第13話幻影の太刀
「さて、すぐに死ぬことになると思いますが、私の攻撃を防いだ貴女のお名前をお伺いしても宜しいですか?」
「俺の名前はリデルだ、短い間だがよろしくと言っておこう」
「クハハッ、もう死ぬ覚悟は出来ているようですね。では始めましょうか」
「ああ、始めようか。死ぬのはお前の方だがな」
「人間風情が調子にのるなよっ」
そう言いながら悪魔のプルソンは俺に襲い掛かってきた。
悪魔の特性や強さ等の情報を俺は持っていないので、俺は攻めには出ずに守り重視で悪魔の動きを観察した。
「クハハッ、人間のくせに私の攻撃を防ぎ続けるとはやるではないですか」
悪魔の動きを観察した限りでは、俺のやっていた頃のFUO最難関クエストに出てくるレベルの強さは持っているようだった。
しかし、この悪魔が悪魔の中でどのくらいの強さか分からないが、まだ俺の知っているFUOの範囲内の強さであれば余裕を持って対処できるだろう。
ずっと攻撃を受けている訳にもいかないので攻めるために武器を変更するとしよう。
悪魔と聞けば闇属性っぽいので、俺は撃ち合いの間に1度距離を取ってから、武器を水属性の神刀・
「ん?いま武器を変えたようだがどうやったんですか?」
「さあね、敵に教えると思うか?」
「まあいいでしょう、私の攻撃を受けるので誠意一杯の貴女では武器を変えても意味はないでしょう」
「それはどうかな?本当の戦いは─」
俺は目を閉じて呼吸を整えて武器を構えた。
「─これからだっ!」
そして、目を見開くと同時に縮地を発動させて、悪魔の至近距離まで近づき斬りかかった。
「なっ!?」
プルソンはなんとか俺の攻撃を弾いたが、大きく体のバランスを崩してしまっていた。
俺はその隙を見逃さず、追撃の為にスキルを放った。
「抜刀術スキル『一閃』!!」
「ぐぉおおっ」
俺の攻撃は悪魔の胴体に直撃したが、致命傷にまでは至っていないようだった。
「くぅ、硬いなぁ」
「き、き、貴様あああぁっっっぁああ、よくもこの私に傷をつけたなぁあああ。ぶち殺してぐちゃぐちゃに捻り潰してやらぁあああ」
悪魔って言うのは無駄にプライドが高いようだな。
しかし好都合だな、理性を失った相手ほど動きの読みやすいものはないしね。
プルソンは俺に攻撃を仕掛けて来るが、俺は躱して、弾いて、そして向かって来るプルソンにカウンターを叩き込んでいった。
しかし、プルソンの防御力は非常に高く、高火力の抜刀術でもなかなかダメージが通らなかった。
「くそっくそっ、何故私の攻撃が当たらない。人間のガキに私がてこずる等あってはならないのだ!」
ここは、大きな隙を作らせるために少し挑発してみるか。
「悪魔って言うのはその程度の強さなのか?それともお前がただ弱すぎるだけなのかなぁー?」
「貴様、この私を侮辱したことを後悔させてやろう。人間なんぞに本気を出すのは些か不本意ではあるが、その人間に侮辱されたとあれば私のプライドが許さない」
あれ?隙を作らせる筈が、なんか冷静になってパワーアップしそうな雰囲気だぞ?
「さあ、私の真の力を見れた事を誇りに思え。そして死ね!」
そして、俺の目の前で悪魔は変化を開始する。
体の筋肉は盛り上がり、象徴である角もより禍々しく、腕や爪もより攻撃的な形へと変化していくはずだった。
しかし、俺は空気を読まない。
よくアニメ等で敵が目の前で変身したりするが、主人公はそれを黙ってみている。
しかし、変身程大きな隙は無いものだ。
「神刀・
前に使った神刀・
そして、神刀・
一見地味に見えるこの能力は、光を屈折させてビームを射ったりなんかも出来たりする。
まあ今回はビームは射たず、スキルの補助と強化の為に能力を使用するが。
「─壱の太刀『鏡月』」
「バカめ、変身中を狙われる事など予想できている。一点に集中した力を喰らうがいい」
おお、変身中の対策までしっかりしてあったのか。
まあスキルを発動できた時点でそんなことはもう関係ないけどね。
プルソンが飛ばしてきた禍々しい魔力の塊は、プルソンに向かって斬りかかっている俺の体を『すり抜けた』。
「なんだと!?」
そして、慌ててプルソンは俺に攻撃を繰り出すが、俺はプルソンの目の前で2人に分裂した。
プルソンは1人の俺の体を貫くが、貫かれた俺の体はぶれてその場で四散した。
そして、俺の刀は振り抜かれプルソンの胴体を真っ二つに切り裂いた。
「残念、変身も中途半端で止めちゃって悪いね」
「貴様、最後何をし…た…」
そして悪魔のプルソンは絶命した。
「ふぅ、なかなか強かったな」
この世界に来て初めて戦闘と呼べる戦いをしたんじゃないだろうか。
「リ、リデル、お前さん無事なのか?」
「あ、まだ逃げてなかったのかバッソン」
「だからバッカスだって言ってんだろ。ってそんなことより、お前さん最後に体を貫かれてなかったか?」
「ああ、あれは幻影だから大丈夫」
「そ、そうなのか」
そう、俺が最後に放ったスキルの鏡月は、自らの幻影を作り出し相手に斬りかかると言うもので、その効果と斬撃の威力を
なので、最後にプルソンが見ていた2人の俺はどちらも幻影で、俺本体は光を屈折させ光学迷彩の要領で姿を隠し、プルソンの背後から抜刀術を繰り出したというわけである。
「さて、帰るかバッカス」
「ああ、そうだな。そこの悪魔の素材は持って帰らないのか?」
「ん?ああ、そうだな、なかなか硬かったしいい素材になるかもしれないな」
これって死体まるまるアイテムボックスに入るのかな?
