真怪高校偽怪部

 東ではなく西だった。

 僕が目を覚ますと、薄い光が窓から差し込んでいた。場所は例のソファーと布団があった部室。

 欠伸をしながら、もう朝かと伸びをする。この明るさならまだ早いな、学校に人が来る前にあの空き教室に行った方がいいな、などと思っていると、部室のドアが開いた。

 大きいが吊り上がった目と、色素の薄い唇が特徴的だった。ひょろりと背が高く、髪の毛は無造作に伸びている。

「誰だ? お前」

 男にしては高い声で訊かれ、僕は唸った。

「うん。それは僕が知りたいね」

「ってうわっ!」

 相手は僕の顔に気付き、驚きの声を上げる。

「のっぺらぼう――なのか」

「そうみたいだね」

「部長ー、今日部活するなら言ってくださいよー」

 間延びした声と共に、眼鏡をした少女が部室に入ってきた。黒髪は前は左右に分けられ、後ろは束ねて縛っている。

「部長ー、何固まってるんですかー?」

 少女は首を傾げながら部長を見上げる。

「のっぺらぼうだ、みっち」

「ははーん。部長また私をからかうつもりですねー。のっぺらぼうなんているえええええ!」

 みっちと呼ばれた子は喋っている途中で僕を見て驚愕の声を上げた。

「の、の、のののののーのっぺらぼうじゃないですかー!」

「だからそうだと言っているだろう。なんで最初ゲゲゲの歌のメロディーで言ったんだ。お前は相変わらずうざってえな」

「驚かせて悪かったね。じゃあ僕はこれで」

 待て――と二人の手が僕の肩を掴む。

「お前は何者だ。どうしてここにいる」

「そうですよー。部室にのっぺらぼうが棲みついてるなんて怖いじゃないですかー」

「うん。僕は自分が誰かわからないんだ。何せ」

 のっぺらぼうだからね――。

「おー、なるほど」

「感心してんじゃねえよみっち。もう一個の質問は」

「自分が誰かわからないから、帰る家もわからない。という訳で学校で寝起きしようと思って、ちょうど安っぽいソファーと布団があったここで寝ていたのさ。施錠もされてなかったし、夜から朝までだから迷惑をかけることもないだろう」

「今は放課後――夕方ですよー」

 ということは今は日の出ではなく日の入りらしい。

「おや、そうなのか。寝過ぎてしまったみたいだね。迷惑をかけてごめんよ。じゃあ僕はこれで」

 待て――と二人が僕の肩を放さない。

「お前、また今夜もここに来る気だろ?」

「まあ、そうなるだろうね」

「それは困りますねー。何か不気味じゃないですかー」

「そうだな。お前、俺達にちょっと付き合え。そしたらここで寝かしてやる」

「えー! 部長ー、私の意見聞いてました?」

「まあそう言うなみっち。部活内容を考えたんだからな」

 くくく、と見るからに悪そうな笑みを見せる部長。僕を丁重にさっきまで寝ていたソファーに座らせ、自分はその前に置かれたパイプ椅子に腰かける。みっちは部長の後ろに不満げな表情で立っていた。

「そういえば、ここは何部なんだい?」

「ふふーん。よくぞ聞いてくれました」

 にっこりと笑い、さあ言ってやるぞとばかりに胸を張るみっち。

「ここは偽怪(ぎかい)部。真怪高校偽怪部だ」

「ちょっと部長ー、私の決め台詞取らないでくださいよー」

 むくれるみっちを邪険にするように鋭く一瞥をくれ、部長は僕と向き合う。

「井上円了は妖怪を四つに分類した」

「井上円了?」

 誰だかわからずに訊くと、みっちが明治の人らしいですーと補足してくれた。

「まず実怪じっかい虚怪きょかいの二つ。実怪はそこからさらに仮怪かかいと真怪に。仮怪とは科学的に説明出来る妖怪。真怪は説明しようのない本物の妖怪。虚怪もまた誤怪ごかいと偽怪に。誤怪は勘違い。そして偽怪は、人為的に起こされた妖怪」

