第6話
7.閉鎖無用
「いや、ひとりならいいぜ。だがよ、全員がおめぇ、イケメンの勝組じゃあ、ええ、
仕分人もへったくれもねぇだろう。 仕分人はよ、世間の泥水たっぷり飲んだ
負け組の特権じゃあねぇのかい?」 古参の仕分人
なんでこうなるの?
アクセスカウンターはあれよあれよと千を越え、こりゃ喜んでいいのかはかなんでいいのか解らない始末。書き込みの殆どは、債権者をかかえたIT社長への罵声に終始した。それもまぁとてもここに記す気にもならない品のないものばっかり。だから民度がどーのこーのと言いたくなるわけ。とにかく今日は、表の稼業の日じゃなくてよかった。
意を決して注意書きを掲載
『批判や非難を全て消すことは致しませんが、とにかく品位を以っての書き込みを、何卒宜しくお願い致します』
そうそう、批判・非難はいいが、誹謗中傷はあかん。でもって、いいぐさがきにくわんから排除・排斥はもっといかん。とかくネット生活において、いかに排斥が好きな民族か身にしみてわかった(きれい好きだからかも知れん)。ゆとり教育を排斥したのが偏差値教育でゆとりをどう使っていいのか解らなくなったアホなのだから、全くつける薬がない。
無論、こちらとしても某女優がいつの日にか結婚することは覚悟していた。しかしまぁ、まさかあの噂の社長とは、さすがにガックリこなかったと言ったらウソだ。どーしておんなっつーのはこーなんだろう? なーんでこっちにゃサッパリだーれも寄ってこねぇんだろと、今更ながらの疑問がふつふつとなる。いかんいかん・・・・ここで現実との見境なくすと、アブくなるのだ。才女の件を見事にこなし、やや自信家になった自分を戒めねば。
ありがたかったのは、比較的野次馬的な書き込みばかりで「だーくさいど」の様な明らかに積極的なテロは存在していなかったことである。それならこちらはどーみても問題のある書き込みをバッサバッサと斬りまくり(くれぐれも内容でなく言葉の品で)、それこそ仕分けすることで済んだのだ。とは言うものの、その類が日に百件近かった時もあり、時間は相当食ってしまったが。感謝すべきはその仕分け作業を慮って支援メールを頂戴する常連さんたち。それはもう、救われる想いである。こーゆー人たちこそが、国の宝っつーもんではないだろうか。
そうそう、その頃だー 冒頭の出版社との協議のそれは。折角才女との一件のあとの結実の証であるわけだから、内容はなんであってもなんとしても形にして欲しいものだった。出版社からの電話はまもなくやってきた。
「審査合格しました。尽きましては出版費用壱百萬円ご用意できますか?」 だって。
そんな、非資本主義の本書いて、金が要るんじゃ、こりゃ笑っちゃうような冗談だよね(笑)
一体、ひゃくまんえんて、五百円札何枚?
そうそう、ラッキーだったのは、そんなおけらのお陰で、その出版社が捜索を受けてモ抜けの空になった事件に、つきあわなくて済んだことかナ。
IT社長の疑惑事件は連日報道され、とにかくサイト管理は表の稼業に影響を及ぼす様相を呈して来た。こりゃ、あかん。裏稼業はあくまでもある範囲をして成すNCOであり、その許容を超え、負担になってはいけない。そしてもうひとつ、管理人の社会科学者としての倫理判断において、この種のネオリベラルな相手をどーしても許すことはできなかった(本当に頼み料もらって本物の裏稼業でやりたいくらい だ )。勿論、某女優は実ある夢の結実としての素直な憧れではある。しかし、現実との混同と言われようとも(応援するにあたり、プライベートを云々するのはアブいとする意見、これもひとつごもっとも)、ここはやはり筋は通したい
サイトを閉鎖する決心をした
思えば某女優のサイトは、私が初めて管理人稼業を預かったサイトであり、ここをよりどころとしているありがたい常連さん方もいる。自分としても管理人に対する未練はある(局所的にではあるが、一定の社会的発言権が得られるからだー 才女の件も、管理人であったなら何も言われなかったかもしれない)。しかし、時間的負担、そして社会的倫理に照らして、ここは閉鎖が論理的選択である。
この事件から一ヶ月ほどたった頃、サイト閉鎖の予告をした。当然ある日突然クローズなのではなく、時間的余裕を以ってである。マジ、奇麗事になってしまうが、閉鎖をおしむ声もあった。この愚直な輩によくもまぁ、情けをかけて頂けるとは、感謝の言葉もない。
そんなある日、と言う文言、つまりはいつも通りの日だと思っていた日がそうではなかった、とのかかり言葉のそれである訳だが、これが小説だったら、「デキスギ」の事件がまたもや勃発した。管理人はあまりテレバイザーを見ない。見たとしても殆どが映画とニュース但し芸能抜き。よっていつも情報は管理人組合の知人等からのそれが殆どだ。その情報も、そんなひとりからの書き込みだった
「才女さんが、経済解説番組で、経済天気予報のコーナーでデビューするよ!」
まさか(笑) あれだけやんないって公言したんだし、こっちもそれならスカウトせずにそっとしておくって約束だったわけで、そんなことはないよー うっはっは!
だが、ネットの芸能ニュース欄に、まぢがいなぐ、その情報は載っていた。ちこっとだったけど 『二代目経済天気予報のキャスターは経済学部の現役女子大生』って。
もー、一生、女なんてしんじねぇ!
今はもう閉じられた才女サイトのメンツはその実「結局利用されたんだ・・・・」と、おもてっつらのお祝いムードとは別の顔を持っていた。こちらはこちらで、なんとなく「だーくさいど」の顔が半分、見えたような気がしたー まぁな、世の中そんなもんだよな。
但し、そう悪くとってばかりはなんだ。「どうせ数年で・・・・」との意見がこれもまた殆どだったが、あえて筆達管理人として手紙をしたためた
「こちらを断り、どうせデビューしたのなら、半端では済ますな」、と。
やぶれかぶれ激励ー いい意味悪い意味、奮起を祈って。
気付いたのだが、一人称で管理人日誌をつづると、それこそ日記風の記述しか他愛がなくなる。と言うか、このころの管理人はいささかあきれかえっていたのかもしれない。あえて楽屋的に記せば、文面が単調だとすればこの当時の様を表しているに相違ない。なんか、笑っちゃっていたのである。
しかし、当該管理人が奥山真影流免許皆伝な理由は、それでは済まなかった。
例の色恋の話からしばし唯一安定したサイト運営をしていたマドンナから、メールがまいられた。
爆笑の絵文字が入っている
「今度、某女優さんと舞台共演になりました(笑)」
いや、これはいくらなんでも偶然でも、話ができすぎで、読者にそっぽもむかれるだろう。
ほんと? マジで?
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