よし、試しに入れてみるか。
[システムエラー、このアイテムはどのカテゴリーにも分類されないものです。]
[このアイテムをカテゴリー別に分解しますか?YES/NO]
おお、こんな風になるのか便利だな。
とりあえずYESっと。
「おお!?悪魔の死体が消えた!?」
「ああ、大丈夫。俺が収納しただけだから」
ウィンドウに出ていたYESを押した瞬間、俺の目の前にあったプルソンの死体は消えて、アイテムボックスにカテゴリー別で自動に分類された。
「収納?リデル、お前さんは空間魔法まで使えるのか?」
「ん?空間魔法?なんだそれ?」
「は?空間魔法じゃないならどこに悪魔を収納したんだよ?」
「いや、それは…、アイテムボックス?」
「ん?アイテムボックス?ああ、あれかインキーチ商会が新しく発売したって言う、空間魔法を搭載したカバンって言うあれか?」
「そ、そうそうそれだよそれ」
「へー、そいつはすげーな。確かあれって1億G位するんじゃなかったか?」
「へ、へー、そんなに高いんだ。俺は知り合いからサンプルを貰っただけだから…」
「なるほど、良いものを貰ったな」
「まあそんなことより早く帰ろうぜ」
「そうだな。リデル、助けてくれてありがとな」
そうして、俺達はカザットの街に帰ったのだった。
翌日、カザットの街でやることを終えた俺はカザットを旅立ち次の街を目指す事にした。
カザットを旅立つ前に、俺はバッカスとの最後の勝負をすることになった。
「いやー、まさかまだ挑んでくるとは思わなかったよ」
「ああ、昨日の戦いを見てお前に手加減されてたのは分かったが、最後だからこそお前と戦いたいんだよ」
「そうか、まあ全力で掛かってきな」
「いくぞっ!」
突撃して来るバッカスを躱しつつ足を引っ掛けて転ばすが、バッカスは転んで1回転しながらもすぐさま体勢を整えて、背中に携えていた斧を抜き放ち乱打を繰り出してきた。
「オラオラオラオラオラオラッァッァァア!」
「お前の全力はそんなもんなのか?もっと出せるんじゃないのか?」
「くっそ、余裕で躱しやがる」
「ほら、一撃でも当ててみろ。そしたらお前の言うこと聞いてやるよ」
「よっしゃー!」
「うおっ!」
こいつ、言うこと聞くって言った瞬間に攻撃が鋭くなりやがった。
現金なやつめ。
まあ、当たるつもりはないしそろそろ終わらせるとしようか。
「せいやぁああ」
バッカスが全力で降り下ろしてきた斧を、俺は右手の親指と人指し指と中指の3本の指で受け止めた。
「なっにぃー!?」
「終わりだっ!」
そうして、俺は空いている左手でバッカスの鳩尾に拳をめり込ませた。
バッカスの鳩尾に直撃した俺の拳は、ドスッと言う音を響かせてバッカスを地面に沈めた。
「そんな細腕のどこから…こんな力…が…、ぐふぉ」
こうして、バッカスが気絶して勝負の決着がついたのだった。
その後、バッカスを叩き起こして服をパンツ以外剥ぎ取って見送りをさせたのだった。
「お、覚えてやがれリデル!次こそは勝ってお前の顔を拝んで見せるからな」
「なんだ、そんなことがバッカスの願いだったのか」
「見せてくれるのか?」
「やだ、俺に一撃でも入れれたら考えてやるよ」
「っち、次会ったときはお前さんに追い付いて見せるさ」
「まあ頑張りたまえパンツ1枚のバッカス君」
「う、うるせー!」
「まあ、そろそろ行くわ」
「おう、元気でな」
そして、俺はカザットから旅立とうとしたとき、子供がこちらに走ってきた。
子供は鬼ごっこの最中のようで、全く前を見ていなかった。
そして、俺の目の前で小石に足を引っ掛けた。
「うわっ!」
「おっと、危ない危ない。しっかり前見て走れよボウズ」
「ありがとう!可愛いお姉ちゃん!」
「ん?あ、マントが」
転びそうになった子供を受け止めた時、子供がマントを掴んだようで頭のフードがとれてしまっていた。
「なっ!なっ!」
「んじゃ、行くわ。またなバッカス」
そして、俺は次の街に向けて出発した。
「か、可愛い…」
リデルが去ったあと、バッカスは強くなろうと固く誓ったのだった。パンツ1枚で。
その後、自警団の人に連れていかれたのはどうでもいい話である。
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