第3話 黒猫のメノウとの、不思議な二人だけのコンサート♪

 黒猫はいつものように、リズムを取り出した。


 満月が黒猫を照らして黒猫の青い瞳をサファイアブルーに輝かせた。


 と、次の瞬間、黒猫はむくむくと大きくなり始めた。そして、黒いサテンみたいな不思議なワンピースドレスを着た、艶々つやつやの黒髪が腰まで長い青い瞳の美少女に変身した。


「ありがとう、レアン。私の名前はメノウ、黒猫のメノウ。」


「やべえ、おいら、ついに幻覚まで見えるようになっちまった。こんな美少女がおいらの目の前に。ぼくの大好きなアイドル歌手のミーヤちゃんに、そっくりじゃん」


「レアン、私は夢じゃないわよ。私は幻想四次元空間レムノンから来たのよ。そう、銀河鉄道に乗って。」


「ええッ?銀河鉄道って、宮澤賢治の童話の中に出てくる星空を走る列車だよ」


「私は、ある目的があって、この三次元空間にやってきたのよ。」


「だってキミ、ついさっきまで黒猫だったじゃん。よくわからないよ。わかりやすく説明してよ。おいら、馬鹿だからさぁ。」


「そうね、ごめん、早口でしゃべりすぎたね。私は黒猫のメノウ。幻想四次元空間レムノンの住人。エネルギー体生物なのよ。だから自由に姿を変えられる。だけど、三次元で人間の姿になるには強い波動エネルギーが必要なのよ。

そう、例えばキミのギターと歌の波動を感じてたりしてね。」


「なんかわかった気がするよ。物理のラムリアス先生が、エネルギーと物質は等価って教えてくれた奴だね。

わかった、猫が女の子になった理由の話はもういいから。それでメノウ、キミは何のためにその四次元なんとかからやってきたわけ。」


「あはは、幻想四次元空間レムノンよ。そう、やっとあなたに巡り会えた。宮澤賢治と同じ強い波動エネルギーの素質を持ったあなたに。


だけどあなたは本当の波動エネルギーの使い方を知らない。だから、私が黒猫になって毎晩あなたに音楽のコーチをしていたのね。

リズムの取り方とか、おかげでだいぶギターが上手になったんじゃない?」


「あれって、リズムのレッスンだったの。そう言われてみれば、最近ギター上手くなった気がするし、メノウ、キミが毎晩僕の歌を聴いてくれたおかげで、本物の人間の前で歌う気持ちがわかってきたよ。」


「そう、あなたは歌うことで、気づいていくしかないのよ。だから私はあなたを応援するわ。そう、あなたのファン第1号としてね」


「まあ、歌えと言われればいくらでも歌うけど。こうかい?レアンは歌い始めた。


 赤い目玉のサソリ 広げた鷲の翼

青い目玉の子犬 光のヘビのとぐろ 」




「ああ 懐かしいメロディ。宮澤賢治もそうやって私によく歌ってくれたわ』


「宮澤賢治は100年も前の人だよ。じゃキミは100歳以上生きてるって訳?もしかして君は黒猫の妖怪で、僕の魂を奪いに来たんじゃないの。人間の魂を吸って、長生きしてるとか、アニメで見たことがあるぞ。」


「まあ、失礼な。私はエネルギー体ってさっき言ったでしょ。幻想四次元空間レムノンと、三次元では時間の流れ方が違うの。まあ、今は理解できないでしょうけど」


「まぁ、いいか、妖怪でも何でもいいから、僕はギターが上手くなりたい。その想いがきっと、神様に通じたんだ。寿命が短くなっても、スーパースターになれるなら本望さ。メノウ、ずっと僕のファンで、いておくれよ」


「だからー、アタシは妖怪じゃないってばさ。うふふ、でもドンドン上手くなってる。そうよ、レアンその調子。あなたが音楽を続けて上達することで、波動エネルギーが強くなる。もっと歌って」


「青い宝石のような織り姫星

  天の川に翼を広げたひこ星

  金と青の白鳥の北の十字架

 夏の夜空をかざる大三角


 北斗の七つ星から牛飼い座の先に

  乙女座のスピカが純白に輝く

  獅子の星座に散る火の雨

  はかないひとつの命 」


 二人の不思議なコンサートは、満月に照らされて美しく続いた。


 気がつくともう夜明けだった。


「じゃレアンまた会おうね 、もっといい曲作ってね」


 メノウはみるみる縮んでまた黒猫になって丸くなって、レアンの膝で丸くなり寝てしまった。


「可愛いー。これが、さっきの美少女メノウちゃんとは思えないないや。喉をゴロゴロさせてるじゃん。きっと、僕の歌でご機嫌が麗しくなったんだね。

音楽って、楽しいー。明日もギター練習、頑張るぞー」


レアンは、黒猫を膝に抱いたまま、ベッドに寝転がっていつの間にか、眠りに落ちていた。


東の空の茜雲に明けの明星がスターサファイアの輝きを放っていた。

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