第17話 デート・オア・アライブ 後編

「嘘だ!…僕が…そんな…第一男同士で子供が出来たりする筈がない!」


僕は席から勢いよく立ち上がり、ミヤビを睨みつけながら声を荒げる。

いや…実はあり得るのだ…男同士の妊娠…以前ハルカさんが言っていた…

トランスアーツで女体化したコは妊娠出来るのだ。

知識で知ってはいてもまさか自分に直接関係のある事だとは…断じて認めたくない。

仮にそうだとして母さん(父さん)の相手は…母親は誰だ…?


「ではアキラさんはご自分の出生をお母様からどのようにお聞きになっていらっしゃるの?」


僕の勢いにも全く動じずミヤビが問い返して来た。


「イツキ達が僕の家のアパートに来た日に聞いた話だと、母さんは実は父親で、本当の母さんには家を出て行かれたと言っていたよ…」


何でこんな家庭の恥ずかしい事情を他人に話さねばならないのか…顔が紅潮しているのが自分でも分かる。


「まあ、お可哀想に…両親にまで嘘を吐かれていらっしゃるのね」


額に指をついてかぶりを振るミヤビ


「何…それは一体どういう意味だ?」


「そのお話は全くのでたらめだと言っているのですわ!」


そんな?母さんが僕に嘘を吐いている?しかもミヤビの言っている事が本当だとして、その口振りからすると一つや二つの嘘ではない事になる。

動揺を隠せない僕に更に追い打ちを掛けるかの様にミヤビは話を続ける。


「まずあなたが母とおっしゃるシノブさん、元が男性なのは間違いないのですが、彼女は紛れもなくあなたを御産みになった母親なのですよ」


「!!!」


まるで頭を思い切り殴られた様な衝撃…目まいがする。


「そしてあなたの本当の父親は…月宮カグヤ!そう…わたくしのお父様!アキラさん…わたくしとあなたは異母兄弟なのですわ!」


「なっ…何だってえええええええ?????」


体中から血の気が引いてしまったかの様な感覚、背筋の辺りが寒い…思わず膝から力が抜け、その場にへたり込む。


「わたくし達は同じ境遇…そして憎むべき敵も同じなのよ…アキラ…本当に可哀想なコ…」


もう何も信じられない…考えられない…涙が止めどなく溢れ、視界までぼんやりして来た。


「わたくしと一緒にいらっしゃい、何も心配はいらないのよ」


ミヤビ…兄さん?姉さん?な何て優し気な声なんだ…

そのままミヤビ姉さんは僕と唇を合わせて来た、ああ…もうすべてミヤビ姉さんに委ねてしまおう…そして僕の意識は暗闇に落ちて行った…




「はあ…はあ…はあ…」


N高校前から走り続けてやっとノースヒルズの駐車場近くまで辿り着いた。

アイちゃんとチアキちゃんはどうなっただろう…心配ではあるけど、ここまで来た以上まずはアキラとミナミを探さなければ…


「アイヤ!今日は随分と望まぬ客が訪れる日アルネ!」


不意に話しかけられる、この怪しげな言葉遣いはお団子チャイナドレスのタツミ!


