0401から0500まで
Num.0401 ID0604
山崎「ピザって十回言ってください」中村「俺チーズが食べられないからお好み焼きにしてくんない?」山崎「そういう問題じゃないです」中村「……ピッ!」山崎「?」中村「駄目だ!」山崎「そんな嫌いですか!?」中村「言った体でいいじゃん」山崎「ならここは?」中村「もんじゃ」
Num.0402 ID0605
山崎「やまびこって何ですか?」中村「呼び捨ては良くないな」山崎「は?」内村「お前より人生の先輩だぞ」山崎「人?」石川「やまびこさんが山に籠っているからって天狗みたいな扱いは良くないな」山崎「現象じゃないんですか?」中村「存在すら気付かせないとか流石やまびこさん」
Num.0403 ID0606
山崎「ふたりにこの1万円をあげます」中村「受け取れるか」山崎「これをふたりで分けてください。取り分は内村さんが決めてください」内村「10対0で」山崎「中村さんはこの申し出を断れます。但し断った場合お金を得る事はできません」中村「いいよ10対0で」山崎「あれ?」内村「交渉成立」山崎「……あう」中村「エライくだらない1万円の使い方だったな」内村「やりたい事は分かったけどね」山崎「うう……」中村「さて、問題はどちらが10かだが」内村「もちろんアンタさ」中村「お前が受け取りやがれ」内村「断る」中村「という訳で交渉決裂。ほら」山崎「……うん」
Num.0404 ID0607
ふと思い立って足を止める。気が付けば夜。灯りもない。不安になって寄り掛かろうとした壁も既になかった。先程までは確かにあった筈なのだが。一瞬の目眩によろけるが何とか踏みとどまる。が足元を見て戦慄する。そこには床も地面も何もなかった。後は墜落か。それとも気付かないか。
Num.0405 ID0608
ビリヤードで御座いますね。台はこちらで球は九つ。キューは壁際に御座います。はい何で御座いましょうか。球が足りない。ナインボールは御嫌いですか。打つ自分の球がない。嫌で御座いますよ御客様。御立派なのを二つも御持ちじゃありませんか。では抉り出すのを手伝いましょう。
Num.0406 ID0609
山崎「自由研究ー」中村「おうよ」山崎「十円玉を綺麗にします」中村「やってみろ」山崎「まず十円玉に蜂蜜を塗ります」中村「ん?」山崎「それをアリで満たしたこの箱の中に入れます」中村「おう……?」山崎「するとあら不思議! 十円玉が新品同様ピカピカに!」中村「蟻酸で!?」
Num.0407 ID0610
産み落とされた嬰児はその重さで瓦を砕き、勢いのままにへその緒を千切り転がり落ちて地面に頭から激突し頭蓋を潰した。華を咲かせる前に聞こえた最初の泣き声は憎悪か悲嘆か或いはただの叫びか。赤で引かれた線を辿り元へ行き着けば女。月を背に屋根の上に立ち白い太腿を血が這う。
Num.0408 ID0611
暗い部屋。差し込む筈の月明かりは隣の高い建物に遮られここまで辿り着きはしない。スイッチを押しても点かぬ電灯。不意に起こる音と光。見れば燃えるマッチを持つ手が動く。火は灯され部屋を照らす。何もない部屋にやつれた男がいた。灯された火を見るとそこで燃えているものは爪。
Num.0409 ID0613
屋根に上ってみると瓦が一枚砕けていた。その横に何やらヒトデのような物体が落ちている。その物体は脈打つように蠢く。靴の爪先で突っついたら身を強張らせて硬直し瓦の上を滑って落ちた。嫌な音が聞こえたので屋根から覗くように下を見るとそこには潰れたヒキガエルが笑っていた。
Num.0410 ID0614
今日またひとつ悲しい事があった。善意なんて独り善がりの悪そのものなんだ。そう自転車。十字路で右手側から来た彼と出会いお互いに止まる。そして同時に動き出しまた止まる。その繰り返し。最後には触れる程近付いてお互いに苦笑いの会釈。何故こうも悲しい笑顔を向けられるのか。
Num.0411 ID0615
ひそひそ……。あの人よ……。屋根の上で出産された人……。赤ちゃんはそのまま屋根から落ちたって……。どんな事すればそんな恨みを買うっていうの……。警察が調べたら赤ちゃんの父親はあの人だって……。じゃあ……。そういう事でしょ……。なんでそんな犯罪者がのうのうと……。
Num.0412 ID0616
