mission2-9 次なる街へ
翌朝、宿の一室には様々な工具が並べられた。ガザが背負ってきた大きなバックパックの中には、いつでも作業ができるように道具一式が入っていたのだ。
「よし、やるか!」
ガザは意気込んで言った。三人はガザの様子をじっと見守る。
ガザは夜のうちにユナの神器の設計図を仕上げていたらしい。びっしりと粗い字でメモが書き込まれた設計図はユナにはさっぱり解読できなかったが、その仕事の早さはガザの鍛冶屋としての力量を思わせる。
「えーと、まずは……」
材料を取り出そうと、ガザは自分のバックパックを漁る。しかし目的のものが見つからないのか、「あれ?」「これでもない……」などと言いながらずっとバックパックの中を探り続ける。
段々と苛立ってきたのか、アイラがしびれを切らして言った。
「どうかしたの?」
ガザはバックパックをひっくり返して全ての中身を見直すと、豪快に笑った。
「いやーすまんすまん、
「黒流石?」
「ああ。形状記憶ができて、神石の力の伝導性も高い鉱物資材のことだよ。俺が神器を作る時はあれをベースにするんだが、切らしていたのをすっかり忘れてた」
アイラは溜め息を吐く。
「困ったわね……その辺で手に入るような代物じゃないでしょう」
「そうだな。だが、キッシュに行けば流通しているかもしれん。あそこは職人の街だ、鉱物資材なら腐るほど揃っているはずだ」
「結局キッシュまで行くことになったね」
ユナがルカに話しかけると、「ん、ああ」と空返事が返ってきた。ルカは今朝もまだ少しぼーっとしていた。
(昨日の事がそんなにショックだったのかな……)
そう思うと、少し複雑な気持ちになるユナであった。
荷造りが終わると、アイラはサンド二号を叩いて起動させた。
「は〜い、アイラ姐さん。今日はどんな御用で……ってガザやん! 久しぶりやな!」
「おう、サンド二号。相変わらず賑やかだな」
「四号は元気にしとる?」
「ああ。そうだ、今度お前にも見せてやるよ。四号に新しく追加した機能をさ」
ガザがにこやかに言うと、サンド二号は縮み上がってアイラの後ろに隠れた。
「改造されるのは嫌や……姐さんに蹴り飛ばされて変形した方が、まし」
「はいはい。ノワールに伝えといて。神器の資材が足りないから、ガザと一緒にキッシュに向かうことにするわ」
すると、横にいたルカはきょとんとした顔で尋ねた。
「え、キッシュに行くの?」
「あなた、話を聞いてなかったの……」
うなだれるアイラとは裏腹に、ルカはぱぁっと表情を輝かせた。
「行ってみたい街の一つだったんだよ! コーラントに行く前は港に寄っただけだったし、ここでガザに会えたから行かないのかと思ってた」
「おお、そうだったのか。キッシュは楽しいところだぞ。世界中の人や物が集まってて賑やかだし、なんたって夜の方も……」
ガゴッ! アイラの鉄拳がガザの後頭部に入り、ガザは呻きながらその場に崩れる。
ユナは少し安堵した。自分のためにわざわざキッシュに寄ることになるのではないかと、後ろめたい気持ちもあったのだ。
すっかり元気を取り戻したルカは、ぐっと伸びをして声を張り上げた。
「それじゃあ行こう! 次の街へ!」
*mission2 Complete!!*
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