「名前はイツキだったカ、なあウチのカナメを見なかったアルカ?」


「ああ、あのくのいちね…さっきN高校前で襲い掛かって来たから私がボコボコにしてあげたわ!」


あの場から去った私には、みんながあれからどうなったのかは分からない、でもタツミに揺さぶりを掛けるために、ここは一つハッタリをかましてみようかしら。


「ほほう!少しは腕を上げたのカ?面白いネ!お前アタシと戦うアル!」


実に楽し気に拳法独特のステップを踏むタツミ、そして腕で円を描く様な構えを取り臨戦態勢に入った。

団体戦の時に分かっている事だけど、このタツミと言う人物は相当な手練れだ、

アイちゃんを瞬殺したと言うのもあるけど、とにかく型や動きに無駄が無く美しい。

想定外のバトルになってしまったが仕方がない、ここで決着を着けてしまうのもいいかもしれない、私も構えを取る。


「その勝負!ちょいと待ってぇな!」


こちらに猛ダッシュで駆けて来る人物がいた、あれはジュンだ。

いつものジャージにスパッツ、頭にはまだ包帯がグルグル巻きにされている。

膝に手を突き、ぜいぜい言いながら呼吸を整えるジュン、余程急いでここまで来たのだろう。


「また呼んでないヤツが来たアルか…」


もううんざりと言った表情のタツミ、


「どうしたのジュン?あなたはまだ頭の怪我が治ってないんだから大人しくしていなきゃダメじゃない!」


「さっきアイから連絡が来たんや、アキラはんがピンチやってな、

そんなん黙っとれますかいな!」


ジュンは半ば強引に頭の包帯を引っ張り外してしまった。


「ここはワテが相手をするさかい、イツキはんはアキラはんのとこへ行ったってぇな!」


「でも…」


「ほら!はよう!」


「分かったわ…後はお願い!」


ジュンの迫力に押されて私は先を急いだ。


「さ~てと!」


軽く脚のストレッチをする。

よう見たらワテのお相手は弟のアイをいたぶってくれたあのチャイナ娘やないか!


「アンタが相手とは丁度良かったわ、アイを可愛がってくれた礼はちゃんとしとかなアカン思うとったんや!」


「あ~アナタあの何の手応えも無い体操着のアニキアルか、これは余り楽しい戦いは期待できないかもネ」


人を小馬鹿にした目でこちらを一瞥するタツミ、


「お~お~エエ度胸や!あとで吠え面かくんやないで!」


コイツの為の対策ちゃうねんけど女子会で得た新たなスキルがあるんや、一か八かの博打になるかもしれへんけど…


「口だけは達者あるネ!」


そう言った刹那、一瞬でワテの懐まで移動してくるタツミ、これはあれや…拳法漫画とかでよう出て来る【縮地】ってやつやろな、こんなんまるで瞬間移動やないか!アイが避けられん訳や。


ドカァ!


タツミの拳をもろに顔面に受け吹っ飛ばされるワテ、


「あいたたたたた!!」


地面に寝そべったまま顔を押さえながら転げ回る、しかしこれは作戦通りなんや。

ワテをどついた右拳を突き出した状態のタツミに異変が起こる、


「アイヤ~!痛いアル~!」


慌てて左手で右手を押さえて悶えている、よっしゃ!どうやら効果は出とるようや。


「どや!ワテの修得した【アニマリフレックス】の味は!」


「アニマリフレックス?何アルかそれは?」


「攻撃力を持たせたアニマをワテの体に纏わせとるんや!しいて言うなら反射ダメージって奴やな!あんさんがワテを倒そうとどつく度にあんさんにもワテに与えたダメージの何割かが跳ね返って来るって寸法や!恐れ入ったか!」


わざとネタばらしをしてみる、これを聞いて攻撃を躊躇するか、或いは…


「そんなのアタシが痛みに耐えてアナタを先に倒してしまえば済む問題アル!」


やっぱりそう来たか、腕に自信があればある程こちらの選択肢を選ぶやろな。

そもそも実力から言ってワテがまともにやってタツミに勝てる筈あらへんのや、

それなら良くて相打ち、悪くても大ダメージくらいは与えとかなな。


それからしばらくワテはタツミのサンドバッグと化していた、

パンチ、キックのコンビネーション、連撃で面白いようにボコられたわ。

実はこのアニマリフレックスには重大な欠点があってな、こちらから攻撃を仕掛けた時の相手のカウンター攻撃には効果を発揮しないんや、要するに棒立ちで攻撃を喰らい続けなければならんのや、アホな能力やろ?ただ相手に知られたらマズイけどな。