山崎「台風一家ってどんな家族ですか?」中村「ファミリーの秘密を知った者は生かしてはおけない」内村「好奇心で首を突っ込むなという事だよ」石川「んでその秘密っていうのがね」山崎「この人、知ってるのに生きてますよ」中村「やむを得ない」石川「お前の好奇心で死ぬのか……」
Num.0413 ID0618
山崎「これがないと生きていけないものありますか?」中村「目薬」山崎「は?」中村「ないと死にます」山崎「何でですか?」中村「理由なんて」山崎「死ぬ程の事なんですよね?」中村「世界の終わりだよ」山崎「切らしたらどうするんですか?」中村「取り外して洗う」山崎「目を?」
Num.0414 ID0619
言葉も姿勢も違うけれど皆、同じ方向を向いている。その言葉は様々な印象を含んでいて馬鹿にしたものから諭すようなものまである。だがこれは人によって戦い方が違うだけの事であってその言葉を放った目的はほとんどが同じであると言える。そう、我々は過ちを正そうとしているのだ。
Num.0415 ID0621
山崎「ペペロンチーノって何ですか?」中村「あーいたねそんな人」山崎「はい?」内村「昔、公園のベンチが何十個も切断される事件が起きたんだ」石川「犯人として警察が逮捕したのがペペロン千野という男だった」中村「だけどこの男ノコギリどころかペーパーナイフすら持ってない」山崎「どうやって切断してたんですか?」中村「なんとこの男、尻の割れ目から電ノコの刃を出して座ったままベンチを切断してたんだ」山崎「……はぁ」内村「溜め息吐かれた」石川「気持ちは解るけどね。結局その人形だけで犯人見つかってないし」山崎「ああ、人形の名前なんですね」
Num.0416 ID0623
ここにある一切の中で最も価値のあるものは沈黙だろう。ただ黙っているだけの事は容易くはなく更には見付けてもらうのも難しい。音に背を向けたとしても跳ね返る音は耳に届く。その中で沈黙の音を聴くのはどれ程の注意を必要とするのか。耳を研ぎ澄ましひたすらに語らぬ者を探そう。
Num.0417 ID0624
ほうほうなるほど。このレバーを回すと。細い棒を伝わってテーブルの下にあるこの機械に力が伝わり。この装置を動かす訳だ。これにより人力によるピストン運動を。ほほう。で、このレバーはどうやって回してもらう。ほう。福引の機械に。つまり幼女がガラガラとやるとほうほうほう。
Num.0418 ID0625
この世界で人嫌いであるという事は自殺の検討を必要とする素養である。自分を称えてくれる者、支持してくれる者、崇め奉ってくれる者、自らを顧みない奉仕をしてくれる者……。全てに殺意のみを抱きその微笑みの前に怒りと憎しみしか返せない人非ざる者の生きる道を、今も模索している。
Num.0419 ID0626
山崎「このホールで買ったケーキをどう分ければ皆で平等に分けられるでしょーか?」中村「売って金に変えればいんじゃね?」山崎「ええー!」内村「買わなきゃ手間が省けたのに」山崎「そういう事じゃないですよ!」石川「皆で腐敗するまで眺めるってどうだ?」山崎「食べよーよー」
Num.0420 ID0627
蝶を捕まえた。パタパタと羽ばたく。今は羽根を持たれもがいている。この指から解き放たれようとしているのだろう。羽根にネジを突き刺す。ネジは薄い羽根を突き破り壁に捩じ込まれもがく蝶を磔にする。もう片方の羽根は扉用の板に磔にした。完成。扉を動かすと蝶の羽根は千切れた。
Num.0421 ID0628
この男は私を地面に叩き付けその足で私を思い切り踏み付けました。踏まれた場所は骨も折れもう二度と元には戻らないと診断されました。目に喩えれば眼球を抉り出されて踏み潰されたのと同じです。傷害罪でしょう。それは違うって何言っているんですか! 眼鏡は顔の一部でしょう!
Num.0422 ID0629
山崎「鮭とサーモンって同じものなんですか?」中村「鮭はサーモン」内村「サーモンは鮭じゃない」山崎「?」石川「サイダーは炭酸飲料だけど炭酸飲料はサイダーじゃないだろ」山崎「……ほえ」中村「マスの一部もサーモン」内村「炭酸飲料はスプライト」山崎「それはどうでも……」
Num.0423 ID0630
どうしたの? 何を泣いているの? 目の玉をなくしてしまったの? そっか。それは大変だね。僕も一緒に探してあげるから。だから泣かないで。僕には産まれた時から目なんてついてなかったけど、それでもひとりで探すよりもふたりで探した方がきっと早く見付かるよ。だから、ね?
Num.0424 ID0631
もし空が飛べるのならばどんな風に飛びたい? 鳥はその翼に風を受けながら空を優雅に舞う。ミサイルは莫大なエネルギーを一方に噴出し空を力強く貫く。風船はその軽さで空を静かに漂う。超合金の玩具は世界の理を覆す者の手に掴まれ空を自在に動く。手を放されたらどれも同じか。
Num.0425 ID0632
問題は蔑ろにされているという現実。自分が不当な扱いを受けているという思い。自分より他人が優先されるという受け入れ難い事実。命に関わるような怪我をした他人よりも自分を優先して当然だと……そうは思わなくても、自分を優先した者に好意も感謝も持たずただ否定するのは難しいのだ。
Num.0426 ID0633
時たま大きな音が聞こえる。物心付く頃からだろうか。気が付いたらその音は聞こえていた。小学生の頃この音は自分にしか聞こえていない事を知った。しばらくしてこの音が自分の中から聞こえている事に気付いた。しかし未だに何故聞こえるかは解らないがこれが私というものなのだろう。
Num.0427 ID0634
どうせ家庭ゴミは45リットルのゴミ袋で集積所に出すのだからゴミ箱だって45リットルのものがいいと思わないか? これならゴミ箱からゴミ袋を取り外せばそのままゴミ捨て場に出せるし小さいゴミ箱からわざわざゴミを移す必要もない。いざとなったら被れるし急なお客様にも安心。
Num.0428 ID0635
我等は有象無象。その姿すら定かではないが人の形をしている事は確か。当たり障りのない姿を常に選ぶ。いつもあなたの近くにいるけれど話をする事は絶対にない。何度見ても憶えられない顔をして時にあなたを見て時に背を向ける。我等に人生はないがその時だけは存在する事ができる。
Num.0429 ID0637
空に輝く月を見る。今日は十五夜、綺麗なもんだ。アレを岩石の塊だだの別に光っている訳ではなく太陽光が反射しているだけでその実情は惨たらしいもんだだの言いはしない。だが……あそこに行くとなれば話は別。あそこから手の届かない青い星を見上げる人生など私には耐えられない。
Num.0430 ID0638
この水と緑の星。その上に生きていながらまるでここは月の荒野。何も有りはしない。いや、視界の中には何もかもがあるがそれは決して手に入らない。全ては手の届かない場所にある。月の上から地球に手を伸ばすような不毛さ、愚か者の戯れ。絵に描いた餅を涎で汚しなから泣く我が人生。
Num.0431 ID0639
最近発売された毛穴で育てるマイクロ植物ってさ。いや興味があるというか何か怖くね。だってさ、毛穴とはいえ皮膚に突き刺さってる訳だろ。しかもそれから根を張ったりして結果、落語の頭山みたいに頭の上に木が生えて……いや、別に俺が頭で育てる訳じゃないんだけど何その目?
Num.0432 ID0640
もしあの月を開拓し自分の好きに建物なり都市なりを造っていいとしたらどうする? 勿論人手やら費用やらは考慮しなくていいぞ。お前の壮大なプランを聞かせて……何? 月はあのままがいいって? 冗談言うな。月よりも遥かに美しい星を荒野に変えた種族の生き残りが笑わせるな。
Num.0433 ID0641
湯沸かし器のリモコンですか? 脱衣所に……はっ!? もしやこの暗号にある数字、41、60、37、44というのは湯沸かし器の温度……? 試しに順番に押してみますね。……とっ、これで何が起きるか……な!? 風呂場のマーライオンから黄金の液体が!? これは……蜂蜜!?
