第8話
9.終わりよければ全てよし
「そう、あんたの思った通りだよ、編集者さん」
"三人目の管理人"として、原稿をボツにした編集者に是非言ってやりたいセリフ
ご期待に添えなかったかも知れないが、結局マドンナのケータイのバッテリーが切れて、連絡が途絶え、その夜はそれで終わってしまった。但し、その前におよその場所は聞いていたし、更にこちらから連絡することもできたろうが、次の朝のこともあって、そうはならなかった。あの時会っていたとしたなら、何かが違っていたー これぞ 、 正に運命と言うのであろう。
翌日早朝(注:なんでこんな時間と場所で街頭募金なのかよくわからんのだが)、管理人がよく繋ぎをつける手法で例のメモを募金と一緒に、才女に無事渡した。またいつかの様に「ありがとうございました」と、何事もなかったかの如く丁寧に挨拶を返される。もし管理人が本物の裏稼業を始める時には、是非才女に情報屋をやって欲しいくらいだ。
まー、そのメモが効を奏したか否かは別にして、才女とその常連さんは無事、その週末顔を合わせられたと言う。のちに才女に会う機会があり、いきさつを聞いてみた
「ステキなひとでしたよ」 にこやかに 「ご尽力、ありがとうございました」
「いやいや、また掟やぶりの接触で失礼致しましたー いまだにストーカーですみませんね」
と、半ばイヤミ半分にもの申す
と、珍しくの否定 「そんなこと、おもってませんよ!」
思わず 「ほんとかな~」っと叫んでしまった。
ま、当方はどうあれ、才女が旧知の常連さんに礼を尽くしたことだけは、かわねばなるまい。
マドンナとはそのあと一度だけ打ち合わせであったきり、余り連絡も事務用しか来なくなった。なんとなく解決したのだろうと考えて一年ほど経ったころか、マドンナからメールが来た。
「実はお付き合いを申し込まれた人が居て、管理人さんに相談したくてメールしました。管理人さんには前の時いろいろ相談にのってもらって、次の時は絶対迷惑をかけたくないと思ったので、事前にご相談しようと思ったのです」
エライ! さすが管理人が見込んだマドンナだけはある! 近付いてくる男はおよそ管理人との関係をかんぐり「絶対に話すな」とかキタナイ真似をするだろうと思っていたので、よっぽど事前警告しようと考えたのだが、余りに野暮である。結局、世の中そう捨てたものではなかった! 感銘した!
相手はいままで劇団で舞台装置をまかされていたスタッフさんなそうな。裏方さんであるならば、表舞台のプレイボーイよりは人のキビもわかるだろう。聞く所、いかんせんそのお相手が「お世話になった管理人さんなら、自分から挨拶したい」と申し出てくれたのだそうだ。泣かせるではないか! そーゆー相手なら、なんの異存もある筈もない。こちらも是非挨拶させて欲しいと返事のメールをした。
ほどなく劇団の近所の喫茶店で、三人で会うことになった。相手がイケメンのイケスカン野郎なら、蹴倒してやろうかとも思ったが、それがどうして、なかなか真面目そうないわゆる
"好青年"であった。
「よろしくお願いします」
そやつは、しゃっちょこばって(鯱が張るが正しいそうだー 勉強になるなぁ)挨拶して来た。最初は無論、なんだこいつは! と思ったよ、それは。いつも父親の様になってしまう当方としては、偽りのない第一印象である。しかし話につれ、管理人がいかにマドンナのプロデュースに尽力したかを聞いて感銘したとか、自分がどれだけマドンナの才覚に惚れているかだとか、そりゃもう、こちらもタジタジの誠実の塊みたいな男だと解り、納得の一言。その顔に偽りもなさそうだ。
よし、決めた! 「勿論、ファン代表としては結婚にだって異論はありません。ただ極めて失礼な物言いですが、産休だけは今が勝負どころですから、しばしお待ち頂けるとよいかと思います。」
そう、マドンナが主役を射止めるまで、今は正に正念場だった。だが、そやつはきっぱりと
