手記:彼についてⅡ



 嫌いだとはっきり理解したと同時に、私は思った。

 はて。

 どうしてこの男はこうも態度が悪いのだろうか?

 どうしてこの男はこうも口を開けば毒を吐くのか?

 そう疑問が脳裏をよぎって以降、奇妙なことに私と彼の交流は続くことになる。別段、望んで彼と関わろうと思ったわけではない。たまたま、仕事の関係上彼と顔を突き合わせることが増えた――というだけである。

 顔を突き合わせれば、彼は私に悪態をつき、私はそんな彼に反発をした。

 同じ席に付くこともしばしばあった。そうなればもう、食事は不快なものになる。料理が来るまで毒の応酬を繰り広げ、酒を煽れば殴り合いにまで発展する。

 そんなことを、幾度繰り返したことだろうか。

 もう、数えるのも莫迦らしくなるくらい、私たちは顔を突き合わせ、言葉を投げあい、酒に酔っては拳で語り、肩を借り合いながら帰路について。


 ――そして、いつしか私と彼は、友人と呼べる関係になっていた。



 

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