアはこの雨の逆さに降る惑星に着陸していた。

 雨が舞い上がるように上っていく。

 川は反対に流れ、滝は空に向かって落ちていく。

 この惑星の水はすべて重力に逆らって流れるのだ。

 美しい惑星だと、ジョルジアルジアは思った

 逆流水にあわせて水車を作り、逆流水を飲んで生活する。

 水車の水力だけで暮らしていくだけの動力は得られた。

 夢のような暮らしだ。

 悪くない。

 ぐいっと、一杯の逆流水を飲み干す。

 うまい。逆流水は最高の味だ。

 だが、ある時、気づいた。

 体重が軽くなってないか。

 人の体の六十パーセントは水分でできているのだという。

 その六十パーセントが逆流水に置き換わったら。

「あああー」

 気づいたときには、ジョルジアルジアの体は空に向かってすっ飛んでいた。

 このまま、宇宙で最も重力の小さなところまで飛ばされるらしい。

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