第5話 初めてのホスト

凛が下調べをしていたホストへ向かう途中、雪乃は今日は帰れそうにないと晃に連絡を入れておいた。いつもは終電前に帰る為、晃も何かあったのかと感じたのか理由を聞かれ、凛の頼み事をそのまま伝えれば笑って気を付けてと言ってくれた。

少しは止めてほしかったなと思いながら、笑って許してくれた晃には感謝の思いしかない。

そんな事を考えながら、前を歩く凛と若葉の後ろをボーっとついてきていた雪乃は、凛の声に足を止める。


「あっ!!ここだよ。ここの3階がサイトに載ってたお店だよ!!」


考え事をしながら歩いていたせいか、雪乃は初めて足を踏み入れる歓楽街に驚きを隠せない。

夜だと言うのにネオンの煌めきにより、どこを見てもキラキラと輝き、今までは無縁だったような人達が道には溢れていた。

ドラマで見るような光景が目の前にあると言うのは、何とも不思議な感覚だった。


「雪ちゃん!!ほら!早く行こう」


呆気に取られている雪乃を促すように若葉が手を握り、凛が待つエレベーターへと連れて行ってくれる。

そして・・・エレベーターを降りれば、そこはもう異次元の世界だった。


「「「いらっしゃいませ」」」


エレベーターを降りた途端、目の前には髪をつんつんにしたホストと思われる人達が並んでいる。

灯りは少し暗くしてあるのか、雪乃からはどの子も同じような顔に見えた。

どうすれば良いのか分からない三人に、ここは初めてか?とホストから聞かれ、そうだと答えれば、初めての方は最初に説明と年齢確認がありますと言われ、内勤と呼ばれる裏方のような人から話を聞いた。

身分証確認の時に保険証を出せば、顔が確認できないとダメだと言われ、雪乃は渋々運転免許証を取り出す。


「結構きっちりしてるんだね」

「緩いお店もあるみたいだけれど、ここは有名なお店らしいから、年齢確認とかはしっかりするんじゃない?最近は警察とかの規制も厳しいみたいだしね」


お店については凛がきっちり調べただけあり、そこらへんの管理はしっかりしているようだ。

初めてのホストクラブに緊張しっぱなしの雪乃とは反対に、わーわーはしゃいでいるのは若葉。

内勤にどの子が人気なのか等を聞き、お酒が入る前からテンション高めである。

凛は仕事モードのようで、普段は男性不信の気があるのに、今は通る人通る人をしっかりと観察している。


「それでは席へ案内しますね」


とそこで内勤が言葉を切ると、マイクから店へと声が響いた。


「お客様ご来店です。いらっしゃいませ」


その声が届いた瞬間。お店からは割れんばかりの声が返された。


「「「「いらっしゃいませ」」」」


初めてのホストクラブ。

キラキラ輝くこの場所は悲しみ憎しみを全てネオンで隠し、綺麗な所だけを見せる場所。

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