「勿論です。愛する人の成功を妨害するなんてとんでもない! 最近は出既婚なんてする輩がいますが、私は信じられません! 彼女が納得した区切りを迎えるまで、僕は待とうと思います」
拍手~っ! 当該管理人、Xデーは覚悟していたものの、こーゆー相手こそ、待ち望んでいたのである! よかった・・・・ほんまによかった。マドンナを幸せにしてやって欲しい。
「それであのう・・・・ふたりで話したんですけど、例え結婚したとしても、管理人さんにサイトの管理をお願いしようかとも思っているんです。」 と、おごそかにマドンナ。
そう、それは考えた。実はこれは掟でもなんでもなく、単なるわがままなのだが、基本ミセスのサポートはしないことにしていた(某女優のサイトを閉じたのも、それがひとつの理由でもある)。ミセスのサポートをボランティアするのは、これはもう、旦那の義務であり特権なのだから。あーしかし、出既婚なんかされたら仕置人ものだったろうに、救われたぜよ。
「申し訳ないのですが、当方ももう、四十郎。イオン 荒らし を数人斬っただけで、刀もぼろぼろです。それにもうブログがあれば十分でしょう。いい潮時かもしれません。」 十年前に考えていた自由なネットに終わりが来る、その時代が遂に来たのかも知れない。
場がやや静かな空気に満たされたが、それを破ったのは好青年だった
「でもそれでも是非、ファン代表で居て頂きたいです」
こっちも負けずに 「あなたのつぎの、ね。」
あとの数時間、笑顔と幸せが三人を照らした。なんて素晴らしい、管理人の引退劇。
ほどなく、二人から結婚の報告が届く。但し約束どおり、おめでたは、花嫁のステージがひとつ区切りを迎えてからになることだろうー 幸あらんことを。
さて、管理人を引退して、わびしさがなかったとは、言えたものではないだろう。相変わらず女にも全く縁がない日々だ。
そうそう、こんなことがあった。
ホンゴウ社会犯罪者養成所 (社会犯罪者ばかり養育しているのに、全く責任をとらない某組織)の研究者(注: 但し、彼個人は善良だと思うー 念のため)が、ネット社会に関する研究の発表の場で、のたまった
「私は社会問題研究家のなんとかさんとネット研究家のかんとかさんに直接聞きましたが、恵まれぬ民がネットで仮想社会でのアイデンティティを別に持つことで、自己のアイデンティティを保持している・・・・と言うか、そうでもしなければ、やってられない訳ですよ」
別の発表で横でニヤニヤ控えしは、我等必達管理人ー 彼がこっちに調査に来なければ、その論文、サンプル調査が不十分だぞよ! もっともあくまで裏稼業ー 正体をばらす訳にはまいりません。
それにしても「そうでもしなくては、やってられない」か・・・・言われちまったナ!
そうそう、こんなこともあった
新宿を歩いていると、あちらからなんと、キューティ・ガールがやってきた!
「すみません、そこのモテなそうなひと、あたしだって日本一のプレイボーイにこないだシツレンしたばかりなんだから、元気だしなさいヨ」 ぽん、と景気よくこちらの肩を叩くー そー言えば、そんな噂聞いたナ 「ところで、お笑いのライブ会場ってどこ?」
「あ、そこの郵便局のとなりー ご一緒しましょうか?」 と、ご親切に。それにしても、お笑いって社会科学者よりも、やっぱ人気あるのネ。
「あ、わかった、いいの、コンビニよってからにするからー」
ああ、そうそう、一応キューティ・ガールってわかったってつたえとこー ただひとこと
「ご活躍を!」
「ありがと!」 こうしてキューティー・ガールは現れた時のように同じく、ぱっと消え去る
しかしまぁ、女性に道聞かれるのだって珍しいのに、あろうことかキューティ・ガールだって! 余りの女運のなさに、天も同情したんかしら。
おかしなことも、あるものだ。
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