「つまりここは悪戯をする部活ですー」

 ぺしり、と振り向くことなく手を上げてみっちの顔を手の甲で叩く部長。

「一言で片付けようとするな。ここはもっと高尚なだな――」

「だってー、人為的に起こされたーなんてつまりはよからぬ考えを持った人間が悪戯したってことじゃないですかー」

 衝撃でずれた眼鏡を直しながらみっちが言う。

「つまりだな、ここは偽怪を実体化させる部活なんだよ」

「言い方を変えただけで内容は同じなんじゃないのかい」

 説明を聞く前なら何やら怪しげなところだと思ったかもしれないが、先に偽怪とやらについて教えてもらっていればみっちの言った通りの部活だということがよくわかる。

「でもちょっと待って、人為的に起こされた妖怪っていう言い回しはいまいちぴんとこないなあ」

「当時と今の『妖怪』の意味は違うらしいですよー」

「その通り。現在の妖怪とはある種のキャラクターだが、昔の妖怪は怪しい物事の総称だった」

 まあそれはいいとしてだ――部長は僕の両肩に手を置く。

「お前は顔を隠して廊下に立ち、誰かが通りかかったらその顔を見せる。相手はびっくり仰天――偽怪の完成だ」

「うん。しかし僕の顔がないというのは本当のことだよ。これは真怪と呼べるんじゃないのかい?」

「俺がプロデュースしてるから、人為的になる」

「屁理屈ですねー」

「うっせえみっち。でもそうだな。考えようによっては真怪を偽怪に貶めるんだぜ? 何だか興奮するだろ」

 この人物は変だ。

「た、確かに」

 二人共おかしい。

 という訳でどういう訳か僕は廊下に壁を向いて立たされ、通りかかる人を待っていた。場所は偽怪部の部室のすぐ前。これはもう偽怪部の仕業だと言っているようなものだと思うのだが、部長は偽怪部の存在を知っている生徒など殆どいない――と胸を張った。