Num.0434 ID0642
目の前に置かれた花瓶。その水も飲み干した。飾られていた一輪の花も茎を吸い付くし今ではすっかり枯れ果てた。硝子一枚隔てた窓の外には水があるというのにこの窓を開ける事ができない。このままここで渇いて朽ちるのだろうか。海の底で干物になるとは俺はアジか? 足開いちゃる。
Num.0435 ID0645
ところてん。ところてん。お酢か黒蜜ところてん。あのところてん作り器って天突きって言うんだって。知ってた? その天突きにお目々を入れてにゅっと押し出す。視界が切れちゃう視界が切れちゃう。縦と横に線が入って隙間が空いちゃう隙間が空いちゃう。お皿の上で世界がバラバラ。
Num.0436 ID0646
冷蔵庫を開けるとおびただしい量の目がこちらを見ていた。凍り付いた瞳。冷凍された眼球。剥き出しのままに凍ったそれらに意志は感じられない。だが全ての目が私を見ていた。風呂から上がった彼女はその眼球をひとつ手に取ると歯を立て齧る。凍ったゼリーを齧るような音が聞こえた。
Num.0437 ID0647
もう20年。結婚してそれ程の月日が流れた。その間、夫が私より先に起きた事は一度もない。後に寝て先に起きろ。などとは言われてはいない。これは私が勝手にしている事。さて今日も夫が起きる前に口を開けて舌にこの液体を一滴垂らす。これでどんな味の料理も旨いと感じるだろう。
Num.0438 ID0648
ボクは陽気なホラ吹き屋。あっちへ行ってはオオカミが来たぞと騒ぎ立てこっちへ来ては東の果てには黄金の国があると面白可笑しくホラを吹く。幻の火を携えて色んな話題を振り撒き歩き暗い世界を明るく照らす。嘘も方便、活動の種。皆の活力を湧き上がらせてさあ僕と一緒に踊ろうよ。
Num.0439 ID0649
おやつは500円までですので良く考えて選びましょう。大物は魅力的ですが選べばそれだけ数が減ってしまいます。かと言って小物ばかりを大量に選ぶとかさばりますし味の変化も乏しいです。500円玉一枚の一点豪華主義は浪漫ですがここはやはり100円玉を中心に舐めるのが……。
Num.0440 ID0650
本日ご紹介するのはこちらの小型ハンドミキサー。こちらまずこの棒をドリルのように回転させて食品に差し込みます。そして棒の先端から4つの爪を出して更に回転させれば力強くかき混ぜて、ほら滑らかな仕上がり。本日はこちらのハンドミキサーに頭とまぶたを固定する器具をお付けして……。
Num.0441 ID0651
自分の中から軋む音が聞こえてきたあの日から誤魔化し誤魔化しここまでやって来たけれどそれももう限界か。動く度に悲鳴を上げるそれは誰の耳にも届きはしない。向き合えるのは自分だけと知っているから無視し続けて来た。諦めを受け入れ壊れる覚悟を決めたがそれは口先だけ。怖い。
Num.0442 ID0652
それは突如として現れた。天を貫く巨大な柱。見上げても果ては遙か上空で目も霞む。下を見れば海の底、地表に遮られる。柱は成層圏を貫き宇宙にまで及んでいたが月に届く程ではなかった。出現から数ヶ月後。何も起きず人々の関心は薄れそれはひっそりと動き出し海面の水位が減った。
Num.0443 ID0653
かつて皆が憧れた魔法。その魔法に才能や努力を持ち込んだ者がいた。そんなものとは無縁だからこその魔法だと言う静止も聞きはしない。努力しないで使えるからこその魔法。才能に関係なく使えるからこその魔法。だけど他人より優位でありたいと願う者が僕等の箱庭を破壊した。
Num.0444 ID0654
いらっしゃいませ。おやお客様、当店は初めて。ではご説明させていただきます。当店は口に物を入れ噛み砕いた、噛み千切った時に頭蓋に響く音を楽しむ料理屋でございます。新鮮な野菜、果物は言うに及ばず肉や魚、煎餅や飴玉、更にはまだ血の通ったものまで存分にお楽しみください。
Num.0445 ID0655
「その言葉は対外的パフォーマンス。真摯たる姿勢や律する思想は胸の内に秘めておけばよい。免罪符を口にすれば命を奪う行為が正当化される訳ではない」「言葉は伝播し忘れかけた想いを呼び起こす。善意が人を巡るならば言葉も巡るだろう」「ならば我等は言おう」「いただきます」
Num.0446 ID0656
振り下ろされる斧はただ無慈悲。それもその筈。全ては想像の中で起きる出来事。明かりを消し横たわり目を閉じる。寝返りを打てば枕元に立つのは斧を持った悪意。静かに構える。横向きに寝た身体。背中に感じる気配。この冷たい空気は金属の斧が放つものか或いは。動けば斧は首を打つ。
Num.0447 ID0657
「これ一休。この絵に描いた餅を食べてみせよ」「それは出来ません殿様」「なんじゃ、トンチ坊主も大した事ないのう」「その餅は毒入りで御座います」「何?」「私めは侍ではないので殿様の命でも毒入りの餅を食べる事は出来ません。打ち首にしてください」「よかろう」「あれ?」
Num.0448 ID0658
手を掻き壊した。かさぶたができた。脛を掻き壊した。かさぶたができた。頭を掻き壊した。髪の毛が抜けてかさぶたができた。喉を掻き壊した。声が雑音になってかさぶたができた。目を掻き壊した。世界がズタズタになってかさぶたができた。心を掻き壊した。かさぶたはできなかった。
Num.0449 ID0659
暗いと点き明るいと消えるライトがある。このライトの光をセンサーに反射させると点滅する。ライトの光で明るくなりセンサーが感知して消えるが消えると暗くなりライトが点く。するとその光をセンサーが感知して消える。といった具合に。掌をかざしてライトを点滅させ機械への干渉を演出する。
Num.0450 ID0660
髪の毛には一本だけ極毛というものがあるらしい。この極毛は一人につき一本だけ生えているそうだ。名前は空を統べる北極星に因んでいるんだとかなんとか。でな、その極毛は一度生えたら生え変わらずに全ての髪を統べているそうだ。そしてコイツが抜けると……俺のようになるって訳だ。
Num.0451 ID0661
洞窟の比喩を知っているか? あの喩えでは洞窟の中にいる奴は僅かに差し込む光が見せる影だけを見て空の青さを知らない。なるほど良く出来てる。だが洞窟の外に出て……それで全てか? 空の青さの先に宇宙がある事はどうなる? 所詮、そこで終わりと思った時点で終わりなんだよ。
Num.0452 ID0662
おかしい。置いておいたプリンが消えている。確かにここに置いたのに何故だ。まさか盗まれた……いや、それはない。だがプリンが消えた事実は確かにここにある……いやプリンはないんだけど。となるとこれはプリンと事実が交換された……という事か。つまり事実とは……プリン!?