「予想より耐えるアルね…正直予想外アル…」


数分後、肩で息をするタツミ、かなりの反射ダメージが蓄積されたとみえて、腕はだらりと下がり脚も内股でプルプル痙攣している。


「へへ…そやろ?頑丈さだけは…自信あるねん…」


ワテも立ってるのがやっとや、アカン…目まいがして来た…次に何か一撃喰らったらお終いや。


「こんな不毛な戦い…そろそろ…終わらせるアル」


足元がおぼつかないタツミはもう縮地を使う余裕もないらしく、のろのろと足を引きずりながらこちらに近づいて来る、ワテはもう一歩も動けへん、まあ時間稼ぎにはなったから御の字やな。


「はわわわ!!!ジュン!どいてどいて~!どいてなの~!」


いきなり大声が聞こえ、ワテとタツミはその方向に顔を向けると、猛スピードで突っ込んで来る人影が見えた、チアキだ!見るからに攻撃する気満々なのだが、助走速度とか言うレベルのスピードでは無い、完全に暴走状態や。


「チョイ待てや!今のワテには避けられへんて!」


一体何を考えとるんやあいつは!ワテもろとも葬るつもりかいな!


「後ろに倒れるの!」


それだ!ある意味最速の回避運動!ズタボロのワテでも簡単に出来る、

すぐさま全身の力を抜き後ろに倒れるワテ。

それを確認するかしないかのタイミングでチアキがジャンプ!両足を揃えた状態のキック、プロレス技で言う所のドロップキックの態勢に入る。


「ごめんなのタツミ~!チアキの必殺スクリュードロップキックなの!」


ドリルの様に高速スピンしながら突き進むチアキのキック、トレードマークのツインテールが後ろにたなびき渦巻いている。


「ハイヤ~!!」


見事ヒット!と思いきや、甲高い掛け声を上げ紙一重でそれをかわすタツミ、これだけのグロッキー状態でもまだ動けるとは!


「こんな事もあろうかとなの!」


チアキの体はとうにタツミの前を素通りしたが、後ろでなびいていたツインテールがグイッと、まるで腕の様に左右に広がりタツミの体を絡め捕る。


「何っ…アル!」


ビュン!と一瞬にしてワテの目の前から消えるタツミ、わき腹あたりにチアキの鞭の様な髪の毛がめり込み、くの字にひん曲がった状態で引っ張られて行く。


「ツインテールにアニマを循環させて操れる様に特訓したの~!」


「アナタ、そんな技いつの間に覚えたアル!」


その先でチアキは脚から着地、前につんのめる上体もポンポンを持った両手で地面にしがみ付き堪える、あれには何や仕込みがあるらしいから指を怪我する事も無いやろ。


「ふぬぬぬぬ!!!!なの!」


ズザザザザ!


しばらく地滑りしたが停止、そして慣性でツインテールに捕まったタツミも飛んで来るが、チアキの頭を軸に地面に向かって叩き付けられた!


ズガァン!


「あいやぁぁぁぁぁあ!!」


ツインテールから解き放たれ、勢い余ってしばらくゴロゴロと転がるタツミ、うわぁ!あれは痛そうや…

やっと止まった時には、タツミも力尽き気絶していた。


「やったなチアキ!お手柄や!」


ヨロヨロとチアキに歩み寄るワテ、


「例の女忍者はどうなったんや?」


「カナメならアイが担いでいずみ荘に連れて行ったの~手当してあげるんだって、やさしいの」


ゴロンと地面に大の字になりながら答えるチアキ。


「ああ!そこがアイのええ所や!」


ワテも一緒になってその横に転がった。




「よい子のみんな~こんにちは~!!」


「こんにちは~!!」


マイクを持ったお姉さんが駐車場の一角の広場に集まった子供たちと挨拶をしている、今日はご当地ヒーロー【キューブレンジャー】のショーがあるんだ。

ここの商業施設【キューブ ノースヒルズ】の職員がスーツアクターを務めていて、コスチュームも市販のパーティーグッズにちょっと手を加えた物だ、練習不足もあったりで何だかグダグダな所が妙な味を出していてそれなりに人気がある。

オイラもアキラと一緒に見るつもりだったのに!この月華団のせいでデートプランは台無しだよ!

