第2話 久しぶりの再会
桜の花が満開を迎える季節。
まだ少し肌寒い夜の道を雪乃は駆け足で待ち合わせの場所へと向かっていた。
焦る気持ちを抑え、腕時計を確認すれば、待ち合わせの時間から5分過ぎている。
「ヤバい!怒られる!!」
誰に聞かせるわけでもなく漏れた言葉は、それだけ雪乃が焦っているという表れだろう。
いつぶりだという程走れば、遠くに幼い頃から見慣れた今井若葉と中村凛が店の前に立っているのが見えた。若葉は少しだけ不機嫌そうに、凛はそんな若葉を宥めているのが遠くからでも分かる。
先に雪乃に気付いたのは若葉の方だった。
「おい!こら!坂口雪乃!!!遅いわ」
若葉がフルネームで呼ぶ時は少しだけ拗ねている時だという事を、長い付き合いで熟知している雪乃は言い訳をすることもなく謝る。
「ごめんなさい。待っててくれてありがとう」
若葉だけでなく凛にも頭を下げれば、凛は気にするなと笑い、少し乱れた雪乃の髪の毛を整えてくれた。若葉にも急いできたことは伝わったようで、まだ少し不機嫌だったが許してくれたようだ。
「とりあえずお店に入ろう。せっかく久しぶりに三人揃ったんだしさ」
凛が二人に声をかけ歩き出せば、そうだねと雪乃達も凛の後に続く。
店内に入れば凛が予約をしておいてくれたようで、窓際の桜が綺麗に見える席へと案内された。
「この席特等席だね。桜がライトアップされてて、すごい綺麗!!」
先程までの不機嫌さが嘘の様にはしゃぐ若葉に、凛もどや顔で応える。
「予約取るの大変だったんだから。もっと褒めてもいいよ」
凛は出版社に勤めていると言う事もあり、流行りの店などには詳しく、三人で集まる時にはリーズナブルながら美味しいお店をいつも予約してくれている。その凛が予約を取るのが難しいと言う程なのだから、相当大変だったんだろうなと思う。
「いつもありがとうね。凛の連れてきてくれる店にはずれはないもんね」
「そうそう!凛ちゃんにはいつも感謝してます」
若葉と共に礼を言えば、少し照れた凛の笑顔が返ってくる。
そしてタイミングよくやってきたワインで乾杯すれば、恒例の報告会が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます