第6話 勇敢なマンボウこそは
とある惑星には二つの文明種がいて、長いこと戦争をしていた。マンボウ種族とマサバ種族だ。人類は、マンボウ種族と交易を行い、戦争に必要な物資や兵器などを売っていた。戦争は五百年に及び、マンボウとマサバは互いに憎しみあい、殺しあうことをやめなかった。マンボウは協力してくれる人類を尊敬し、感謝の念を抱いていた。
ある時、マンボウの計算外の劇的大勝利があった。マンボウ突撃隊は信じられないぐらい粘りのある戦いを見せ、ついにマサバの司令部を占領した。そこでマンボウたちは、マサバに武器を売る人類の姿を見た。
「人類のやつらを締めあげろ」
マンボウ軍曹が腹から絞りだすような声で命令した。
「この惑星には戦争しかない。マンボウは文明を手に入れてから、ずっと戦争をつづけてきた。しかし、戦争が終わらない理由がひょっとしたら、あの親切ずらした人類のやつらにあるんじゃないのか」
マンボウ軍曹の怒りは爆発寸前だった。
「なぜ、マンボウとマサバのどちらか片方が勝利することもなく、いつまでも戦争がつづくのか。おれたちマンボウは人類から武器の大半を輸入している。だが、マサバのやつらと取引していた死の商人も、その正体は人類だった。つまりだ。おれたちの知らないところで、実はこの戦争が人類によって操られていたとしたらどうだ。人類は秘かにマンボウとマサバの両方の武器商人となり、どちらか一方が勝ちすぎないように、供給する武器の強さを調整してきたんだ。マンボウが有利になれば、マンボウの武器に故障を起こさせ、マサバに新兵器を売る。マサバが有利になれば、マサバの武器に故障を起こさせ、マンボウに新兵器を売る。これをくり返し、戦争を泥沼化させ、いつまでもいつまでも殺し合いをつづけさせたんだ」
マンボウたちは乱暴に人類を縛りあげ、拷問を開始した。人類たちがあっさり白状したところによると、この戦争の真実は次のような感じだった。
「きみたちマンボウは一匹で三億個の卵を産む。一方、マサバたちは一匹で三十万個の卵しか産まない。つまりは、これがきみたちマンボウの兵士がむざむざと殺されつづける理由なんだよ」
人類は縛りあげられて、ただ淡々を喋りつづけた。
「マンボウとマサバは文明を手に入れたため、新生児の死亡率がゼロ近くにまで下がってしまった。きみたちマンボウは、三億も卵を産むので、それがそのまま育ってしまったら、この惑星からあっという間にあふれ出てしまう。そうなっては非常に困るのだ。やむをえず、我々は三億匹のマンボウを殺さないといけないんだよ。分かるかね」
人類は訳知り顔で、鼻で笑うかのように喋りつづけた。
「一方、マサバは一匹で三十万個の卵を産む。これも非常に多い数だ。我々には、三十万匹のマサバを殺す必要がある。そこで、マンボウとマサバを戦争させ、三億匹と三十万匹を自動的に処分しつづけることにしたのだ。この戦争は、マンボウの文明とマサバの文明が安定して成長するためには必要なものなのだよ」
人類は憐れみをかけるかのように、マンボウたちを眺めた。
「マンボウの方がマサバの千倍多く卵を産むので、マサバにはマンボウより千倍強い武器を与えているのだ。きみたちマンボウがマサバに殺されつづけるのは、当たり前のことなんだよ」
これが世界の理に戦いを挑んだマンボウの話だ。
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