Num.0453 ID0663
本日ご紹介するのはこちらの商品。なんと材料を放り込んでおくだけでお手軽にカレーが作れます。まずこちらの口を開けて材料を押し込みます。そしてしばらく間を置くだけでこちらの穴から完成済みのカレーが出ます。本日はこのカレー製造機早乙女さんに婚姻届をセット致しまして……。
Num.0454 ID0664
今日、仕立屋が馬鹿には見えない服とかいう馬鹿が作ったような服を持ってきた。私には見えなかったので私が馬鹿なのか仕立屋が詐欺師なのかのどちらかだろう。買っても大臣は止めなかった。これを着て街に行くと言ったのに誰も止めようとしない。どうして私はこんなにも孤独なのだろうか。
Num.0455 ID0665
昔話に出てくる動物や架空の存在を全て人間に置き換えて考えるという遊びをする。昔話について考える度にそうしている。さるかに合戦は私刑の話だろうし鶴の恩返しは奴隷に逃げられた男の話だろう。浦島太郎は飲み食いの借金を返済し終わったら爺さんになっていた話かな。世知辛い。
Num.0456 ID0666
人間の眼球には水晶体と呼ばれる物が存在する。最新の研究でこの水晶体には他の生物、物質からは採取できない稀少な物質が含まれている事が分かった。しかし陽の光を浴びてしまった水晶体からは劣化した物質しか採取できない。そこで腹の中にいる子の目を盗む事にした。それだけだ。
Num.0457 ID0667
陰口叩かれようが後ろ指差されようが言われた通りやってきた。目の上に料理を盛るなんて奇抜過ぎると思ったさ。だがこの道にこそ未来があると信じた。それを今更なんだ。そんな事は言ってないだと。アンタ料理を作りながら言ったじゃないか! 「目を皿のようにしてみるんだ」って!
Num.0458 ID0668
暑い暑い夏。ベンチに座ってコンビニで買ったアイスを食べる。すぐに溶けて垂れて落ちる。蝶が飛んできた。足元近くで羽ばたいてる。アイスを垂らすと蝶の羽根にぶつかった。よろよろと地面に着地。更にアイスを垂らす。蝶は羽根を動かせなくなった。そしてアリにたかられ消えた。
Num.0459 ID0669
爪に火を灯すという言葉がある。これは考えようによっては……エコだ。廃材利用。捨てるだけの物を何かに使おうとした結果。確かに臭気等の問題で有効ではないのかもしれないが今ある物と発想で場を拓こうとしたのも事実。だからこの捨ててあるゴミも……失敬な! 誰がストーカーか!