 足音が聞こえてきた。部室の中で息を潜めて様子を窺っている部長とみっちがざわめきだす。もはや息を潜めていない。

 横目――僕に目はないからこれは喩えになる――で標的が充分近付いたことを確認し、一気に振り向く。

「あれ? 何してんだよ先輩」

 僕と殆ど同じ身長で、少し茶色の入った髪。

「あれ? やあ、いっちゃん」

 とりあえず見知った顔だったので挨拶をしておく。

「って待てい! 何普通に挨拶してんだテメエらァ!」

 部室のドアを勢いよく開け、部長が僕達の間に割って入った。

「おいお前、こいつの顔を見ろ! 何もないぞ! のっぺらぼうだぞ!」

「うん。知ってるけど」

「知ってるってのはどぅおういうことだよ!」

「僕と彼女は知り合いだっていう、ただそれだけのことだよ」

「なんでのっぺらぼうに知り合いがいるんだ!」

 至極もっともな疑問である。

「そりゃ、まあ、先輩だから」

 その言葉を聞き、部長は何かに気付いたように声を上げた。

「先輩って――まさかお前、先輩か? あの先輩か?」

「君の言う先輩というのは、自分のことを何も明かさずに『先輩』と呼ばせ、どうでもいいことを中途半端に知っている人物のことかい」

 頷く部長。

「それは多分僕だと思うよ」

「せ」

 せんぱあい――と叫び、部長は僕に抱き付いてくる。

「どこ行ってたんだよ先輩! 偽怪部を放っておいて、大変だったんだぞこっちは!」

 などと言いながら、部長は僕の身体に顔を擦りつけてくる。じゃれてくる犬か猫といったところか。

 突然の行動に僕が途方に暮れていっちゃんの方を見ると、いっちゃんは一度顔を蒼白にした後、激しく紅潮させた。

「な、何してんだよお前! 先輩から離れろ!」

 部長の首根っこを掴み、僕から引き剥がそうとするいっちゃん。しかし部長は僕に強く抱き付いたままで、いっちゃんの力を持ってしてもその場から動かない。

「何やってんですか部長ー。気持ち悪いですねー」

 部室の中でぽかんとしていたみっちが漸く口を開く。

「うっせえみっち。だって久しぶりに先輩に会えたんだぞ?」

「先輩ってよく部長が話してる人ですかー? 偽怪部を作ったっていう」

「そう! 俺が一年の時導いてくれたあの先輩だよ! なあせんぱあい」

 うっとりとした表情で僕に擦り寄る部長。

「あの、申し訳ないけど離れてくれないかな? それから僕について知っていることを教えて欲しいのだけれど」

 部長は絶望でもしたように真っ青な顔になる。

「う、嘘だ――先輩が俺に離れろなんて言うなんて。いや、でも触った身体のラインは先輩で間違いないし――そうか、のっぺらぼうになったから」

 いっちゃんがやけに険のある目付きで僕を見る。

「先輩がのっぺらぼうになったってんなら、俺は出来る限りのことはするぜ」

 漸く僕から離れた後で、部長は胸を張る。そのまま固まること数十秒。

「あれ? 俺、先輩のこと何も知らない――」

 予想通りではある。

「じゃあその偽怪部ってのについて話せよ。先輩が作ったんだろ?」

 敵意剥き出しの目で部長を見ながらいっちゃんが言う。

「ああ、俺が入学した時にはもうあったんだけどな」

 部長は入学してからというもの無為に過ぎていく日々に虚しさを感じていたそうだ。そんな時、偽怪部に出会った。当時の偽怪部の部長であり創始者――僕のことらしい――は部長に啓示を与え、部長はすっかり僕に心酔して偽怪部に入った。

