第2話 雨二モマケズ

さて、もう季節は10月になっていた。コスモスが宇宙の散光星雲のように咲き乱れていた。


 レアンはまだ進路先も決まらず、悶々とした生活を送っていた。


「おいレアン、もう勝手にするんだな。学校はもう面倒見ねえぞ」


 また鬼ゴリ先生に職員室に呼び出されて、説教だ。


「ぼくはミュージシャンになるんです。誰もぼくの夢をうばうことはでぎねえんです」


「こんのあほたれが。夢なら授業中にいつも見でんだべよ。現実をよぐ直視しろ。百年に一度の大不況なんだぞお。身の程ってもんがあんだろが、才能のない人間ほど、夢だ、希望だとほざきやがる。

俺なんか、若いときはそりゃあ、スタイルもカッコ良くて、花のインターハイ選手ともてはやされたもんよ。

ところが、20年も経っちまえば、今じゃ、ただのメタボオヤジだ。夢なんか見ないほうが楽に生きられるってもんよ。

就職して、社会の歯車になれば、何にも考えなくてもいいから楽なんだぞ。好きな音楽も趣味で出来るだろうがよ。

いいかレアン、それが社会でうまく生きるコツってやつよ。」


 『心の声』(だめだ。こんな人生を捨てている奴と話しても時間も無駄だ。適当に話をあわせて、早くギターの練習しなきゃ。)


「解りました。おいらは就職します。どこでもいいから探してください。お願いします」


「そうそう、最初から素直になればいいのよ。教室に、求人票あるから、読んでおくんだぞ。」

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