Num.0460 ID0670
奪われていく。失われていく。これまでが。私の何もかもが。稚拙な。あまりにも稚拙な思考。愚かな。見苦しい程に愚かな情熱。純粋な。打算と妥協に支えられた純粋な恋。そして。そしてここにあるのは常に本音を誤魔化す醜い矜持。それをただ白い塊が消していく。残るのは。残るのは……消しカス。
Num.0461 ID0672
ベランダに置かれている鉢に植えられていたのは稲。ここで育ったのだろうか。田から移されたのだろうか。頭を垂れて実っている。それを野生は見逃さない。すぐさま狙いをつけるが近付く度にきびすを返す。暗い部屋から放たれる冷たく鋭いふたつの光。捉えられた無謀な翼は地に堕ち焼き鳥。
Num.0462 ID0673
存在する価値が欲しかった。私を必要として欲しかった。誰かに依存されたかった。私無しでは生きられない。そんな存在が必要だった。だが人程に重いものは背負えない。犬程に重いものは背負えない。ベランダに置かれた鉢には稲穂。無防備のまま在る。これが私の答え。私は案山子。
Num.0463 ID0674
感動を。感動を目指すしかない。今ある侮蔑。憶測による誤解。印象による忌避。それらを全て吹き飛ばす程の感動。人を感動させる程の作り話が賞賛されるのであれば、人を感動させる程の化学調味料を作るしかない。作った話が賞賛されるのであれば作った味が賞賛されない道理はない。
Num.0464 ID0676
私の読んだメロスでは彼は妹の結婚式から戻って来て変装して友人の処刑を傍観していましたよ。なんでも彼の友人は彼の妹と……何やらあったようで兄としてはどうにも許せなかったのでしょう。磔にされ槍が刺さる瞬間、友人の瞳には見物人の中で唯一笑った彼の顔が映っていましたよ。
Num.0465 ID0677
牛、豚、鶏、米、野菜、果物。人類は様々な物を品種改良してきた。それもこれも人間の口に合わせる為。旨い肉。旨い米が食べたい。だからこその改良。そして遂に詰まる所まで辿り着いた。研究当初は旨い物だと思わなかったが品種改良を繰り返し今や美食家も絶賛。それが食用の人間。
Num.0466 ID0678
この琥珀を電子レンジに入れて数分加熱すると……ほら溶けて液体になったでしょう。この液体をホットケーキにかけて食べると何千年もの時間をかけて琥珀の中で熟成された成分が胃から浸透し心肺機能や肝機能を増強するという優れもの。何ですか。べっ甲飴じゃありませんよアハハハハ
Num.0467 ID0679
王様の耳はロバの耳……確かにロバの耳だった。それを……俺に見せてくれた。どうにもならない容姿。背負うしかない他人との違い。ひた隠しに隠し続けてきたもの。それを俺に明かしてくれた。その思いに応える。民が、王様が真にありのままを受け入れられるようになる為に、今叫ぶ。
Num.0468 ID0683
ティッシュ1箱の使用状況を用途別に記録したこのアナタの明細表。10%近くもその他という項目に入っているけれどその他では明細にならないでしょう。用途をきちんと明記なさい。何をそんなに恥ずかしがっているの。ここに70%自慰と書いてあるけれどそれより恥ずかしい事なの?
Num.0469 ID0684
このじゃがいも。放置して6年になる。買って1、2ヶ月の間は芽が出て伸びていく程度だったがいつの間にか根を張っていた。栄養を吸ってみるみる成長しやがる。今じゃまるでここが自分の在るべき場所だと我が物顔。何とかコイツを切除したいんだが……いや先生。俺の体はコッチだ。
Num.0470 ID0685
中身をくり抜かれたかぼちゃが転がっている。床には果肉が汚く散らばっている。その上を何十もの靴が行く。踏み潰され砕け散ったそれは土と泥に混ざり食物としては既に手遅れだった。靴は中身の無いかぼちゃをひとつだけ持って立ち去る。だから自殺者の靴にはかぼちゃがついている。
Num.0471 ID0686
僕の仕事はこのかぼちゃ。かぼちゃにこんな風に穴を開けて中身を抉り出すでしょ。そんでこうして頭に被れるようにする。目の位置にも穴を開けて完成。後はこれを被せに行くよ。3日前に樹海に入ってまだ出てこない人がいるんだ。縄は用意しておいたからもうぶら下がってるでしょ。
Num.0472 ID0687
何を言っているのやら。これはオブジェ。それ以上でも以下でもない。クリスマスの時期になると家に侵入しようとしている赤い服を着た中年男性の人形を飾る家があるだろ。それと同じだ。ハロウィンの時期には庭の木に人形を、首を吊って飾るもんだ。もちろん頭にかぼちゃを被せてな。
Num.0473 ID0688
まずは苗床を仰向けに寝かせます。消毒液と綿棒を使ってヘソを綺麗にします。次にこちらの水溶液をヘソに注ぎそこにこの種を入れて完成です。種から芽が出て根を張るまでは約60分。その間、苗床を動かさないようにお気を付け下さい。3日程で苗床の栄養を吸い付くし実が成ります。
Num.0474 ID0689
それは全ての起源。これが無ければ全てが成り立たずだがその価値は低い。扱いはぞんざいで多くの人は目もくれないが多くの人の生活を支えている。時に善意と共に僅かに吐き出される。作り出すだけで損をして、落ちていても拾う労力に価値が見合わず素通りすらされるアルミ製の硬貨。
Num.0475 ID0690
被害者の名前は石田多美。通称、石田タミー。3日前、石田は街中を歩いていると突然作業着を着た男達にトラックに乗せられ連れ去られました。そして改修中の公園に連れ込まれ男達によって乱暴に地面に敷き詰められました。男達は石田を地面に敷き詰めると踏み固めて帰ったそうです。
Num.0476 ID0691
世は人と人との繋がりでできている。今はまだ否定できないだろう。交差点ですれ違う程度のものから交差点で肩がぶつかり合う程のものまで多種多様だ。その巡り合わせの妙を縁と呼び人は願う。善き計らいのあらん事を。そしてそれをこの国で下から2番目に価値の低い硬貨1枚に託す。
Num.0477 ID0693
台風や地震を称賛しないし瓦礫から人が救出されても溜息ひとつ吐かない。実際には痛みと苦しみと恐怖の果てに惨たらしい死が待っている。ひとりひとりの悲嘆の先に社会の死がある。お前達の役目は激痛に耐え泥水を啜ってでもそれを見届ける事だろ。望んだものの姿を見ろ。逃げるな。
Num.0478 ID0694
そのほぼ全てが単一の物質で構成され存在の目的も意義も単純である筈なのに目的意識により変異を遂げる。食べ物でもないのに調味料をかけられる。かと思えば一息に飲み込まれる。何度も勢い良く弾かれ谷に落ちる事もある。所有者の我侭に文句も言わずに付き合う硬貨ってドウなのかな?