 しかし、部長が二年生になると僕はそれまでの部長の座を退き、偽怪部から姿を消した。

 それから部長は僕の教えを守り、偽怪部を続けてきたのだという。

「うん。自分のことながらやっぱりよくわからないね」

 お手上げだと僕が首を振ると、部長は目を光らせた。

「だけど、俺が先輩を慕ってることはわかっただろ?」

「それはまあ、少し」

 それを聞くと部長は目に見えて喜んだ。みっちが汚物でも見るような視線を送っているのもお構いなしである。

「まあでも、僕は自分が何なのか急いで知りたい訳じゃないんだ。このまま適当に過ごしていくつもりだから、夜はこの部室を使わせてもらっていいかな?」

「勿論! ここは元々先輩の部活だぜ? いつでも気兼ねなく使ってくれていいんだよ」

「えー、私の意見は無視ですかー?」

 唇を尖らせるみっちを、部長は黙れと諫める。

「でもー、私だって偽怪部の部員なんですよー? 私の意見も尊重してくれてもいいじゃないですかー」

「お前は一年、俺は二年で部長。上下関係を考えろ」

「なんでそんなとこだけ体育会系なんですかー」

「まあまあ二人共。僕が寝起きするのは夜から朝までだから、みっちには迷惑はかけないよ。それに部室に顔を出すのは避けるから」

「えぇーっ!」

 これは部長の叫びだった。

「なんでだよ! 偽怪部に顔出してくれよ先輩! 俺は先輩不足でずっと我慢してきたんだぞ!」

「うん。僕を栄養みたいに言うのはちょっとやめて欲しいね」

「じゃあ時々なら許してあげますー。あんまりしょっちゅうはやめてくださいねー」

「みっち! お前先輩になんて口の利き方してんだ!」

「ああいや。気にしないからそんなに怒らなくても」

 みっちに詰め寄る部長をなだめ、落ち着いたの見て胸を撫で下ろす。

「それより先輩、こんなとこで油売ってないでいつものとこに来いよ。にーこが待ちくたびれてるぞ」

 どうやらいっちゃんはいつもの空き教室に僕がいないので校内を捜し回っていたらしい。それならそれで帰ればいいと思うのだが、二人共習慣からは抜け出せないようだ。

「おい待てこら。先輩をどこに連れてくつもりだ?」

 部長が険のある目付きでいっちゃんを睨む。いっちゃんは負けずに睨み返した。

「先輩はいつも三号棟の空き教室にいるんだよ。そもそものっぺらぼうになった先輩を見つけたのはあたしらが最初なんだ。身柄はこっちで預かる」

「お前――見たところ一年だな? 俺は二年だぞ」

「先輩から見ればどっちも後輩だろ」

 部長は言葉を詰まらせた。部長にとってこれはぐうの音も出ない正論だったらしい。いや、何故二人共僕を基準にして話をしているのだろう。

「わかった。じゃあそこへ俺達も連れていけ」

「達――って、えー。私も行くんですかー?」

 不服そうに言うみっちに、部長はこれも偽怪部の活動だと言い放つ。

 結局三人でいつもの空き教室に向かい、そこで待っていたにーこと合流した。

「この人達は?」

 にーこが訊くと、いっちゃんが簡潔に説明する。にーこはそれを聞くと僕を侮蔑するような目で見て、

「うわあ……」

 などと言う。いっちゃんから一体どんな話の聞かされ方をしたのだろう。

 ここで三人――みっちと僕は蚊帳の外だった――が話し合って、僕についてわかっている情報を整理したが、結局役に立ちそうな情報は出なかった。むしろ以前からわかっていない情報ばかりが出て余計に混乱することになったのである。

 名前は不明。クラスはおろか学年も不明。この高校の生徒なのかも不明。

 不明尽くし。全く僕という男は何を考えてこんな訳のわからない存在になっていたのだろう。自分のことながら呆れてしまうばかりだ。

「まあでも、先輩がのっぺらぼうになってよかったこともある」

 部長がにやりと笑いながら言う。この時はもう僕の身元についての話は終わっていた。

「いいも悪いも、先輩なんてのっぺらぼうになる前からのっぺらぼうみたいな奴だっただろ。まあ……色々忘れてるのは腹立つけど」

 厳しい視線を僕に送るいっちゃんと、懇願するように僕を見る部長。暫く経つと部長は我に返ったように咳払いをして、再び不敵な笑みを浮かべる。

「先輩の顔は偽怪を作るのにうってつけだ。さっきはたまたま知り合いで失敗したが、何も知らない生徒相手なら効果は抜群だ!」

「いや、僕は出来ればそんなことはしたくないなあ」

 部長は顔面を金属バットで殴られたが如く仰け反る。

「せ、先輩、気は確かか?」

「うん。それは僕が言いたいところだね」

「嘘だろおい……。偽怪部を作った先輩がそんなんでどうするんだよ! 先輩なら率先して偽怪を起こすはずだ」

「確かに、先輩はのっぺらぼうになって変わりましたよね」

 にーこに言われ、僕は困り果てて頭を掻く。

「記憶を失っただけでなく、倫理観も失ったみたいです。勿論、悪い意味での倫理観ですが」

「常識人の先輩なんてつまんねーよなあ」

 いっちゃんがぼやく。悪い男には魅力があるだのと宣う輩がいるにしても、質の悪い男に惹かれる要素はないような気がするのだが。

「あのー、この先輩ってそんなにおかしい人だったんですかー?」

 それまでつまらなそうに黙っていたみっちが訊くと、三人は揃って頷いた。

「変態」

「異常者だよな」

「サイコパスですよね」

「うん。黙って聞いていると随分な言いようだね」

 一旦息を吐き、吸い込んでから、続ける。

「君達は僕のことを何も知らないじゃないか。君達が見ていた僕だって、ただの一つの側面に過ぎないかもしれない。それだけを見るとあたかも正解のように見えるけれど、一歩引いて見れば無限の多面体だとわかるかもしれない。君達はそれで鬼の首でも取ったように僕の一側面を断言しているけれど、それは他の面といくらでも混ざり合うんじゃないのかな。一部の、さらに一部しか見れていない、そんな感じだよ」