オイラの前を歩いていたバニーガール姿のアルテミスは人目もはばからずショーのステージに上がりこむ、


「おい!流石にそれはダメだろう!」


慌てて声を掛けるオイラだったがアルテミスは堂々と仁王立ちだ。


「何、あれ~」


「今回の怪人役かな?」


「わぁ~カワイイ~!」


うわ!目立っちゃってるよ!しかも何だか観客にウケてるし…


「なあ、こんな段取りだったか?」


「知らないよ!ってかそんな訳ないだろ!」


キューブレンジャーのブルーとイエローがついたての裏で揉めている。


「あの!お客様困ります!どうかお席の方へお回りください!」


司会進行のお姉さんがアルテミスを注意するがそれを払いのける


「この女!私に意見するかウサ!身の程を知れウサ!」


「きゃっ!」


勢いよく尻もちを付くお姉さん、許せん!男の娘が女性に手を上げるとは!


「ごめん!ちょっとそれ貸して!」


そばに居たキューブピンク役の女性からマスクを半ば強引に拝借する、後で弁償しますから。


「やめなさい!そこのウサギ怪人!」


オイラは咄嗟にキューブピンクのマスクを被り、あたかもこれがショーの一部であるかの様にステージ上に登場した。

首から下はいつもの緑ブレザー、ミニスカートなので違和感バリバリなのだが…

会場からささやかな拍手と歓声が上がる、こう言うのもまんざらじゃないな…ちょっと楽しいかも。


「ふざけた真似を、いいわ、ここで雌雄を決するウサ!」


ウサギの様に真っ赤な瞳で殺意の籠った鋭い視線を向けて来るアルテミス、髪や睫毛、眉毛までが雪の様に白いのでそのコントラストがより際立つ。

少し背筋に冷たい物を感じる、こいつは明らかにオイラより実力が上だ…だがここで引いたら男の娘がすたる!何よりミヤビと二人きりになったダーリンが心配だ。

実に得体の知れない相手なのでここは軽く様子見で…って思っていた矢先にオイラの眼前からアルテミスが消えた?

どこだ?どこにいった?辺りを見回したが左右、背後には回られていない。


「どこを見ている!私はここだウサ!」


真上?キックの態勢でオイラの頭上からまっすぐ急降下してくるアルテミス、さっき見失なう直前に上空にジャンプしたのか!全く目視出来なかった…何という瞬発力!


ガコン!


寸での所で避けたオイラだったが、今まで立っていた所はアルテミスの強烈なキックが炸裂!ステージは砕け地面に陥没が出来た。


「きゃああああ!!!」


「うわぁぁぁぁ!!!」


今のでこれが見せ物では無いと悟り悲鳴を上げ逃げ惑う人々、まったくこのウサギは!…何とか穏便に済ませようと変装までしたのに意味が無くなってしまった、オイラはキューブピンクのマスクを脱ぎ捨てた。


「少しは空気読めよ!狂暴ウサギ!」


「私はこういう茶番が大っ嫌いウサ!」


怒声を上げるアルテミスが物凄い形相でこちらを睨みつける。


「殺気がさっきより増している…あ、駄洒落じゃないからね?これ」


作り笑いでその場を繕うオイラ、冷や汗が頬を伝う。


「私は駄洒落が一番嫌いだあああああ!!!!」


更に激昂するアルテミス、体からドス黒いアニマがユラユラと炎の様に立ち昇る、やべっ!完全に怒らせた。

目にも止まらぬ速さで間合いを詰めて来たアルテミス、素早いパンチ攻撃のラッシュに防御が追い付かず、次々と有効打を喰らってしまった。


「いててて…オイラもスピードには自信があったんだけどな~」


ユリ組との団体戦でも思い知った事だが、敵の実力者は上には上がいる、

今まで対戦したイツキやチアキも中々のスピードだったがアルテミスはそれ以上だ。

オイラの得意なカウンターヒットも相手がここまで高速に動く相手では決め辛い。

さてどうしようか…このままではやられるのも時間の問題だ。

ふと踵に何かがぶつかる、それは小麦粉の袋だった、きっとさっき避難した観客たちの誰かが落としていった物だろう、待てよ…これは使えるかも!


「いい加減やられてしまえウサ!」


真正面から攻撃をしかけてくるアルテミス、掌を突き出し突進して来る、あれに捕まったらアニマアブソーブとやらでアニマを吸い尽くされてしまう!

そこで足元にあった小麦粉の袋を思い切り踏んだ、辺り一面に真っ白い粉が舞う。


「なっ…目くらましウサか?」


流石のアルテミスも突然の出来事に一瞬動きを止めた、チャンス!

ここぞとばかりにオイラは粉塵の中、アルテミスの方に全力で駆ける。


「喰らえ!」


奴の左頬から顎にかけての顔面に助走で勢いの付いた右脚の飛び膝蹴りをお見舞いした!

ダーリンが団体戦で見せた技だ!


ドカッ!


「うがっ!」


クリーンヒット…アルテミスは仰向けに地面に倒れ込んだ。

矢継ぎ早にウエストの辺りに跨る、所謂マウントポジション、総合格闘技でダウンした相手に仕掛けるあれだ、普通はここから相手をタコ殴りにするのだが…

すかさずアルテミスの両腕をオイラの両手で押さえつける、これはアニマアブソーブ対策だ、だがこれではお互い両手が使えなくなってしまった。


「この…!離せ…離せウサ!!」


滅茶苦茶に暴れてマウントポジションから抜け出そうとするアルテミス、物凄い力だ!


「そうはいくか!」


オイラは額にアニマを集中させ、渾身の力を込めて奴の頭に強烈な頭突きをお見舞いした。


ゴツン!ゴツン!ゴツン!


「あぐぁ!」


二度、三度と連続で頭突きを繰り返す、ちょっと卑怯くさい戦法になってしまったけど恨むなよ?


「調子に…乗るなウサ!」


「何だ?」


アルテミスに跨っている股間の辺りが妙に熱い、視線をそこに移すと何と!たわわなアルテミスの乳房が超高速で振動しているではないか!何このシュールな現象!

まずい!何が起きてるのかはっきりは分からないがとても危険な予感がする!

オイラは慌てて飛び退こうとしたが少し遅かった!アルテミスの胸から衝撃波が放たれ、オイラは胸の辺りにまともに喰らってしまったのだ!


ブオン!!


「うわぁ!!」


空中に跳ね飛ばされおもいきり背中から地面に落下した、


「うぐぐ…そんなのアリか」


胸を押さえよろけながらも立ち上がる、


「アニマバストソニックを喰らった感想はどうウサ?」


アルテミスも額を押さえながら立っていた、僅かだが流血している様だ。


「まさかおっぱいまで攻撃手段に使うとはね…」


膝がガクガクと笑っている、これはもうまともに動けそうにない…

そのまま脱力して膝ま付く瞬間ガシッと体を支えてくれる感覚がした。


「ミナミ!大丈夫?」


この声は…


「イツキか…来るのが遅いよ…」


「はぁ…そんな事より…アキラはどこ?」


イツキも息を切らしている、相当駆けずり回って来たのだろう。


「アキラは店の中で…ミヤビと一緒のはずだ」


「何ですって?!」


慌てるイツキ、それをよそにアルテミスのもとにメイドの一人がやって来て何やら耳打ちをしている。


「援軍ウサか…目的は達した事だし、ここは引くに限るウサね…

お前たち!この勝負は一旦預けるウサ、次に会った時は容赦しないウサ!」


アルテミスはそう言い放ち、文字通り脱兎のごとくオイラ達の前から居なくなった。


「目的を達したって…まさかアキラが?」


落ち着かない様子のイツキ、どうやらそっちでも何か情報を得ていた様だ。


「多分そうだ…奴らこの店でアキラを待っていた感じだった…嫌な予感がする、フードコートに急ごう!」




「アキラ~!」


「アキラはん!」


「ダーリン!どこだ~」


「アキラ君どこなの~?」


オイラ達は途中で合流したジュンとチアキと手分けしてアキラの捜索をしたが、もうそこにはアキラはおろか、月華団の連中の姿すらなかった。



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