Num.0479 ID0695
昔は私にも存在意義があった。私だけを受け入れ私でなければ動かせないものがあった。普段私をぞんざいに扱う事があってもその時だけは皆が私を求め必要とした。時代は移り変わり私以外のものであっても必要性は薄れた。ましてや100円玉を50円玉2枚にするような両替機にはもう。
Num.0480 ID0696
かつてあったとしても今やその美しさも失われた。科学も技術も水準が上がりより優れたものが作られるようになった。優れものは特化し遺物の中にあった不要な要素は無視された。かつて金や銀だった通貨は紙や合金に姿を変えた。当然だ。音色に拘って通貨を作る必要などどこにもない。
Num.0481 ID0697
あの日も雨が降っていた。道端に捨てられた猫。段ボール箱に入ってか細い声で鳴いている。無慈悲な雨は猫が助けを呼ぶ為に発した弱々しい声すら掻き消した。体温を奪われ目を閉じた猫にそっと傘を差すアナタ。そのアナタに声を掛けるワタシ。「死ぬところが見たいの。邪魔しないで」
Num.0482 ID0698
駅のホーム。線路を挟んで向かい側にいつもいる彼女。停まる電車が視界を遮る直前、彼女は俺に視線を合わせ小さく手を振り優しく微笑む。俺はその微笑みを見て電車に乗る。何かの間違いだと思ったがもうそれが3ヶ月も続いた。そして今日。彼女が手招きをしたので俺はつい一歩前に。
Num.0483 ID0699
「肉まんいかがですか?」いつも行くコンビニでいつもの店員にいつもそう言われる。その度にオレはいつもひとつ買う。オレ以外の客には言わない様子だ。もしかしてオレの事……という妄想から、いつも買うから買わせているだけという結論に達するまで2秒。たまには他のも食べたい。
Num.0484 ID0700
名前、住所、勤め先、家族構成は言うに及ばず今や知りたくもない性癖や風呂で一番最初に洗う場所まで知っている。当然、奴の好みだって性格だって知っている。少々金はかかったが好みの女をコンビニに潜入させた。後はこの毒を少しずつ繰り返し与えるだけ。「肉まんいかがですか?」
Num.0485 ID0701
むー。電車で靴紐が解けた。人は多めだったがそれなりに隙間はあった。しかし電車が揺れあの娘がよろけた時に足を踏まれて靴紐が解けた。痛かったがそれは口に出さず大丈夫かと娘を気遣う。何故そんな事をとも思うがこれがきっと墓穴を掘るという事だろう。判決は明日言い渡される。
Num.0486 ID0702
この免罪符は強力だ。あらゆる批難を消し飛ばし余りある力を得られる。これは同情などではなく共感、同意、肯定、支持。協力すら取り付けられる程の力。金や権力ではこうはいかない。どうしても遺恨を残す。今の時代なら尚更だ。だがこの正義という免罪符は今の時代こそ強力無比。何のためらいもなく駅前に爆弾を仕掛けられたよ。
Num.0487 ID0703
俺がこのエレベーターに乗ると必ず入ってくる女がいる。どういう訳かこの女、待ち構えている様子。しかも何故か必ず俺の背後に立ちやがる。最近じゃ俺も壁に背を向けて立つようになった。そして今日、女が乗る前に扉が閉まった。俺はホッとして壁に寄りかかるとベチャッという音が。
Num.0488 ID0704
いいか。俺はこのチームを応援なんかしていない。なら何故ファンで御座いなんてツラをしているか。わざわざ試合を見ているか。それはコイツラが失敗を繰り返し負け続け罵詈雑言を浴びてボロ雑巾になるのが見たいんだ。ゴミを投げつけられ罵られるのを見たいんだ。挫折が見たいんだ。
Num.0489 ID0707
いつも使う階段でいつもすれ違う女がいる。俺は下り彼女は上る。踊り場で向きを変える時に視線は彼女の背中、というか尻へ。だがすぐに物陰に消える。俺も足は止めない。今日、違う階段で彼女とすれ違いいつも通り彼女の尻を見ていたら階段を踏み外し爺さんを巻き込んで転げ落ちた。
Num.0490 ID0708