 ふう、と息を吐く。

「せ――」

「先――」

「先輩だあああ!」

 何故か、三人は狂喜した。

「この中途半端な長広舌!」

「中途半端な解説!」

「中途半端な啓蒙!」

「先輩だ!」

「これぞいつもの!」

「中途半端な先輩ですよ!」

 喜び合う三人を、僕はぽかんと見ていた。

「どういうことなの? みっち」

「私に訊かれても困りますー」

 冷めた態度で突っ立っているみっちは、僕と同じようにぽかんと三人を見ている。

「そうそう、変わるもんじゃないってことだよ」

 いっちゃんが何度も噛み締めるように頷きながら言う。

「先輩はどうなっても所詮先輩なんですね」

 にーこは安心し切った様子でそう言った。

「俺達が心配するようなことじゃなかったってことだな」

 満足げに笑う部長。

「先輩らしさを話し合ってたら、それを間違いだと一喝される。でも、その説教が一番先輩らしかった。笑っちまうな」

 と言いながら笑い合う三人。

「うん。結局僕は何なんだろうね」

「さあ」

 取り残された僕とみっちの間には、妙な連帯感があった。

 ぬらりひょんはそれを見て不機嫌そうに鼻を鳴らす。いたのかと僕が訊くと、さらに不機嫌そうにずっといたではないか、と言う。

 ぬらりひょんは僕が羨ましいのだ。全てを失った後でも、生きた人間の中に人物の記憶が残っているこの僕が。

「しかし、それは本当にいいことなんだろうか」

 ぬらりひょんの愚痴に応えるべく僕が呟くと、四人はこちらを見て怪訝な顔をする。彼らにはぬらりひょんは知覚出来ないので、僕が突然声を上げたようにしか見えないのだ。

「他人の中の自分と、自分の中の自分には、気付かないようで大きな隔たりがあるのが常だ。勿論そのどちらも自分であって、他覚と自覚の重要度はそんなに変わらない。しかしまあ、今の僕には自覚がない。当然だけど自覚だけに頼るっていうのは愚かな行為で、自分の中で結論付けられる自分なんて幻想だ。ただ、それは逆にも言えるはずなんだよ。他人の中で形作られた自分が全て正しいなんてどう考えてもありえない。他覚と自覚を擦り合わせなければ全体像は見えてこない。ところが僕は自覚が完全に欠落している。他覚だけに頼らなければならないような状況だ。そこに表れる僕は果たしてどこまで歪められているんだろうね」

「さっきよりも長広舌だな……」

 納得したような訝るような表情の四人。

「いきなり何を言い出すんだよ先輩?」

 いっちゃんが訊いてくるので、ぬらりひょんが僕を羨むので自分を卑下してみせたのだと答える。ぬらりひょんと聞いて部長とみっちは首を傾げるが、説明するのも面倒なので今は特に何も言わないでおく。後でいっちゃんかにーこが話してくれるだろう。

「まあでも、それをどれだけ擦り合わせても確かな自分なんてものは出てこないけどね。だからまあ、僕は自分から自分を捜そうなんてことはしないよ」

 ぬらりひょんは不満げにそっぽを向く。言いくるめられそうになるのを無理矢理かわしたのだ。

「君はずるい奴だね」

 僕の言葉に少し苛立ったように肩を竦めるぬらりひょん。他人の中に自分の姿が残っている僕と、巷間に後付けの自分の姿が広まっているぬらりひょん。僕は君の方が羨ましいような気もするけどね――。

「本当、君はずるいよ」

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