第十一章 母・真部千賀子

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 光は2,300グラムの未熟児で生まれました。

 ちょうど夫が体を壊して入院している時でしたので、心細かったですけど、プロ野球の王さんも未熟児だったのですよ、といって助産婦さんに励まされました。

 つわりも一番ひどかったけれど、生まれてからは比較的手のかからない優しい子でした。

 学業成績も小・中・高と、常にトップグループの中にいて大学進学を夢見ていたのです。

 夫にとりまして〈わたくしにとりましても〉、自慢の息子でありました。

 残念ながら夫は先立ってしまいましたが、どんなにか心残りだったことでしょう。息子の将来を見たかったことでしょう。

 そんな光がある時から急に塞ぐようになりまして、学業成績が下降線をたどるようになりました。

 そして体の方々に打ち身や擦り傷をこしらえて帰って来るようになりました。

 わたしや娘のタンス預金を持ち出していたのはあとから知りました。

 学園の受け持ちの先生にご相談に行ったのでありますが、逆に成績が下がったことを指摘され、生活環境を変えることを、暗に進学校への転校をほのめかされただけでした。

 つまり光はひとり忍従の学園生活を一日も欠席することなく続けていたのであります。

 そこまで追い込んだお子さんたちを責めるつもりは毛頭ございません。

 息子の罪をお許し願うつもりもありません。一生かかってでも罪は償いさせます。

 そのためにどうか、息子・真部光に更正のチャンスをくださいませ。なにとど、なにとど、ご慈悲を……。


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 ――うちの子が、独りで死ねばよかったんですか!

 ――そうしたら、自殺に追い込んだ子供たちは悲しんでくれますか!

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