書けば書く程、解る事がある。誤魔化していようとどんどん浮き彫りになり最早、目を背けてもその鮮明さにより視界に入らざるを得ない。輪郭はくっきりと見え細部まで際立つ。だがそれ程までに突き付けられても未だ書く事を辞めないのは……もしかしたら、他にやる事がないだけかも。
Num.0491 ID0709
階段の踊り場に小さな空間がある。そこに座禅を組んでいる人形を配置してみた。壁を向かせ通行人には背が見える。3日で反応する人がいなくなり10日も経つと頭に空き缶が載り背中には無数の靴跡。2週間で床に突っ伏し3週間でゴミに埋もれ1ヶ月でどこかへ消えた。辞表を残して。
Num.0492 ID0712
告白が自分の本心をさらけ出す行為ならば、相手も同じようにさらけ出す事。それが真摯たる態度というものだ。ただその本心がお前に望ましい事ではなく、ただただ人格全てを否定する程度の些細な本心だったとしても、相手は本心をさらけ出しているのだから、むしろ喜ぶべき事象だ。だから泣くな。
Num.0493 ID0714
ついに公表された恐るべき事実! それは人の毛を土に植えると根を張って成長するというものだった! 更に毛を土で成長させるとジャガイモのように地下茎が食べられる事が発覚! しかも人によって味が変わるという衝撃の事実! これにより人の価値は味でも判断されるようになった!
Num.0494 ID0715
土下座に意味や価値はない。言い換えれば土下座に意味を持たせられる連中と言うのは……優れているのだ。地べたを這いずり回っている虫が土下座しても踏み潰されるだけで許しなど得られず、また願いなど聞き入れられない。だが頭を下げるだけで人を動かせる。つまりはそういう事だ。だから俺の頭を踏んでいる奴より俺の方が優れている筈なんだ。
Num.0495 ID0717
突然の雨。軒下で雨宿り。閉めてあるシャッターには貼り紙。閉店を告げていた。水飛沫の音。軒下に女子高生が駆け込んで来た。雨の弱まる気配はない。しばらくして視界で何か動いた気がした。女子高生の足元。シャッターは閉まっていなかった。2、3センチの隙間。そこから伸びるウツボカズラ。
Num.0496 ID0718
あのコインランドリーに沢山ある洗濯機と乾燥機。その中のひとつに俺の鍵が隠されたらしいんだ。そこで俺は機械を調べたんだが如何せん営業時間中。勿論使用されているものもある。あの乾燥機は乾燥が終わっているのに放置されていたんだ。だから俺はブラ……じゃなくて鍵をだな。
Num.0497 ID0719
ここに椅子を置いたのはまあなんとなくだ。だがそれでも腰を下ろす人はいるようで役に立ったのならそれでいい。ここまで来るのに疲れているだろうからな。かと言って地べたに座るのもなんだと思うだろ。景色を見ながら物思いにふけるのも悪くない。どうせ後は……還るだけなんだ。
Num.0498 ID0720
ある鶏の病がある。その病にかかった鶏の産んだ卵は特徴的な色を持つ。そしてその卵はとても豊かな味になる。美味いのだ。そこでこの病気にかかるように病原菌を注射する。発病させどんどん卵を産ませる。この卵から孵った雛はすぐ死ぬ。だが人には感染しない。だから何の問題もない。
Num.0499 ID0722
『自首屋』この生業に就く者はまず事件を徹底的に調べ上げる。犯人を捕まえる為ではない。自白が嘘である事を見破られない為だ。そして自ら警察へ出頭し、未解決事件の犯人であると自首し逮捕される。その後、裁判で有罪を確定させ服役、場合によっては死刑に処せられる商売である。
Num.0500 ID0723
公園のベンチにペンキ塗りたての貼り紙。隙間なくびっちり何枚も貼り付けられている。しかし貼り紙に触っても手にペンキは付かない。どういう事かと座ってみたらベンチの脚が折れた。俺は貼り紙を一枚剥がし近くのコンビニで何枚もコピーをとってノリを買って折れた所に巻き付けるようにベタベタと貼り付けて……あ。
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